電気、ガソリン、原子力、反物質にブラックホール・・・、エンターテインメント作品において「エネルギー(源)」として語られるものは数多く存在します。
しかしその一方で「それをどのように使って動いているか」という描写については、そうした科学・工学・物理学の話題を主題として扱う作品でも無ければ、あまり話題に上ることはないものです。
とは言え物語の「重要なスパイス」として、時に「エネルギー切れで動けない」描写であったり「上手いタイミングで補給を行い逆転する」といった展開があれば、その中身が気になってしまうのも人情というものではないでしょうか。
そんな訳(?)で、今回は「エネルギー」という言葉が表す意味とは何なのか、そこから「どうやってパワフルな挙動を作り出していくのか」という事へ思いを馳せてみたいと思います。
「エネルギー」とはそもそも何か
「エネルギー」という言葉から思い描くものと言えば「電気」「熱」「ガソリン」場合によっては「栄養」であったり「気合い」なんて答えもあるかもしれません。
これは「エネルギー」という言葉がそれ程までに包括的に用いられている事実を表している一つの例だと言えるでしょう。逆に言えばこの事実は「エネルギー」という言葉が、様々なものを用いたとしても「ある目的」を得る事が出来れば「エネルギーたり得る」という事を表していると言えます。
その「目的」と言うのが(エネルギーを消費して)「力」を発生させる事、或いは「仕事(量)」と表現される作用を起こす事とされます。
この部分は日本語の難しさと言える部分かもしれませんが、前者は「1リットルのガソリンで1トンの自動車を何メートルか走らせる力が得られる」という具合で用い、後者は「1リットルのガソリンで1トンの自動車を何メートルか走らせるという仕事が出来る」という具合の表現でイメージすれば分かりやすいかもしれません。
そしてここでは「1トンの自動車を何メートルか走らせる」という「エネルギーを持っている」のが「ガソリンという物質」となります。
その為「エネルギー」という言葉には「エネルギーを生み出す素(≒未使用状態のエネルギー)」と「生み出された力(≒素が発生させるエネルギー)」という「双方向」の意味合いが含まれているという事になります。
この「双方向性」について一般的な知識として今日良く知られるであろうものが「熱量」1グラムの水の温度を1℃上昇させる「エネルギー」を「1カロリー(1Cal)」とするもので、栄養学等において「1キロカロリー(1Kcal)」=1リットルの水を1℃(14.5℃から15.5℃)上昇させるエネルギーの指標として用いられるものがあります。トレーニングやダイエットにおいて「この運動で消費されるカロリー」が「ご飯○杯分」等と表される事は、分かりやすい例と言えます。
この関係性は、物理学において「熱力学」を筆頭とする古くからの主要な命題として研究が重ねられ「熱と圧力」「位置(質量)と運動」「電気と磁気」等において相互にエネルギーを計算する事で、現代社会を形作る様々なエネルギーインフラを構築する知識となっています。
そして現代の物理学では「エネルギーとは何なのか」という視点を突き詰めて行くと「量子の振動(運動)」に辿り着くという事が示されています。
「物質」が「エネルギー」に変化していく現象
例えば「燃焼」の場合、何らかの物質に「高温」という「高エネルギー」状態へ「酸素」が供給される事で、物質が「酸化」よりも高速で酸化物へと変質、その過程で「熱」や「光」等の「エネルギー」を空中へ放射するという事が「分子」や「原子」の規模で説明する事が出来ます。
この観点を更に発展…物質の「原子」が持つ性質として「電子」のやり取りによってエネルギーが伝播する作用が「電気」であるという事や、原子が崩壊する事によって放出される「崩壊熱」や「電磁波」を「熱」として利用する「原子力」の仕組みなど、より「微細な世界」を説明する事が出来るようになって行きました。
その結果として見えて来たのが「量子の振動」…「光」や「電磁波」のように高速で動き回っている状態の素粒子はその航跡が「波長」として捉えられ、この波長が短い程「エネルギーが高い」とされます。
この素粒子を「量子化」…その場から動かない粒子として仮定した時に「エネルギーが高い程、(その場で)細かく強く振動している」と考えます。
これが「量子の振動」であり、これを持って飛び出した量子が別の量子へ衝突し、その振動を「受け渡す」事でエネルギーが「伝わる」…即ち火で水を熱して蒸気や熱水を作るように、或いは火が燃え移るようにといった、より大きな現象としても見られる「エネルギー」と称されるものの挙動が現れていると説明出来るようになったと言えます。
ここまで微細な観点から現実の「エネルギー問題」を扱う事はあまり無いとは言えますが「エネルギーとは何か」という根本命題に対する現状での最も精密な答えであり、エネルギーという概念のイメージを捉える為の手掛かりとしては重要だと言えるので簡単に触れておきました。
高エネルギーも取り出しただけじゃ「使え」ない!?
