ぼくの通っている小学校の西校舎には、みんなが気味悪がっている男子トイレがある。
三階の一番奥にある古いトイレで、昼でも暗い。電気もたまにチカチカしていて、誰もいないのに水が流れることがあるとか、変な噂もあった。
でも本当に幽霊を見たやつはいないから、みんなふざけ半分に話していた。
金曜日、放課後にぼくとゆうととかけるの三人で、学校でかくれんぼをした。
運動場はもう誰もいなくて、先生もほとんど帰っていた。
鬼はじゃんけんで負けたかけるになった。
ぼくとゆうとは急いで校舎の中へ走った。
ぼくはどこに隠れるか迷ったけど、西校舎の三階まで行けば絶対見つからないと思って、そのトイレに入った。
ちょっと怖かったけど、どうせ何もおきないだろうと思った。
ぼくは一番奥のトイレに入って、鍵を閉めた。
しばらくじっとしていると、隣から変な音がした。
気のせいかなと思ったけど、だんだん大きくなって、壁を引っかいてるみたいに聞こえた。
ぼくは急に怖くなった。
そのあと、小さい声も聞こえた。
よく聞こえなかったけど、何回も同じことを言っていた。
声は、かけるに少し似ていた。
ぼくはびっくりして個室を飛び出した。すると、手洗い場のところにゆうともいた。
ゆうとも変な顔をしていて、ぼくを見ると、小さい声で「今の聞いた?」と言った。
そのとき、廊下のほうから足音がした。
見ると、かけるが普通に歩いてきた。
ぼくらを見つけて笑っていた。
ぼくは安心したけど、じゃあさっきの声は何だったんだろうと思った。
でも、そのあとトイレから音がした。強くドアを叩いてる。
ぼくらは急に怖くなった。
ゆうとが、誰かがふざけて隠れてるんじゃないかと言った。
それで近くにあった掃除用の長い棒を持ってきて、音がするトイレのドアが開かないようにした。
棒をドアに引っかけたあと、中からすごい音がした。何回も叩いていた。
声も聞こえたけど、何を言っているかはちゃんと聞こえなかった。
ぼくらは、そのまま逃げた。校門から帰った。
家に帰ってからも、ぼくはずっとあの声が気になっていた。
もし誰かいたら先生に怒られる。
だから結局、僕たちは誰にも言わなかった。
月曜日に学校へ行くと、かけるは普通に来ていたから、ぼくは安心した。
でも、その日の授業中に、なんとなく変だと思った。
かけるは字がすごく汚かったのに、急に丁寧になっていた。
先生にも「今日きれいだな」って言われていた。
それから、給食の時間も少し変だった。
かけるは前からピーマンが嫌いで、いつも最後まで残していた。
でもその日は、何も言わずに全部食べていた。
ぼくとゆうとは、それに気づいていた。
放課後になって、ぼくらはかけるに金曜日のことを聞いた。
かけるは変な顔をした。それから、トイレには行ってないと言った。
ずっと一階を探していたと言っていた。
でも、ぼくらは確かに聞いた。
あの声はかけるに似ていた。
ぼくらは確かめる為に、三階のトイレを見に行った。
二番目のトイレの前に、あの日使った棒が落ちていた。
ドアを開けると、中には誰もいなかった。
でも、床に小さいキーホルダーが落ちていた。
かけるがランドセルにつけていたゲームのキャラクターのキーホルダーだった。
ぼくらは急に怖くなって、すぐにトイレを出た。
かけるは今も毎日学校に来ている。
先生も親も、誰も変だと思っていない。
でもぼくとゆうとは、ときどき授業中にかけるを見ると、少しだけ変な気持ちになる。
あの日、三階のトイレにいたのは誰だったんだろう。
※画像はイメージです。


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