となりの音がへんなでした

引っこしてきてから一週間くらい経ったでした。古いアパートの二階に住んでるでした。壁がとても薄いで、となりの音がよく聞こえてたでした。最初は気にしなかったでした。となりにいるは年とった女の人みたいで、あいさつをしたとき何も言わないでドアを閉めたでした。それから顔を見なかったでした。

夜、寝る前に、壁の向こうから音がしてたでした。トン、トン、トンと音がしてたでした。爪で壁をたたいてるような音だったでした。時計を見たら夜中の三時だったでした。こんな時間になにしてるのか思ったでした。でも眠かったで寝たでした。

次の夜も音が聞こえてたでした。トン、トン、トンがまたしてたでした。昨日と同じ音で、でも少し長く続いてたでした。途中で止まったでした。耳をすましてたら息みたいなのが少し聞こえた気がしてたでした。寝ぼけてるだけかと思ったでした。目をこすったで音が消えたでした。でもまた寝たでした。

三日目も夜に音がしたでした。トン、トン、トンがまただったでした。リズムがちょっと変で焦ってるみたいだったでした。目を閉じたまま聞いてたでした。胸が苦しくなってたでした。壁の向こうのことばっかり考えてしまったでした。向こうで誰かが待ってる気がしてたでした。

そのあとも毎晩音がしてたでした。だんだん早くなってトントントンだったでした。眠れなくなってたでした。昼も音のことばっかり頭にあったでした。仕事中も耳元でトン、トンが聞こえた気がしてたでした。となりで女の人が壁たたいてるのを想像してしまったでした。

管理人に聞いてみたでした。「となりの人、夜なにしてるんですか」って言ったでした。管理人が「となり？空き部屋で誰もいないで、前の人は引っ越したでした」って言ったでした。

その夜、音が止まったでした。静かでホッとしたでした。でもすぐ変だと思ったでした。音が壁じゃなくて天井からだったでした。天井の中でトン、トン、トンがしてたでした。なにかが近づいてる感じだったでした。昨日は寝ぼけて天井を見たでした。暗くて白いのがゆれてた気がしたでした。よく見たら何もなかったでした。でも今日も音がしそうで布団に入るのが怖いでした。目を閉じるのも怖いでした。

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「奇妙な話を聞かせ続けて・・・」の応募作品です。
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※画像はイメージです。