極論してしまえば「あらゆる量子」から「エネルギー=量子の振動」を取り出す事は出来る…とまで言えてしまうような話になった所で、それでもエネルギーは「大きい方が良い」し「効率良く取り出せる」事に越した事はありません。
例えば人間も「目にする」事が出来る最も代表的な量子である「光(光子)」。
厳密に言うと量子化された「光子」そのものを目にしている訳では無く、あくまで「光」として見える大量の光という意味ではあります…もまた、相当量の「エネルギー=振動(波長)」を持っており、それを「光圧」つまり文字通りの「圧力」として取り出す事は出来ます。
しかしそれ自体はとても小さなエネルギーで、無重力空間で大量に光を集める「ライトセイル(帆)」と呼ばれる器具でとても軽いものをわずかに動かせるだけの力が得られる程度とされます。
スーパーロボットの草分けである「マジンガーZ」は「光子力」と呼ばれるエネルギー源で動くとされますが、実際には特殊合金から得られるある種の「核反応」であるとされます。
詳細については謎が多いものではありますが、少なくとも現実に準拠する「光子」より遙かに巨大なエネルギー源である事は確かであり、巨大なメカをパワフルに駆動させるには「高エネルギー」が必要であるという事を物語ると言えます。
しかし「高いエネルギー」と言うだけでは「巨大なメカを自由に動かす」には至りません。
例えば自動車では「内燃機関」という「エンジン」が駆動に必要となりますが、これは「ガソリン」から「燃焼(爆発)」という形で「取り出したエネルギー」の内「爆圧(圧力)」を「シリンダー」へ送り「回転運動に変換」する事で「プロペラシャフト」を回転、更にこれを各部のタイヤへ「適切な回転方向に変換」する事でようやく「地面を走行する力」にしています。
つまり「四輪を回転させて推進力にする」という、一見シンプル…実際人類が発明した圧力で駆動する機関としては高効率で完成度が極めて高いと言えるもの…な動作にもこれだけの変換過程が必要になる事が示唆されます。
増してこれが「人体のように」複雑な動作を行うとなると、十分な出力で取り出したエネルギーを「様々に変換」して「効率良く運用」する仕組みが求められるという事になります。
有機物を分解するエネルギー源
自然界における複雑性な仕組みの代表と言えば、人間も含めた「動物」…エネルギー源として有機物を分解し、神経と筋肉で動作する形態が「原点」となるでしょう。
これは超高精度な分散制御系コンピュータである「脳」と「神経」から発せられるわずかな「電気」を利用して、身体を構成する無数の「筋繊維の伸縮」をコントロールする事で「骨格の制限範囲内」でのあらゆる動作が実行出来る…といったものだと言えます。
機械でこの一切を再現する事は、まず「筋繊維」と紐付けられた「神経」に類するコンピュータを再現する事からあまりに複雑で困難と言えるものですが、細密な駆動を良しとする「手部」を伸縮可逆性を持つ特殊な樹脂と化学反応による「アクチュエーター」として完成させ、一方で陸戦兵器としての剛性と複雑な地形を単独で踏破出来るとする強靱な関節部は「内燃機関と燃料電池の大出力ハイブリッドシステム」をエネルギー源とした「電力駆動の強力なサーボモータ」で構成し、人型陸戦兵器としたのがゲーム「フロントミッション」シリーズにおける「ヴァンツァー(WAP、解説はその先駆であるヴァンドルグ・ヴァーゲン=WAWのもの)」であるとされます。
人体もまた、微細ながら「電気」をエネルギー伝達の手段として用いている部分があるように、様々な形へ「直接的に変換出来る」という意味では、創作の世界でも「主力」となるものだと言えるかもしれません。
実際に「機動戦士ガンダム」でも、最終的にその数と力で勝利を収める事となった「連邦軍」は「モビルスーツ」の駆動方式に「新技術を導入した強力な電動モーター」で関節部を駆動させる形態を採用しているとされます。
しかしその一方「モビルスーツ」の導入へ先鞭を付けた「ジオン軍」では「核反応炉」から得たエネルギー(熱、もしくは圧力)をコンバータ(変換器)によってパルス状の圧力へ変換、この圧力を流体で満たされたパイプへ伝達する事で関節を駆動させるというアイデアが与えられています。
少々語弊はありますが、言うなれば「心臓から血液が送られて身体を駆け巡り動力となる」ようなイメージを想起させるこのアイデアは、シンプルな圧力を人型メカを駆動させる「動力」へとパワフルに変換させるものとして象徴的と言えるかもしれません。
最後に
「謎多き」スーパーロボットである「マジンガーZ」などは「光子力」というエネルギー源を元に、まるで人体を動かす筋繊維のように全身の金属分子を「伸縮」させ、莫大な力を生み出し大立ち回りをしているのかも、と考えて見るのも楽しい「エネルギー」というものの見方。
今回もまた、こうして様々な作品の楽しみ方を拡げる一助として頂ければ嬉しく思います。
※画像はイメージです。
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