古来より瞳には魔力が宿ると言い伝えられてきました。
世界各地に残る邪眼信仰のエピソードは、人々の視線への恐れを物語ります。
そんな邪眼に纏わるエピソードをご紹介していきます。
世界中に見られる邪視信仰
邪眼または魔眼は世界中に分布する民間伝承。悪意を持って睨み付けることにより対象に呪いを掛けると言われ、イーヴィルアイ(evil eye)とも称されます。『GetBackers-奪還屋-』の主人公、美堂蛮の能力としてもお馴染みですね。
欧州には魔女が行使する特殊能力の一種として伝わり、博物学者・南方熊楠による「邪視」の訳語が定着しました。
たとえばエジプト神話におけるラーの目。これは反逆の徒を討ち滅ぼす為、ラーが自らの片目を破壊の女神セクメトに作り変えて地上に送り、人間を大殺戮した逸話に由来します。
南ヨーロッパや中東では特に青い瞳が警戒され、「目を合わせると呪いに掛かる」と恐れられました。
ケルト神話の神・バロールも邪視の使い手。大天使サリエルは剣呑な眼光で相手の動きを縛った上で殺し、ギリシャ神話のメドゥーサはひと睨みで対象を石化させます。
同じ能力を秘めた蛇の王、バジリスクも忘れてはいけません。
邪視に対抗するお守りや護符
一方で目の意匠は、呪いや魔物を退ける護符として用いられてきました。有名なのがトルコのナサール・ボンジュウ。
ナサールはアラビア語で視覚・監視・注意を意味する言葉。見た目は青いガラスの中心に水色と白の二重円を描き入れた装飾品で、下町の土産物屋で普通に売られています。二重円が目玉を模しているのは言うまでもありません。
日本の籠目紋様もまた鬼が忌避する魔除けの一種。
邪視信仰が根強い地中海沿岸地域では船の舳先に大きな目を描き、大時化や難破を回避しました。
特筆すべきは古代ローマのファリックチャーム。これはいわゆる陽根のお守りで、邪視を退ける効果があるとされたそうです。
人々は何故目を恐れ崇めるのか
邪眼・邪視信仰が世界中に広まった背景には、今昔問わず人々が視線に敏感だった事実が挙げられます。
色素の薄い青い目やアルビノの赤い目を我々が神秘的に感じるのと同じ心理が、昔の人々にも働いたのでしょうか。
漫画『ダークギャザリング』の主人公・寶月夜宵は髑髏型の重瞳が特徴ですが、これは車輪眼と言われる多瞳孔症に属します。
多瞳症は事故や病気による後天性と先天性に分けられるものの、瞳孔が二個以上に分裂した外見は異形じみて、なかなかにインパクトを兼ね備えています。
通常と異なる色や形状の瞳と相対した時、それを異端の証だと思い込んでしまうのは、マイノリティへの偏見を捨て切れぬ人間の摂理かもしれません。


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