世の中には撮影中や公開後にキャストやスタッフが事故や悲劇に巻き込まれ、「呪われた」と噂されるホラー映画があります。
その中でも特に印象的であった作品を、自選で作品ご紹介します。
エクソシスト
1973年に公開され、ホラー映画界の金字塔とも言われる作品『エクソシスト』。 悪魔パズズに取り憑かれた少女リーガンと、その悪魔祓いに挑むデミアン・カラス神父の死闘を描いた物語です。演出に時代を感じる部分はあっても、180度後ろを向く首や、不気味に吐き出されるエクトプラズム(嘔吐物)などの衝撃的なシーンは、今見ても十分な恐怖を放っています。
さて、この作品の呪われポイントですが……。
撮影中から公開前後にわたって、不可解な事故や不幸が相次いだことで知られています。 まず、撮影セットで原因不明の火災が発生。なぜかリーガンの部屋だけを残してセットが全焼するという奇妙な事件が起きました。
さらに映画の完成を待たずして、監督役を演じたジャック・マッゴーランやカラス神父の母を演じたバシリキ・マリアロスが相次いでこの世を去ってしまいます。
これらの出来事から、ファンの間では「関係者ら9人が死亡した」という尾ひれがつき、「呪われた映画」として都市伝説化しました。実際には、キャストの死亡報告には多くの誤情報が含まれており、主要キャストが次々と亡くなったという事実はありません。
しかし、こうした不運な偶然が重なったことで、この映画は「本物の悪魔に呪われている」と噂され、今なお語り継がれる伝説となったのは間違いないでしょう。
オーメン
1973年の『エクソシスト』に続き、1976年に公開され世界を震撼させたのが『オーメン』です。不気味な逆さ讃美歌が響く中、乳母が誕生パーティーの最中に「ダミアン、見てて!」と叫びながら首を吊る衝撃的なシーンや、教会の尖塔が落下して神父を貫く描写は、トラウマ級の映像です。
さて、この作品の呪われポイントですが……。
製作中から公開後にかけ、まるで悪魔の妨害かと思えるような悲惨な出来事が相次ぎました。
主演のグレゴリー・ペックが乗った飛行機に雷が直撃したのを皮切りに、劇中で主人公を襲うはずのロットワイラー犬がスタントマンに噛みつき重傷を負わせ、さらには動物の調教師がトラに襲われて死亡するというショッキングな事故が多発。
極めつけは、劇中の凄惨な斬首シーンを考案した特撮担当ジョン・リチャードソンの事故です。彼が撮影後に遭遇した交通事故では、同乗していたアシスタントの女性が、奇しくも彼が映画で演出した死に様と同じように首を切断され即死するという、シャレにならない悲劇が起きました。
こうした事故の連鎖に、プロデューサーは「悪魔がこの映画の誕生を望んでいないのではないか」と本気で恐怖したといいます。
もちろん、これらの中には偶然が重なったものや、宣伝のために大げさに語り継がれた側面もあるでしょう。
実際、すべての不運が悪魔の仕業であると断定できる科学的根拠はありません。しかし、劇中の凄惨な死をなぞるような現実の悲劇を知ってしまうと、単なる話題作りとは片付けられない「ダミアン」の影が、フィルムに潜んでいると感じざるを得ないのです。
トワイライトゾーン/超次元の体験
1983年、往年のSFドラマを映画化した『トワイライトゾーン/超次元の体験』。スティーヴン・スピルバーグ、ジョー・ダンテ、ジョン・ランディスといった、当時の映画界を代表する豪華な監督たちが集結した本作は、SF、ホラー、ファンタジーが混ざり合ったオムニバス形式で観客を魅了しました。
特にジョン・ランディスが手掛けた第1話、原題『Time Out』(偏見の恐怖)は、白人至上主義者の男がタイムスリップした先で、ナチス占領下のフランスやベトナム戦争の戦場に放り込まれ、自らが「迫害される側」の恐怖を味わうという衝撃的なエピソードでした。
さて、この作品の呪われポイントですが……。
本作の撮影中、映画史に残るあまりにも悲惨な事件が発生しました。ベトナム戦争のシーンを撮影中、低空飛行していたヘリコプターが演出用の爆破に巻き込まれて墜落。主演のヴィック・モローと子役の子供2人が墜落に巻き込まれ、全身を引き裂かれたようなバラバラの遺体となって発見されたのです。フィルムには彼らが死にゆく様が克明に記録されており、そのバラバラになる瞬間が日本のテレビ番組でも放送されるなど、当時は凄まじい衝撃を持って受け止められました。
