今では、ベランダやリビングの窓際に吊るしてあると「へぇ、お洒落」となるハンモックですが、昔は船上生活の必需品でした。
マントレット
旧日本海軍の軍艦の写真を見ると、艦橋に長細い筒状のものが並べて括りつけられているのをよく見ます。
あれはマントレットという砲弾などの破片に対する遮蔽物で、ハンモックを利用していました。
ハンモックの起源
ハンモック”Hammock”の元は、
アマカ”Hamaca”という中南米先住民族の寝具で、これをコロンブスが持ち帰り、船舶用寝具として普及しました。
船の傾斜に対応
船は水面を進みます。水面は波があるので当然船は揺れます。
縄で吊り下げられたハンモックは、その揺れを緩和してくれます。
また帆船は完全な追い風以外では、船体が常に傾斜して帆走します。
ハンモックは船体が傾斜していても水平を保ちます。
もちろん陸上のような完全な静止水平状態は無理ですが、船体の複雑な動揺が直接伝わらないので、ハンモックは寝心地が良いのです。
特にローリングに対応するため、ハンモックの釣り方は船首の方に頭か足先が向くようにして、頭が上下する揺れが極力少なくなるよう工夫しました。
狭い船内
帆船時代の船舶は外洋大型船でも船内の広さは不十分で、人員の生活空間を犠牲にして積み荷空間を確保していました。
ハンモックが登場するまでは、床やベンチ、机などが食事睡眠兼用の場でしたが、ハンモックを頭上に吊るすことで生活空間の狭さを緩和できました。
また強い風雨で侵入する雨水海水で寝る所が濡れることもなくなりました。
軍艦では大砲、弾薬を多量に積むため、さらに人員用空間が限られるので、就寝時以外はコンパクトに収納できるハンモックが活躍しました。
ハンモックからベッドへ
船舶が木製から鉄鋼製へと進化し、特に軍艦では、舷側に多数の大砲を並べる構造から、甲板上に艦砲を設置する構造となって大型化すると、艦内空間に余裕ができました。
これにより兵員室とベッドの設置が可能となり、ハンモックは次第に姿を消していきます。
しかし欧米の軍艦に比べ、旧日本海軍の艦艇では遅くまでハンモックは残りました。
それは軍艦としての機能を極限まで追求した結果、居住性が犠牲になり、居住区が食堂兼寝室でテーブル上にハンモックを吊るしたからです。
戦艦大和ではその巨体により空間に余裕ができ、乗員用ベッドが設置されて大和ホテルと呼ばれました。
ハンモックが船で使われていたなんて、今の若い人はご存知なのでしょうか?
参照:桜と錨の海軍砲術学校 海軍須知 第8話 艦艇とハンモック
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