剣と魔法の王国。平和を乱す魔王は倒され、世界に平和が訪れた。英雄たる勇者の命を引き換えにして。
今回ご紹介する漫画『誰が勇者を殺したか』(漫画: 石田あきら 原作:駄犬 キャラクター原案:toi8)は、そんなトリッキーな展開から始まる異色のミステリーだ。
魔王討伐の末、命を落とした勇者。彼はなぜ死んだのか?
本作は剣士や魔法使いなど、勇者と戦ったメンバーへのインタビューを通じて、勇者の死に迫っていくなかなかスリリングな作品だ。
ファンタジーとミステリーという今までなかった切り口で描く、異形の冒険譚。
今回はその魅力にせまってみよう。
謎が謎を呼ぶ冒険譚ミステリー開幕
勇者が魔王を討つ冒険譚。もはやありとあらゆる媒体で擦られすぎたこの設定は、ゲームやラノベのお約束。
異世界転生ものの隆盛で近年はやや数を減らしたかもしれないが、そのエッセンスが滅びる気配はない。
今回ご紹介する『勇者を誰が殺したか』も、そんな勇者系ファンタジーに連なる漫画作品だ。
実はこちら、原作は小説でスニーカー文庫から刊行されている。いわばコミカライズなのだが、それはまあ珍しいものではない。
本作が異端である一番の点は、勇者が魔王討伐の後命を落としており、どうやら原因は他殺ーー誰かに命を奪われたのでは?という疑いが濃厚であるところだろう。
そして、その謎は勇者の事跡をたどるために行われる関係者へのインタビューを通して紐解かれていく。そう、本作は「藪の中」形式で綴られるミステリーなのだ。
しかし、そこはファンタジー世界とあって、証言者は勇者とともに世界を救った英雄たち、剣士、僧侶、魔法使いと、いかにもそれっぽいメンバーが並ぶ。
そして全員なんとなく(色眼鏡ではあるが)怪しい。この中に勇者殺しの犯人がいるのかもしれないし、いないかもしれない。いわば勇者の思い出話をしているメンバーは全員が仲間であり、容疑者である。果たして彼らの中に真犯人はいるのか。
それとも全く別の何かが勇者の命を奪ったのか。真相はぜひ作品を読んで確かめて欲しい。
勇者にまつわるエトセトラ……謎?陰謀?それとも?
謎が謎を呼ぶ勇者殺しにまつわるファンタジーミステリー、『誰が勇者を殺したか』。
本作は関係者の証言によってつづられる「藪の中」形式のミステリーであり、証言者は全員なんとなく怪しい。いわば容疑者だ。ストーリーは彼らへのインタビューという形で進むが、彼らの証言が嘘か真実かはなかなか判断がつかない。
徐々に明らかになる勇者の実像と、魔王討伐の旅路。それが謎を解くカギとなっている。そんな本作の真相はぜひ作品で楽しんでほしいのだが……とはいえこのまま終わるのも記事として少し味気ない。
なのでもう少し、現時点で明らかになっている出来事をベースに、本作を掘り下げてみよう。
まず一巻で勇者の思い出をインタビュアーに語るのは、「剣聖」と「聖女」のふたり。
来るべき日のためにエリートとして研鑽を重ねて来たふたりが、ぽっと出の勇者を最初侮っていたものの、次第に勇者の心意気や、愚直ながらも理にかなった戦い方に惹かれ、仲間として二人が友情を育んでいく様が描かれる。
一見すると疑わしいところは何もなく、二人とも心の底から勇者に信頼を寄せていたことがわかるエピソードも多い。
作品のタイトルが『誰が勇者を殺したか』なんて物騒なものでなければ、王道のRPGシナリオといってもいいほど。むしろ不審なのは勇者(当時は勇者候補の青年)の言動だ。勇者はそもそも平民の出であったが、予言によって勇者見習いとなり、学堂で同じ勇者(やそのパーティメンバー)候補たちと、鍛錬に励むこととなる。
そこでのちの仲間たちと出会うのだが、彼らが語る勇者の行動は凄まじい。自らの肉体を極限まで痛めつけ、適性がなければ不可能と言われる魔術の習得すらこなそうとする姿は、はっきり言って異様。
結局、魔王討伐には勇者の並外れた努力から生み出されたメソッドが役に立つのだが、それにしてもその執念はどこから来たのだろうか。「予言で選ばれたから」とはとても思えない。異常な執念でもって魔王討伐の英雄を目指していた青年。それが勇者の素顔だ。しかし、一方で「勇者になんてなるものではない」と後の剣聖にこぼすシーンもある。
異常なまでの執念で勇者を目指しつつ、勇者なんてならない方がいいと、冷めた見解を示す。どうもこの青年はアンバランスだ。勇者という存在に「憧れ」はないが、勇者にならなければいけないという「執念」はあると言ったところだろうか。このアンバランスな状態は勇者の死の謎を解く大きなカギになりそうである。
さて、このように本作は魔王討伐パーティー全員を容疑者としつつ、不審なのはもしかして勇者自信かも……?と思わせてくる展開となっており、ミステリー度を高めてくる仕掛けになっている。
コミカライズ版第一巻で証言するのは、剣聖と聖女の二人だけ、他の人物たちの証言パートはまだまだ残っている。ここからどのタイミングでどんでん返しが起きるのか、否か。ここから本当にぜひ実際に作品を読んで、真相解明にチャレンジしてみてほしい。
誰が勇者を殺したか
さて今回ご紹介した『誰が勇者を殺したか』は、ファンタジーの体裁をとりつつ、藪の中風のミステリーという中々トリッキーな作品である。とはいえ現時点ではまだまだ明かされていない謎も多く、どのような結末を迎えるかは未知数だ。
既に刊行されている小説版を読むという手もあるが、連載作品ならではのライブ感、漫画特有の臨場感を得られるのはコミック版だけ。
気になった方はぜひ、勇者たちの旅路が迎えた顛末をリアルタイムで追いかけみてはいかがだろうか。
(C) 石田 あきら・駄犬・toi8 KADOKAWA


思った事を何でも!ネガティブOK!