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ケルベロスは本当に地獄の番犬なのか

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現代人の例に漏れず、自分の視聴するメディアの中心はインターネットになっている。
動画視聴に合成音声系を選ぶ事が多かったが、割合にシームレスにVtuberが入り込んで来ている。

そんな中で、「地獄の番犬」というワードが耳に留まった。
地獄の番犬といえば、皆のお馴染みケルベロスである。
だが、番犬というカテゴリで冷静に見ると、ケルベロスはなかなかに奇妙な存在だ。

目次

ケルベロスとは

ケルベロスはギリシャ神話に登場する怪物である。
『地獄の辞典』によれば「地獄の門を頑なに守り抜く恐るべき番犬」とされる。
後世には更に設定が盛られ、恐らくは他の悪魔と融合した魔神扱いになったり、三位一体の象徴にされたり、複雑化していくのだが、ひとまず犬のところで止めておく。

番犬といっても、秋田犬やらマルチーズやら、普通の犬の姿という訳ではない。

首が3つあり、3つのうちどれかが必ず起きている。タテガミを蛇が覆い、龍の尾を持ち、その唾液は有毒で、地上に落ちた時にトリカブトが生まれたと言われる程である。
・・・それキメラじゃねえ? と思い始めると脱線するので、ひとまず犬のところで止めておく(2度目)。

このように見るからに恐ろしいケルベロスだが、神話の主要キャラを相手にするとかませ扱いされやすい。
ヘラクレスに地上に引っ張って来られたり、オルペウスの竪琴で眠らせられたり、菓子を貰うと注意力がそちらに向いてしまったりする。

メインを張る事のない、いわゆる番犬、門番でしかないという事だろう。

彼の番犬としての仕事ぶりに関しては、ヘーシオドスが言及している。曰く、ケルベロスは「冥界に来るものは通し、逃げる者は捕らえて喰らう」という。

なるほど、冥界の入り口を守っているように・・・なんか、おかしくないですか。

番犬の行動

一般的な番犬について考えよう。

当方、北海道の都市部に居住しているため、犬は室内飼いが多いようで、あまり番犬は見ない。かつて住んでいた関東では、そこまで珍しいものでもなかった。
番犬は玄関付近に繋がれるか、または敷地内に放し飼いされ、怪しい来訪者や、躾の状態によっては来客も区別せず吠える、噛むといった敵対行動に及ぶ。
窃盗など住居に侵入するタイプの犯罪者は、壁や防犯カメラなどの装備より、行動の予測がし辛く、吠え声も大きい番犬をことのほか嫌うとされる。

犬が番犬として活用出来る理由は、群れを作る性質によるものと考えられる。
生物が群れを作る理由のうち重要なものは、外敵からの防御である。
群れは、集団で襲いかかって敵を倒すというよりも、どうやっても勝てない強大な敵に対した時、有効に作用する。
群れを作らない生物の場合、そんな強敵に遭えば騒ぎもせず逃げるだけだ。

群れの場合はどうか。
最外周のメンバーが、最初に敵に気付き、鳴き声で群れに状況を伝え、自らが囮になる事で足止めし、群れの大半を逃がせる。万一追い付かれても、他の外周メンバーが足止めになれば、時間を稼げる。

「島津の捨て奸(がまり)」と言えば、大体の人に理解出来るだろう。

自分が死んでしまうので遺伝しない性質に見えるが、群れが血族であり、性質が「最外周にいる時は囮になる」というものなら、遺伝子としても残り得る。
家の外、すなわち群れの最外周に置かれた犬は、敵の発見、リーダーへの報告、撃退または囮が自分の役割であると本能的に理解する。

つまり、番犬は本来の犬の性質から見ても、あまり違和感のない仕事であろう。

番犬には秋田犬?

番犬としてのケルベロス

「番犬」ケルベロスに立ち戻ってみよう。
ケルベロスは来るものは拒まないが、出て行くものは見逃さないという。

来る者と出る者、群れに対して危険なのはどちらか・・・来るものに決まっている。

逆に、出て行く者は、群れにとって害にならない。
もちろん、群れの維持のため、成員を逃げ出させたくないという場合はある。だが、その時のケルベロスがすべき行動は、牧羊犬のように「追い戻す」事だ。殺傷しては逃がすのと結果が変わらない。

冥界の王ハデスが、地獄から亡者を逃がさないため、ケルベロスを厳しく躾けて、犬の本能と逆の行動を強いているのだろうか?

それ自体あり得ない事ではないが、それにしては躾が行き届いていない。
何しろケルベロスは買収に弱いのだ。特に蜂蜜と芥子の焼き菓子が好物で、食べている間は出て行く者にも気付かない。
適切に訓練された番犬なら、飼い主以外からの餌は受け取らない事を、まず覚えさせるだろう。

リーダーがぶれる事こそ、命令を聞かない根本なのだから。
ここまで来ると明確になってくる。

ケルベロスは番犬ではないのだ。

ケルベロスの本職

ケルベロスが番犬でないとしたら何なのか?
愛玩動物、ペットである。

愛玩動物と番犬の間には、根本的な差がある。

番犬は猟犬など産業動物に近いものであり、扱いもそれに準じたものになる。明確な役割が求められ、それが終われば処分される事も充分あり得る。
動物の種類は違うが、競馬用のサラブレッドが、走れなくなった、というだけで殺処分になる事があるが、これも愛玩動物の流れで認識するから違和感が出る。

だが、ペットは違う。可愛がられ、愛されるためのものだ。
仕事が出来なくても、いるだけで良い。
ペットとなった時、その「仕事」に対する評価は、むしろ産業動物と真逆のものにもなる。
四角四面に機械にように役割だけ果たすより、不確定な動きの方が、より飼い主の感情を揺さぶる。
失敗も、可愛い仕草として肯定される。

ケルベロスは番犬ではなく、ハデスに溺愛されているペットだからこそ、外から入ってくる者に対して、役割を持たない。だからわざわざ吠え立てたり襲いかかったりしない。

一方、出て行く相手はハデスが受け容れた者だから、自分達の群れの一員だ。

甘えっ子のケルベロスは、これは仲間だと思うからふざけて「じゃれつく」。
だが、ケルベロスの力は強く、その首は3つ。1つが眠っていたとしても、その身体の制御は大雑把になる。
大型犬の突進を受けた事がある人なら分かるだろうが、亡者達はこの「遊び」に耐えられない。
甘えたかった相手が肉塊になってしまえば、食べる事もあるだろう。

死亡した犬猫が飼い主を喰うという事例は、決して珍しい話ではない。
こうして、行きは良いよい帰りは怖い、ネームドには結構簡単にあしらわれるワンちゃん、ケルベロス伝説が出来上がったのだ。

快適な地獄ライフのために

あなたが死後、ギリシャ神話世界の冥界に向かう事があったら、ケルベロスには気を付けた方が良い。
あれは躾をされた番犬ではなく、何をしでかすか分からない、甘やかされたわんこなのだ。

行きが無害というのは、今までの偶然に過ぎない。徹底して距離を取るべきである。
くれぐれも、興味を持たれない事だ。
BAUBAUされてからでは、遅いのだ。

参考
講談社『地獄の辞典』コラン・ド・プランシー P123「ケルベロス」
ウィキペディア ケルベロス

※画像はイメージです。

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