これは旧日本軍のある連隊に伝わっていたほのぼの妖怪話。
天狗に集合場所まで運んでもらう
連隊の敷地の中に、見上げるほどの大木が一本だけポツンと立っていた。その木の横には小さなお宮が建っていた。連隊が出来る前から存在するお宮で、天狗を祀っていると言われていた。
ある日一人の新兵が集合場所に遅れそうになっていた。お宮の近くまで走ってきたがどうにも間に合わない。このままでは上官にビンタを食らうと恐れていたとき、急につむじ風が吹いて目の中にゴミが入った。
目を閉じてこすり、次に開くと、自分の身体がビュービューと吹く竜巻に包まれていた。建物の屋根が足元に見え、空中を飛んでいるのがわかった。ふと気がつくと彼は地面に下ろされ、集合場所のすぐ近くまでたどり着いていた。
その結果、彼は集合に間に合って事なきを得たという。
天狗に身代わりになってもらう
また別の新兵は、古参兵の目の敵にされていてイジメられていた。そのせいで同期よりもはるかにキツイしごきやビンタを受け、毎日毎日お宮の近くで泣いていた。
ある日も古参兵に呼び出されて、憂鬱な顔でお宮のそばを通りかかった。その時お宮の中から自分を招く声がしたという。
「おまえの代わりに俺が行ってくるんで、ここで待ってろ」
と、その連隊がある地方の方言混じりで言われたという。
するとガッシリとした体型の赤い顔の人がお宮の横の木の後ろから現れた。その赤い顔の人は彼と全く同じ軍服と階級章をつけていた。そしてそのまま呼び出し場所へ向かい、彼に化け、身代わりとなって古参兵に殴られたという。
その後も何度もお宮のあたりで赤い顔の人が現れては彼の身代わりになって殴られてくれたらしい。
なお、その赤い顔の人の人相は巷で言われるような天狗顔ではなく、真っ赤と言うよりは濃いピンクが入っており、眼つきは人間離れしていたが鼻はあまり高くなかったそうだ。
※写真はイメージです。
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