ファンタジー小説が、広く親しまれるようになって久しい昨今。
主に日本のサブカルチャーやゲームにおける”妖精”という存在は、可愛らしくて善き友人として描かれることが多いと思う。
特に80年代に巻き起こった「おまじない」ブームの中で、描かれた妖精達の姿はとても可愛らしい。
それらの作品は、私も楽しく読ませていただいている。だが、民間伝承をこよなく愛し、その中に現れる”妖精”達を親しんできた私としては、本来の妖精の姿というものを知っていただきたいと思うことも確かである。
ということで、今回はそれら妖精達の本来の姿について語っていきたい。
そもそも妖精とは?
「妖精」や「フェアリー」、これらの単語を聞いて、読者の皆様は一体どういうものを想像するだろうか?
ピーター・パンのティンカーベル、RPGゲームでのかわいいお助けキャラ、それともラノベのヒロイン枠。
おそらく、どのような物を想像しているのであれ、おそらく背中に小さな羽が生えた、可愛らしい少女の姿をした小人を思い浮かべているのではないだろう。
あの少し生意気で可愛らしく、サポートしてくれたり、占い・・・なんかそんな感じの便利で可愛い存在。
いいや、違う。妖精はそんな善性のものではない。
妖精とは本来伝承においてどういった存在で、どう扱われてきたものなのか。
まずは一般的に広く思われている妖精のイメージと、「伝承」における妖精の違いを解説していこうと思う。
妖精の姿
妖精は有翼の小人である、という見た目。
これは明確に出典というものはないが、20世紀初頭にはその姿が世に知れ渡っているのが確認できる。
その代表的なのが「コティングリー妖精事件」である。
内容を簡単に説明すると、1917年にコティングリー村に住む少女二人が、妖精を見たと主張し、撮影した写真を公開したという事件だ。
結論から言えば捏造で、紙で作った妖精といっしょに写真を撮ったというだけのお粗末な偽造写真であった。しかし、当時は論争を巻き起こし、シャーロックニームズの作家、コナン・ドイルまで騙された。
よく調べていくと、ノームという妖精が写っているとされている記載がある。
ノームとは妖精の一種で、わかりやすく言えば、おしゃれな庭においてある小人の置物、白雪姫に登場する七人のこびともノームである。
この写真に写っていたノームこそが、ビクトリア朝風のドレスを着た、羽のある小さな小人の少女といった出で立ちである。そして、妖精は彼女達の創作ではなく、当時流通していた子供向けの絵本から模写したものだという。
妖精の容姿に関する今のテンプレートというのは、この時にすでに出来上がっていて、広く共有されていた。
妖精の性質
妖精の性質については、ノームという妖精が居ると記述した通り、元来、妖精とは様々な種類が存在して、見た目も性質も様々なのだ。
例えば、ウィル・オ・ウィスプという妖精は、夜に湖や沼地、墓所に現れる火の玉で、旅人を惑わせるものだと言われている。そう、日本で言うならば人魂に当たる。
他にもバンシーという妖精は、由緒ある家柄の家の前で泣き始め、その家の人物が近いうちに死ぬ、もしくは遠方で死んでしまったことを伝えるという不吉な存在。
こういった魂やスピリチュアルなイメージに存在以外にも、ファンタジーで定番の種族のエルフやドワーフ、ゴブリンも、伝承としては妖精の名前である。
いくつかの伝承があるなかで、それらの性質に影響したのが20世紀に描かれた児童文学からだと推測する。ちなみに今のようにファンタジーという分類が確立される前の時代では、こういった内容のものが児童文学の括りとなっていた。
とくに言えば世界的に有名な指輪物語が、現在の基準になったといっても過言ではない。
妖精の本質
例えばイギリス系民謡の「イザベルとエルフの騎士」という曲に登場するエルフを例にあげる。
曲の内容は、イザベラという女性がエルフの騎士と駆け落ちするが、駆け落ち自体がエルフの騎士のかけた魔法によって操られていたとされて、どちらかといえば利己的である。
他にも様々な伝承における妖精とは、恐ろしく、幻惑の技術に長け、害をなす存在であることが殆ど。なにか手助けをしてくれるような輩は比較的少数派となる。
そもそも妖精自体が、本来。災いや身内の不幸、精神疾患や障害の理由の象徴であったり、戦争をしていた敵国兵士の比喩であったり、矮小化された土着の神々であったりするもの。
日本で言うならば「妖怪」と言ったほうが、ピンとくるような存在であることがほとんどだ。
思うに、存在がよりわけられ、悪性のあるものが亜人種、モンスター、妖怪、魔法使いなどに分類されて行き、宙に浮いてしまった「妖精」という単語にキャラクター性を付与したものが、現在の妖精なのではないだろうか?
であるから、海外の妖精伝説で有名な地域に観光に行く際は気をつけた方が良い。眼の前にいくら可愛らしい存在が現れたとて、内面までその外見どおりとは限らない。
本来の妖精とは、旅人を森の中で遭難させる者であり、イタズラ感覚で人を崖から突き落とす存在であり、死者の怨霊であるのだから。
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