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田舎旅館に住まう物怪の恐怖

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これは、私が東北へ出張中に体験した話です。
ムック本の取材で訪れのは、山々に囲まれた静かで落ち着いた雰囲気が漂う、季節の移ろいを感じさせる美しい風景が広がる田舎町。
そこに数日ほど滞在することになるのですが、宿泊先として用意されたの中心部から少し離れた場所にあって、趣きのある旅館はでした。

目次

ひっそりとした旅館

旅館は木造で、築数十年の歴史がありました。特に夜になると静寂が一層際立ち、廊下を歩くたびに床板が軋む音が響き、むしろ風情とさえ思わせる貫禄があります。
私の部屋は2階の端にあり、大きな窓がついていました。そこからは隣家の屋根越しに遠くの山並みが見え、のどかな景色が広がっていました。
この旅館も取材対象だったので、編集部の粋な計らいに感謝したい程でした。

初めのうちは、仕事に追われる毎日で、夜は疲れてすぐに眠りに落ちてしまいました。
滞在して数日ほど経って、旅館の温泉を楽しめる程に余裕が出てきた頃、奇妙な出来事が起こるようになってきたのです。

窓を叩く音

ある晩、部屋でくつろいでいると、窓の外から「トントン」と何かを叩くような音が聞こえてきました。
最初は風で木の枝か何かが当たっているのだろうと考え、気にしませんでした。
しかし、その音は次第に少しずつ大きくなっていき、規則的に聞こえるように・・・。まるで「誰か」が外から窓を叩いているような——そんな錯覚に陥ります。

不気味に思いながらも、原因を確かめようと意を決し、窓を開けて外を確認しました。
そこに広がるのは、夜の暗闇と静まり返った町並みだけ。風は吹いておらず、何も動いていない。それでも、窓を閉めると再び「トントン」と音が響き続けています。

気味が悪く、その夜はほとんど眠れませんでした。
翌朝、旅館の女将にその話をしました。すると彼女は特に驚いた様子もなく、

「このあたりは風が強いことが多いから、家鳴りや風の音が響くこともありますよ」

と、穏やかに言うだけでした。妙に淡々とした口ぶりが逆に引っかかります。

「・・・本当に、それだけなんでしょうか?」

そう聞き返しても、女将は微笑んだまま、それ以上は何も言いませんでした。

響き続ける音

その晩、また「トントン」という音が聞こえてきました。

しかも今度は前夜よりもはっきりと、大きく、回数も増えています。まるで何かが「入れてくれ」とでも言いたげに、窓を叩き続けているようでした。

我慢できず、再び窓を開けましたが、やはり誰もいません。しかし、その瞬間、暗闇の中に、人影のようなものが一瞬だけ見えた気がして、全身に寒気が走りましたが、目を凝らしても何も見えない。

恐怖が頂点に達し、耐えきれずフロントに連絡して、部屋を変えてもらうことにしました。
新しい部屋では、奇妙な音はまったく聞こえませんでした。ようやく安眠できるようになり、それからの滞在は何事もなく過ぎていきました。

そして出張最終日

出発の日の夕方、フロントでチェックアウトを済ませたとき、何気なく女将に尋ねてみました。

「あの・・・結局、あの部屋の窓の音って何だったんでしょう?」

すると、女将はと少し考えた後、ポツリと答えました。

「あの部屋ね、屋根裏にイタチが入り込んだようなのよ」

・・・イタチ?

「夜中に動き回るから、天井裏で音がすることはあるわね。」

・・・え?

「でもこの辺りじゃ、よくある事で大した事じゃないと思っているとお客さんが大騒ぎしだして、むしろどうして良いか迷っていたんですよ・・・」

俺は何日も怯え、夜も眠れず、ついには部屋まで変えてもらったのに・・・正体はイタチ?
俺の中で、恐怖が一瞬で恥ずかしさに変わった。

「あはははは・・・・」

乾いた笑いが出る。
さらにはかなり珍しい種類だとも説明してくれた。

何が「何かがこちらを見ていた気がする」だよ。
何が「窓を叩く謎の存在」だよ。

全部、ただのイタチじゃねぇか!!!
説明してくれても良いじゃなかと思いながら、なんだかもう笑うしかなかった。
いや、本当に・・・バカだったなぁ・・・そんな事を思いながら、旅館を見返すと白くて小さな動物が目の前を走り去っていった。

※画像はイメージです。

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