両親が共働きだったのでようやく取れた夏休み、でも1日だけだったので、車に乗って2時間ほど行った日帰り旅行で人気のスポットへ遊びにいきました。
楽しいお休みの1日
思い出作りと夏休みの宿題である絵日記のネタにもなると思い、あえて高速道路を使わずに下道を使って目的地に向います。
途中、有名な温泉街を通って、山道をぬけて目的地に到着。
古い街並みを歩いて、お店をのぞいたり、ゆったりのんびりと一日を過ごし、夕方前にはちょっと早めにごはんを食べて、そろそろ帰ろうかということに。
帰りの車内では「ここは絵日記のネタになりそうだ」とか、「今日食べたグルメの話」をして、家族みんなで盛り上がり楽しい時間でした。
途中、窓の外を覗くと街灯が一つもなく辺り一面真っ暗な山を抜けると、とつぜん周りが開けて一面の星空が広がり、あまりの綺麗さにあれだけうるさかった弟も黙って見入るくらい圧巻の景色。
車を止めて、しばらくの間、家族全員で魅入っていました。
裏道で早く帰ろう
ふと時計をみると、思ったより時間が過ぎていて急いで帰ろうとなり、もう少しで温泉街に差し掛かるというところで、突然、父が何も言わずに細い横道へと右折したのです。
私の記憶では、温泉街の後、山道に入る前に曲がらず、一直線の道を進んだはずだったのに?
思わず私は、「ここ、曲がったっけ?」と父に問いかけ、助手席にいた母も疑問に思っていたようで、同じことを父に聞きました。
すると、父は「いや、なんか曲がると裏道で早く帰れたと思ったんだよ」と言って、そのまま進んでいきます。
「へえ・・・そんなんだ」と思っていると、母が「前に来たことあったっけ?」と聞きます。
「初めてだよ」と答える父に、全員が「え・・・?」と口を合わせてつぶやきました。
温泉街の灯りも遠ざかっていき、道もどんどん細くなり、ついには塗装されていた道が砂利道に変わると、さすがにみんなの口数が少なくなり、車内には不穏な空気が漂い始めます。
母強し?
しばらく進んでいくうちに、「引き換えした方がいい」と車に乗っている全員が思い始めた時、すこし開けた場所が見えてきたので「あそこで折り返せる!」と私は後ろの席から指さしました。
父はスピードを緩めてUターンしようとすると、フロントライトに細い道が照らされて、その奥には廃墟があります。
それを見た父は引き返そうとせず、「面白そうだから見て行こう!」と向うと、それは不気味な廃旅館。
霊感がない私でも「あっ、ここはダメなところだ」と感じましたが、父は車を止めて降りようとします。
すると母が、「なんてとこに連れてきてくれたの!!!」と叫んだことで、父は我に返り、急いで車を元来た道に向けて逃げるように走らせました。
その後の車内は、母が「なぜもっと早く戻らなかったのか」と父を叱ったり、とても険悪。
重苦しいムードに耐えらなかったようで、弟が大きな声で歌っておどけながら、なんとか無事に帰宅したのです。
それからしばらくして、廃旅館の入口に見えた名前を思いだし、家のパソコンをインターネットに繋いで検索してみると、地元では有名な幽霊スポット。
もしかしたら、父は何かに呼ばれてしまったのだろうかと思ってゾッとしました。
実は・・・・
この話には後日談があります。
大人になり、ふとあの日のことを思い出し、両親に「こんなことがあったよね」と話すと、母がこう言いました。「その話、あまりしない方がいいよ、実はね…」と。実は私の母は俗に言う「見える体質」の人で、その日に関しても、私には見えなかったのですが、廃旅館に着いた瞬間、車を囲むように、廃旅館やその周りからたくさんの白い人影が車に向かって近づいてくるのが、母には見えていたそうです。母は当時、私たちが怖がらないようにそのことを言えなかったと話してくれました。
廃旅館は取り壊され、今はもう存在しないようですが、あの時の出来事は今でも忘れられません。
※画像はイメージです。


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