この事故の結果、物語は大幅な変更を余儀なくされました。当初は「差別主義者の男がベトナム人の子供を救い、改心する」というハッピーエンドが予定されていましたが、撮影が不可能となったため、男が救いようのないままナチスの収容所へ送られるというバッドエンドに差し替えざるを得なくなったといわれています。
もちろん、これらは安全管理の欠如が生んだ痛ましい「人災」であるという冷静な検証がなされています。しかし、製作者側にユダヤ系が多いことから、一部の論者の間では「差別主義者を許さないユダヤ人の怨念が、現実の俳優を殺させたのではないか」という不気味な陰謀論が語られることもあります。
真実がどうあれ、差別を演じた俳優が、出口のない地獄へと引きずり込まれた事実は変わりません。それはまるで、本作のオープニングで男たちが真夜中のドライブ中にテレビ番組の主題歌当てクイズを楽しみながら、いつの間にか「トワイライトゾーン」へと迷い込んでしまったように…。
ヴィック・モローたちもまた、気づかぬうちに「トワイライトゾーン」の住人になっていたのかもしれません。
『ローズマリーの赤ちゃん』
1968年に製作された『ローズマリーの赤ちゃん』は、ニューヨークの古いアパートに引っ越した夫婦が、親切な隣人たちの正体である「悪魔崇拝者」に追い詰められていくオカルトホラーの金字塔です。最終的に主人公が悪魔の子を産み、あらがえぬまま母親として育てることを受け入れてしまう衝撃的な結末は、観客に深い絶望を残しました。
さて、この作品の呪われポイントですが……。
まず、本作のプロデューサーであり、観客を驚かせる仕掛けの天才として知られたウィリアム・キャッスルが、製作中に重い腎不全を患い、凄惨な最期を遂げました。彼は死の直前、何かに怯えるように「ローズマリー、頼むからそのナイフを下ろしてくれ!」とうわ言を繰り返していたといいます。
しかし、真の悲劇は映画が完成した翌年に訪れました。1969年8月9日、監督ロマン・ポランスキーの妻であり、当時妊娠8ヶ月だった女優のシャロン・テートが、カルト指導者チャールズ・マンソンの信者たちに自宅を襲撃されたのです。彼女は「お腹の子供だけでも助けて」と必死に命乞いをしたものの、冷酷な信者たちによってナイフでめった刺しにされ、命を奪われてしまいました。
劇中のローズマリーが悪魔を崇拝するカルトに赤ん坊を奪われたように、現実でも監督の最愛の妻子がカルトの魔手にかかるという、あまりにも残酷な一致が起きたのです。その後、ポランスキー自身もスキャンダルによってハリウッドを追われ、亡命を余儀なくされるなど、本作に関わった中心人物たちは次々と数奇な不運に見舞われました。
もちろん、これらは異常なカルト集団による犯罪や、病という現実的な出来事です。すべてを「呪い」と結びつけるのは、単なるこじつけかもしれません。
しかし、映画の舞台となったアパート「ダコタ・ハウス」の前で、後にジョン・レノンが射殺される事件が起きたことも含め、この作品の周辺には常に「死」と「狂気」がつきまとっています。フィルムに焼き付けられた悪魔崇拝の儀式が、本物の「悪魔」を呼び寄せてしまったのではないか。
そう思わずにはいられないのです。
クロウ/飛翔伝説
1994年に公開された『クロウ/飛翔伝説』は、ギャング団に恋人共々殺された音楽家エリックが、カラスの精霊の力で不死身の復讐者として蘇る姿を描いたホラーアクションです。白塗りのピエロを思わせる顔で狂ったようにギターをかき鳴らし、窓から夜の街へと飛び降りるシーンや、降りしきる雨の中で一羽のカラスと共に炎の紋章を背負って立つ姿は、今なお多くのファンの心に焼き付いています。
さて、この作品の呪われポイントですが……。
本作の悲惨さは、原作者ジェームズ・オバーが18歳の時に恋人を交通事故で失ったという実体験から執筆されたという、その出自からすでに始まっていました。しかし、最も衝撃的な悲劇は撮影の最終盤に起こります。主演を務めたブランドン・リーが、銃撃シーンの撮影中に本物の弾丸で撃たれ、28歳の若さで命を落としたのです。
彼は伝説のアクションスター、ブルース・リーの息子であり、父の影を払拭してスターダムにのし上がろうとした矢先の出来事でした。弾の入っていないはずの銃からなぜ実弾が発射されたのか。現場では「アジア系の彼を狙った白人至上主義者による暗殺ではないか」という陰謀論まで飛び交いましたが、これらは根拠のない憶測に過ぎません。
