過去世の記憶だったのか、はたまたただの妄想だったのか?
今も首を傾げざるを得ない出来事がありました。
もう20年以上前のことですが、私は東京で仕事をしていた時、同人誌活動が最高に面白くて楽しかった。
仕事の合間を縫って、小説を書いて同人誌を作り、イベントに参加して売ったり買ったり。
充実した日々を送っておりました。
私と同人イベント
私ら同人作家にとって、コミックマーケットや赤ブーブーをはじめとするイベントは単に同人誌の即売会というだけではなく、自分の好みと志を共にする友人を見つけたり、交流したりするコミュニケーションの場でもあります。
上手くいけば、文章力のある字書きさんと知り合いになったり、挿絵や漫画の描ける方々に原稿を依頼することもできましたから、皆さん結構さかんに声をかけたり勧誘したりしておりました。
かく言う私も、目に留まった作家さんのスペースに押しかけたりして、「本読みました、面白かったです、次の新刊はいつですか?」などと話しかけたりして、知人友人を作っていたのです。
あの頃の友人は、そうやって知り合った方々ばかりだったと思います。
地元を離れて一人暮らしをしている身としては、イベントは本当にありがたい存在だったんですね。
現在も連絡を取り合っている友人も数人いる程です。
友人のA子
そんな経緯で知り合った友人の一人にA子という女性がおりました。
出会ってすぐは、ファンをしていたアニメの与太話をしていたのですが、何回か会って、イベント帰りに一緒に食事をするようになった辺りから、ちょっと怪しい雰囲気を醸し出すようになっていったのです。
彼女の話は荒唐無稽で、要するに現実離れしていました。
私としては創作の構想を語っているのだろうと思っていて、そういうのもありかな、と大人しく聞いていました。
しかし途中から様子が変わり一人語りに没入して、どんどん自分の世界に入り込んで行ってしまったんですね。
内容も加速して、「自分は役行者の弟子だ」「安倍晴明から特訓を受けた」「朱雀と呼ばれ期待されていた」などなど、どうツッコンでよいのかとなっていったのです。
この辺りでさっさと身を引いておけばよかったんですが、惰性でついつい付き合ってしまったのが運の尽き。
「話を聞いてくれる人」と認定されてしまったようで、普通の日も電話がかかってくるようになったのです。
「自分は凄いんだ!超能力者なんだ!並みの能力者じゃないんだ!」との妄想話を延々と語るわけです。
次第にエスカレートして、時間や場面を問わず電話がかかってくるようになりました。
とりわけ夜は日付を跨いでもなお通話は続き、脈絡のない一方的な自分語りが延々と繰り返されて参りました。
軽く受け流していたが限界があり、受話器を手にしたまま居眠りに落ちることも一度や二度ではありません。
腐れ縁
やや問題があるにしても、アニメや漫画の嗜好が一致していたため、いつしか腐れ縁のような関係になっていたのです。そんなこんなで合同誌の原稿をあげるのに、A子のアパートへお泊りに行くことになりました。
玄関を開けた瞬間、異様さにぎょっとしました。
ワンルームにロフトが付いたアパートの部屋の中は、まるで地震にでも遭ったかようにぐっちゃぐちゃ。
本棚や家具らしきものは見えてはいたんですが、山積みになった本や雑誌で部屋が埋もれておりまして、足の踏み場もない状態。
ミニキッチンには汚れたまま洗っていない鍋や食器が無造作に積み上げられ、ここは本当に人が住んでいるのか?と戸惑うほどの惨状でした。
A子は看護師の仕事をしていましたので、忙しいし、疲れて掃除をする暇もないのだろうと思ったのですが、「少しは片付けた方が良いよ」と話かけてもガン無視で人の話を聞こうともしません。
ここに泊まる事になるのか⋯と思って足元を片付けると、見えるのがいけないと言って床に本を敷き詰めはじめ、更にヤバさ増大です。
ただの汚部屋ではない異常を感じ、見れば見る程、狂気を感じさせられる室内でした。
しかし新刊を落とす訳には行かないと、我慢して原稿を書いたものです。
もう限界
それから数日後、また深夜にA子から電話が入りました。
すでに就寝していたところを叩き起こされ、苛立ちは隠せません。
どうせいつもの話だろうと受話器を取ると、予想以上に妄想が悪化しておりました。
電話口でA子曰は叫ぶように話します。
「部屋に鬼がいる、この鬼は大昔、人間が滅ぼした種族で、怨霊となって私の部屋に来ている!!」
「可哀そう、可哀そう……、しかもいきなり子鬼に指を握られた!」
ドタドタと部屋の中で、なにか騒いでいるような音が聞こえ、
「このままだとヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!」
と叫びだしたと思えば、
「もうだめだ!」
と大声で泣き出しました。
何がヤバいのか、だめなのか不明、狼狽したり泣いたりと忙しいことです。
明日も早いのに一人で大騒ぎしているのですが、私は途中でウトウトして寝落ち寸前。
その事に気がついたようで、「私の声には睡魔が宿る」などと自慢げに言っておりました。
詳しくは忘れてしまいましたが、私に何かが宿っているだの、一緒に戦わなければならないなど言い出し、「いい加減、 やってられんわ!」と心底思うようになったのです。
徐々に距離を取り、イベントで別のジャンルに移動したのを機に縁を切ることに成功。
これで一件落着となりました。
その後のA子
しばらくして共通の友人に聞いた話しによると、A子はご両親に実家に連れ戻され、精神病院に入れられたとのこと。
ありもしない妄想世界の話をさも現実のように語ったり、部屋をわざと散らかしたりするのは、精神病の典型的な症状だそうです。
あの部屋を見て、言いようのない違和感に襲われたのは気のせいではなかったんだと納得した次第です。
もっとも、そのような狂気の中から芸術的な作品を生み出した人々もいます。しかし、A子が書いた小説は、だいたいが支離滅裂でストーリー性はもちろん、判読不能な文体だったりして、とても読めたものではありませんでした。
いわゆる中二病をこじらせた⋯だけでは済まなかったA子。
昔よりかはだいぶ少なくなったとは思いますし偏見ではありますが、同人業界では、今でも様々なタイプの魑魅魍魎が潜んでいます。
精神的にも物理的にも実害が伴う事がありますので、幽霊や妖怪よりもやっかいな存在だと言えます。
※画像はイメージです。


思った事を何でも!ネガティブOK!