「銀翼」というその言葉、いつ、誰が使い始めたのかな?
日本語大辞典に「飛行機の銀色に輝くつばさ。転じて飛行機のこと」とある。
大抵の人が知っているこの言葉。
ある時、疑問符が頭上に点灯した。いつ頃、誰が使い始めたのかな?
ネット検索で調べてみた。何も出てこない・・・。
全金属製飛行機
現代では飛行機と言えばジュラルミン製。
かつてのアメリカン航空やJAL CARG機の機体は塗料による塗装ではなく、ポリッシュドスキン仕様のジュラルミンそのものの輝きで覆われ、文字通りの銀翼だった。
太平洋戦争末期、日本に飛来したボーイングB29もポリッシュドスキンのキンキラで、さらに時間を遡ると昭和15年頃までは、旧帝国海軍艦上戦闘機も銀色塗装だったという。
飛ぶ飛行機を一般人が見る事が稀だったこの時代、航空隊基地から飛び立つカッコイイ戦闘機のキンキラは、人々にとってどれほど印象的だったろうか。
文学好きの誰かが、「銀翼だ!」などと呟いても不思議ではない。
昭和10年、海軍初の全金属製低翼単葉機、九六式艦上戦闘機試作機完成。
「銀翼」が始まったのはこの辺りか?
飛行機に乗った歌人
昭和9年に歌謡曲「銀翼ひかる」、昭和6年映画「狂える銀翼」が世に出ている。
全金属製海軍機が飛び立つ以前に「銀翼」は既に飛翔していたようだ。
昭和4年、歌人・土岐善麿、短歌一首を発表。
「いきなり太陽が窓に飛び込む、銀翼の左から下から右から」
朝日新聞社定期旅客航空便の全金属製旅客機、ドニエル・コメット機に乗った感動を謳ったものだ。
この「銀翼」がコメット機に触発された創作造語なのか、世のあった「銀翼」の流用なのかはわからない。
いずれにせよ、「銀翼」はこの時点で既に存在した。
布張り飛行機
黎明期、飛行機の機体や翼は布張りだった。
その素材はリネンや木綿などで、強化、防水、空気透過防止のためドープ塗装されていた。
塗装のドープ塗料は初期にはワニスで、基本的には透明である。
布材の地色は生成りなので、初期飛行機の機体色はほぼ白色だったのではないか。
晴天の天空をゆっくりと旋回する飛行機の白布が、明るい陽光で白く輝いて見えたことだろう。
白一色の眩い雪景色を銀世界と喩えるのなら、誰かがこれを「銀翼」と表現してもおかしくない。
結局、残念ながら「銀翼」をいつ、誰が使い始めたのかは分からなかった。
これほど一般的な言葉の由来が全く不明なのは不思議である。
どなたかご存じの方、投稿を乞う。
※画像はイメージです。
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