小学校から高校まで、僕と由香は親友でした。二人は家も近く、放課後はしょっちゅう一緒に遊んでいました。
由香は明るく快活で、誰とでも仲良くなれるタイプ。一方、僕は控えめであまり目立たない性格ですが、由香にだけは心を開いていて、二人は「ずっ友だよね」と約束していたのです。
しかし高校を卒業してから二人は疎遠になってしまった。仕事に忙しくなり、生活のリズムが違ってしまったから。
ある日、ふと会いたくなって由香のSNSにメッセージを送ると彼女はすぐに快諾してくれ、「久しぶりに会いたいね!」と明るいメッセージが届き、なんだか少しの緊張を感じながら、駅前のカフェに向ったのです。
由香は昔と変わらない笑顔でそこにいた。しかし、どこかぎこちない雰囲気が漂っていました。
近況を尋ねると淡々と答えはじめ、地元から離れた町で事務の仕事をしているらしいが、どこか話に熱がありません。
会話が続くにつれ、僕が一方的に話していることに気付きます。由香は時折頷くだけで、笑顔も少し硬い。
「もしかして、何か悩んでる?」と尋ねると、由香は一瞬黙り込んだ後、小さな声でこう言いました。
「私、たぶん誰かに見られてるんだ。」
最初は冗談かと思ったのです、由香の目は真剣。
彼女によれば、最近、自分の生活に「知らない人の痕跡」を感じるのだといいます。帰宅すると家具の位置が微妙にずれていたり、携帯電話に知らない着信履歴があったりする。
さらには、自分の部屋に覚えのない写真が置かれていたこともあるらしい。
「怖くてさ、誰にも言えなかったんだけど、聞いてくれると思って」
僕は由香の不安を和らげるため「警察に相談したほうがいい」と勧めたのですが、由香は首を振った。
「証拠が曖昧だし。それに私が疑ってる相手が警察に関わったら、もっと大変なことになるかも」
「相手って誰?」
由香は沈黙して視線を伏せた後、ぽつりとこう言った。
「陽介、君じゃないよね?」
僕は呆然としました。もちろん、そんなことをするはずがない。
必死に否定すると、由香は「ごめん、そうだよね」と微笑んだが、その笑顔がどこか不穏さを感じたのです。
それから数日後、由香と連絡が取れなくなってしまいました。
失踪してしまったようで、彼女の両親が警察に捜索届を出したらしく、真っ先に僕が疑われ事情聴取されました。
もちろん僕にはアリバイがあり、警察に家の中を見せて欲しいと言われても身の潔白をしめすためにも承諾したのですが・・・いつの間にか由香の失踪と関係があると思われる証拠――由香が話していた写真や、彼女の持ち物――が僕の家から見つかったのです。
「いったいどうして?」
身に覚えのない物でいつの間にか置かれ、誰かが意図的に僕を犯人に仕立てようとしているかのよう。
いつの間にか僕は容疑者とされ、捜査が進んでいくうちに見つかったアルバムが問題になった。
僕と由香の幼い頃の写真が収められたごく普通のアルバムのはずですが、どれも由香の顔だけが切り取られている。
「こんなもの知らない!」と叫ぶのですが、最後のページは「由香は僕のもの」と書かれていた。
写真を切り取った事も、そんな文字も書いた覚えもありません。
それから結局、証拠不十分で釈放されたのですが、彼女の家族も世間も僕が犯人です。
仕事も失って独りぼっちになってしまうのですが、僕の身の回りでなにが起きているか全く解りません。
だれかに恨みを買った覚えもないですし、いなくなった由香も心配です。
すっかり荒れ果てた部屋の中で呆然と日々を過ごしていると、ふと机の上に見覚えのない写真が置かれているのに気が付いたのですが、そこには血だらけの由香が写っていたのです。
※画像はイメージです。
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