これは旧制中学がルーツのとある高校に存在する、卒業式と卒業ソングにまつわる怪談である。
謎の歌声
二月の終わり、赴任してきたばかりの校長が仕事を終えて、すっかり暗くなった無人の校舎を歩いていると体育館の方から歌声が聞こえる。
はじめは部活動か何かだと思っていたが、それにしても時間帯が遅すぎる。
体育館へ向かう渡り廊下を進み、体育館の扉を開けると歌声がぴたりとやんで、真っ暗で誰もいない。
不思議に思ったが気のせいだろうと、扉を閉めて去ろうとすると再び歌声が聞こえてくる。
次の日も次の日も夜になると歌声が聞こえ、校長も怖くなり、仕事を手早く済ませ早めに帰るようになった。
やがて三月になり卒業式が行われると、その翌日からぴたりと歌声はしなくなったという。
あとから教員たちにたずねると、この学校では卒業が近づくたび、夜になると体育館から歌声や若い男女のすすり泣く声が聞えるという噂がある。
卒業ソングを歌うのは
翌年の二月、そんな噂をすっかり忘れていた校長が、夜の校舎を歩いているとき、体育館から歌声と共にすすり泣く声まで聞こえてきた。
彼は現実主義であり、恐ろしい反面、生徒のいたずらだろうと思い、今年ことは正体を見破ってやろうと忍び足で歌声がする体育館へ向かい、勢いよく扉を開くと・・・・。
するとそこには、今の制服とは違った、実に古めかしい学生服を着た男女がステージに並んで立って合唱している姿が見えた。あぜんとしているうちに、彼らの姿が一瞬で消え、もとの無人の真っ暗な体育館に戻った。
さすがの校長もこれには驚き、声を上げて逃げ帰ったのだった。
呪なのか?
そのあとすぐに校長は体調を崩して退職し、卒業式の前には亡くなった。
歴史を調べていくと、戦中、卒業を間近にした生徒が空襲で大勢亡くなった。それ以来、卒業式が近づくたびに彼らの霊が体育館に現れて歌い続けているというのだ。
その歌は年配であればほとんど知っている、当時の卒業ソングのアレンジとも言われ、聞いただけでは大丈夫なのだけれど、その歌を歌うと卒業式までに死ぬという噂がある。
校長が亡くなったのと噂の関係性は解らないが、もしかするとそうなのかもしれない。
※画像はイメージです。
思った事を何でも!ネガティブOK!