「いわくつき」の物件を多く扱う、曰く付きのビルの不動産屋。
社長や先輩が「見えたり感じたりする人」・・・いつしか私もそちら側に・・・。
忘れもしない、忘れられない、不思議な体験の続き、最後の話です。
第3の現場
そもそもの始まりは新卒で不動産屋に勤め初めた頃に担当した、ある商業ビルに問題があった事だと思います。
エレベーターの横には、いつも「盛り塩」がきちんと置かれていましたが、小娘だった私はそのことになんの疑問も感じませんでした。
だって、そのビルのテナントは高級割烹、寿司店が軒を連ね、どの店の入り口にも盛り塩があったからです。
そんな私でも気がついていたのは、すべての階のエレベーターの横に「盛り塩」が置かれていたこと。
先輩は、飲食店はゲン担ぎで置く事が多いけれど、すべての階、それも出入り口のエレベーターの横に置いているとすると・・・、「盛り塩」には魔除けの効果もあるので、なんかあるんでしょう・・・と。
ここ元なんだった?
このビルには曰くがあるらしい。
深夜になり店を閉める頃、廊下に着物の女性が何人か列をなして歩く姿や、すすり泣きの声を聞く事がある。
家賃の集金にいくと、テナントのオーナーさんから、度々こんな話を聞きます。
店の前の「盛り塩」は商売繁盛よりも、余計な物を店に入れない意味が強いらしいのです。
私はふと「なんで体験した不思議な事が同じなんだと?」思い、そこで事務所で先輩に「ここって何だったのでしょうね」と軽く聞いてみると、
「大昔、遊郭があったけど火事で皆、焼け死んだらしく、そういうのよく出るんだって、話してなかったっけ?」
と軽く返されました。
なるほどヤバイ土地だったのか、私の疑問はほぼ解決したのです。
遭遇した一番怖かったこと
ある日、用事があり朝イチでビルを訪問すると、いつもきちんと整えられた盛り塩の皿はひっくり返され、塩はエレベーター前に広く薄く散らばり、ありえないくらい荒らされていました。
それを見た途端、理由は解りませんが冷や水を浴びたようにゾッとし、頭と体が動くまでどのくらいの時間がかかったか分からないぐらい「固まって」しまった。
仮に泥酔した客のイタズラかと思うのですが、なにか原因が解らない「恐怖」が私に襲いかかってきたのです。
正気に戻ってすぐ、守衛室に報告に行きました。
惨状を見た警備員さんはすぐに片付けますと言って守衛室に戻って行ったのですが、険しい表情から、ただ事では事を察して、背中の辺りがゾワっとしたのを今でも思い出します。
だからといって担当から外れる事はありません。
嫌だなと警戒してはいたのですが、それ以降、同じような場面には出くわしたことはありませんでした。
それにしても、もし遊女の霊の仕業だとして、何故そこまで荒ぶってしまったのか、少し知りたいような気がする。
※画像はイメージです。
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