小さかった頃、お盆に家族で自宅から車で1時間程度離れた霊園へ、墓参りに行くことになりました。
お墓は小高い丘の中腹辺りにあり、母に手を引かれ嫌々ながら駐車場から急な坂を登ったのを覚えています。
誰だろう?
お墓に着いて母や祖母が掃除や花を添えている間、当然幼い私はすることがなくてつまらない。
「何か遊ぶものはないだろうか」と周辺の探索をしていました。
・・・すると、更に上に登った遠くのお墓の方に、帽子を被った男性がこちらを見ているのに気が付きました。
「誰だろう?」
暇だったし、人見知りをしない私は男性と話をしようかと坂を走っていきます。
男性の姿がハッキリと見えるようになるまで近づいてみると、周りの大人が着ているのを見たことがないような変わった服装をしていました。
「こんにちは!ここでなにしてるの?」
男性に声を掛けても返事は帰ってきません。
顔を覗こうとしましたが、俯き加減で良く見えない。
口は動いているのは分かるけれど、聞こえるような、聞こえない・・・そんな感じ。
段々と1人でいるのが怖くなってきて・・・「さようなら」と男性に言い、来た道を戻ることにしました。
何度か振り返ってみると、男性はその場から動くことはなくじっと佇んでいます。
私の姿を捉えたまま。
知らない男の人がいた
墓まで戻り、当たり前ですが母に叱られてしまいます。
しかし、子どもながらに言い分もある。
「坂の上に、知らない男の人がいた」
「話しかけたけど、何も答えてくれなかった」
何があったのかを一生懸命話し、「あっちだよ」と指さして見上げると。
あの男性が、此方を見て笑いながら手招きしています。
それも最初にいた場所よりも段々と近づいて、見えなかった顔もハッキリと見えるようになり、真っ白な仮面を被ったような、この世のものとは思えない。
口は動いていないのに「おいで、おいで」と。
突然、背筋が凍ったような恐怖を感じ、近づいてくる男性を指さしながら、母にしがみついてなく泣くのですが・・・。どうやら母には男性の姿が見えていないようです。
「怖い、早く帰ろう!ここにいたくない」
でも、あまりの豹変ぶりにただ事ではないと思った母は、私を抱えて駐車場へと向かいます。
母に抱きかかえれられながら、男性の方を見ると姿は見えません。
ホッとしたのもつかの間。
「早く出て行けよ」とどこからか男性の声が聞こえて・・・私は気を失ってしまいました。
もう少しだったな
後日、母から話を聞いた話です。
ぐったりしている私を見て気が動転していた母を寺の住職が見かけ、熱中症かもしれないとお寺で休ませてもらったそうです。
涼みながら母が事情を話すと住職さんはなにか思いついたように「こういう時期ですし、お払いしておきましょう」と勧められました。
記憶にはないのですがお経を読んでいる最中、私は何度も「もう少しだったな」と呟いていたらしく、子供が言うには不自然な言葉で、母はとても恐ろしかったと今でも言っています。
あのままだったら本当に、身体を乗っ取られていたのかもしれないですね。
皆様も墓参りの際はご注意を。
※画像はイメージです。
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