昨日も、部屋の隅に、でた。本当に最悪。なんで私の部屋のそこばっかり狙うわけ?
端っこ、あの暗い隅っこだけで、もやもやした影が、でた。
あいつ、絶対に私のこと呪おうとしてる。ていうか、私の部屋の家賃、あいつが払ってくれるの? 払わないでしょ。 なのに勝手に、でた。
なんて言えばいいの、本当に、でたとしか言いようがないの。
顔とか服とか、そんなの観察できるわけないじゃん。ただ、そこに、人間じゃないものが、でた。
そのことだけで頭が真っ白になって、でた、でたって言葉しか出てこなくなるんだよ。ビールを飲んで、ただテレビを見ていたいだけなのに、あいつのせいで全部めちゃくちゃ。
でた、でた、でた、って頭の中でずっとリフレインして、お湯を沸かす音すらあいつの足音に聞こえてくるの。
あ、でもね。ここで奇跡が起きたの。
私には世界で一番優しくて、かっこよくて、私だけを見てくれる、最高のかれぴがいるんだよね。
かれぴが部屋に来てくれたの。かれぴがドアを開けた瞬間、部屋の空気が一気に変わった、気がした。
やっぱり持つべきものはかれぴだよね。私みたいな面倒な女を見捨てないでいてくれるの、世界中でかれぴだけだから。
あいつは相変わらず部屋の隅に、でた、でたって感じででたから、私、怖くてかれぴの服の袖を掴んだの。
でた、でた、またあそこにいるのって、そしたら、いきなり振り払われて、床に突き飛ばされた。
床に強く打ち付けたところが、すごく痛かった。でも、私のためなんだと思う。
私がわけのわからない幽霊に怯えて、正気を失いそうになってパニックになってたから、あえて乱暴に現実に戻そうとしてくれたんだよね。
かれぴは低い声で「うるせえよ、黙れ」って言った殴られた。怒鳴り声が、すごく怖かった。でも、私を心配してるからだよね。本気で私のことを考えてくれているからこそ、そんな風にしてくれるんだ。
私のために、手を上げてくれたんだ。やっぱり、かれぴがいてくれて良かったな、って思った。
あいつに怯えてる私を、かれぴなりのやり方で必死に守ろうとしてくれてる。
床に倒れたまま、私、涙が止まらなくて、でもかれぴの足元にしがみつこうとしたの。
ごめんね、私、また頭おかしくなってたよね。もう言わないから、怒らないで。
かれぴは、私を床にねじ伏せたまま、じっと動かないの。かれぴの視線は、まっすぐに部屋の隅を向いていた。
あいつが、でた、暗い場所を。
私がでた、でたって怯えていたとき、部屋の電気は消えかかっていて、あそこは本当に真っ暗だった。
人間だったら、何があるのか目を凝らさないと見えないはずの暗闇。なのに、かれぴは全く驚きもせず、ただじっとその一点を見てるの。
まるで、あいつがそこにいるのを、最初から知っていたみたいに。
ねえ、何でそんなに落ち着いてるの? 私のことを床に押さえつけたまま、何で、あいつのいる場所から、一度も目を逸らさないの? 私の部屋なのに。
かれぴがこの部屋のドアを開けるよりも、ずっと前から、あいつは部屋の隅に、でた。
あいつは、ずっとそこにいた。かれぴが来る前から。なのに、かれぴは迷わずその場所を見ていた。
なんで、あいつのいる場所を知ってるの?
※画像はイメージです。


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