実際には、過去の撮影で使われた実弾の破片が銃身内に残っており、それが空砲の圧力で本物の弾丸と同じ威力で発射されてしまったという、極めて杜撰な管理体制が招いた「人災」でした。しかし、親友であるブランドンに向けて図らずも引き金を引いてしまった俳優マイケル・マッシーの絶望は深く、彼はこの事故を機に俳優活動を一時休止するほどの心の傷を負うことになりました。
もちろん、これらは一つひとつの不注意が積み重なって起きた凄惨な事故であり、超自然的な呪いで片付けられるものではありません。
しかし、劇中で「死を克服した不死身の男」を演じていたブランドンが、撮影現場という現実の場所で、たった一発の本物の弾丸にその命を奪われてしまった。
その取り返しのつかない皮肉ともいえる現実は、どれほど映画技術が進歩しても埋めることのできない、重く冷たい教訓を私たちに突きつけ続けているのです。
『ポルターガイスト』
1982年、スティーヴン・スピルバーグが製作・脚本、トビー・フーパーが監督を務めた『ポルターガイスト』は、現代ホラーの金字塔として今なお高い人気を誇ります。新築の一軒家に越してきた一家が、突如発生した超常現象によって異界へさらわれた末娘を助けるために奔走する物語。特に、砂嵐が流れるテレビ画面に向かって末娘が語りかけるシーンや、子供部屋のピエロの人形が長い腕を伸ばして背後から首を絞めてくる描写は、当時の子供たちに拭い去れないトラウマを植え付けました。
さて、この作品の呪われポイントですが……。
本作はシリーズを重ねるごとに、出演者が相次いで非業の死を遂げるという異常な事態に見舞われました。まず1作目の公開直後、長女役を演じたドミニク・ダンが、自宅前で元恋人に首を絞められ22歳で命を落としました。さらに、シリーズの顔であった末娘役のヘザー・オルークが、3作目の製作中にわずか12歳で急死するという悲劇が起きたのです。
このヘザーの死を巡っては、1作目の中に「予言」があったという都市伝説が囁かれています。劇中の子供部屋に、1988年1月31日の日付が入ったアメフトのポスターが貼られており、奇しくもヘザーはその当日にこの世を去ったのです。さらに2009年には、エキストラ出演したルー・ペリーマンが、見ず知らずの男に斧で殺害されるという、あまりに凄惨な事件まで発生しました。
撮影現場でも、先述したピエロの人形が実際に長男役の俳優の首を締め上げるという、誤作動による事故が発生しています。こうした不吉な連鎖の背景には、あるシーンに「本物の骸骨」が使われた報いではないかという噂があります。監督のトビー・フーパーは「レプリカより本物の骨の方が安上がりだ」という理由で、骸骨が埋められたプールに女優を突き落とすシーンを撮影していました。
もちろん、キャストの死は病死や凄惨な事件といった個別の要因によるものであり、映画の小道具に呪いの根拠を求めるのは非論理的かもしれません。
しかし、あのプールの底で泥にまみれていた骸骨たちが、名もなき死者たちの本物の遺骨であったことは紛れもない事実です。作り物の恐怖を撮るはずのカメラが、本物の死者を呼び起こしてしまった。
その代償として、映画という虚構の世界に「本物の死」が紛れ込んでしまった事実は、半世紀近く経った今も、フィルムに刻まれたまま消えることはないのです。
それは演出か、それとも報いか
いかがでしたでしょう。震えるような刺激を与えてくれるホラー映画。
その裏側には、出演者を呪いで殺してしまったのではないかと囁かれるような、恐ろしいエピソードがいくつも潜んでいましたね。
日本でも『樹海村』や『サイレン』といった作品の撮影中に怪奇現象が起きたという話はよく耳にしますが、出演者が亡くなるような事態まではまず聞きません。
やはり、日本に伝わる「お祓い」という文化が、見えない盾となって私たちを守ってくれているからなのかもしれません。
ハリウッドの「呪われた映画」にまつわる噂も、その多くは後から付け足された都市伝説なのかもしれません。
ですが、たとえそれが偶然の事故であったとしても、事実としての悲劇がフィルムに刻まれていることは確かなのですね。
怖いですね、恐ろしいですね。 でも、そんな闇をのぞき込むことで、私たちは初めて「恐怖」というスパイスを楽しめるのかもしれません。
ホラー映画って、本当に、本当に、面白いですね。
それでは、またお会いしましょう。 さいなら、さいなら、さいなら。
※画像はイメージです。


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