画期的な銃火器だが失敗作 H&K G11

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様々な工業製品はその時代のニーズに適応するべく、様々な分野で企画・開発が行われ、製造を担う企業としてはもちろん、その製品が多くの売上を上げるであろう事を前提にそれら一連の行動を行う。
殊に現在の所謂アメリカを中心とする西側諸国では、銃火器類の製造企業も資本主義に基づく民間企業である為、基本的にはこうした経済原則に則り、新製品の開発を行っている筈だが、失敗作は必ず発生する。

その理由は開発された兵器自体の性能は秀でているものの、製造に要するコストがあまりに高額で費用対効果に見合わないと言う物や、実際に製造してみたら想定した程の利便性が得られなかったなど様々である。
そうした中で今回ここで取り上げたいのは、近年の銃火器の分野で西側諸国を代表する数々の製品を手掛けているドイツのH&K社が製造した、一種のアサルト・ライフルであるG11についてである。

G11は成功していればそれこそ銃火器の歴の中で、先込め式の火縄銃が後装式へ、その後装式が金属薬莢を使用する形へ、次は連発が可能なボルト・アクションへ、その次には半自動、そしてアサルト・ライフルへと言うような進化の最終形に位置づけらえた可能性もあったと感じる。
しかし現実はそうはうまく運ばず、G11は今ではコンセプトは評価はできるものの実用性が低く、失敗した銃火器の謂わば代名詞的な存在と言って過言ではないだろう。

目次

H&K G11が開発された理由

時は未だ旧ソ連を中心とする共産主義陣営とアメリカを中心とする資本主義陣営が激しい対立、所謂冷戦構造の真っただ中にあった1970年代、ドイツは前者の東ドイツと後者の西ドイツに分割されたままでその対立の最前線国家だった。
当時の西ドイツはそうした環境下でドイツ連邦軍を国防軍として保有しており、その正式小銃は1964年に採用された7.62×51mmNATO弾を使用するバトル・ライフルのH&K社のG3が用いられていた。

そうした状況下、ドイツ連邦軍はこのG3に替わる主力小銃の開発を模索、H&K社はこの要請を受けて、従来の銃火器とは一線を画す、使用弾薬に薬莢を廃したケースレス弾を用いるG11を1970年代に開発した。
アメリカ軍では既に1960年には5.56×45mmの小口径高速弾を使用するM-16を主力小銃としていたが、G11ではダイナマイト・ノーベル社が開発を担当した4.73x33mmDM11と呼称されるケースレス弾を使用するものとなった。

ここでG11の選択としては5.56×45mmの小口径高速弾を用いた小銃ではなく、理論上はこれを一気に上回る可能性を秘めたものとして4.73x33mmDM11弾を採用したと目され、実用性が伴えばその指向も評価されたのかかもしれない。

H&K G11および使用弾薬・4.73x33mmDM11弾の特性

4.73x33mmDM11弾はケースレス弾である為、最大の特徴として射手の回りに発射後の空薬莢が散乱しない事、空薬莢を排出させる機構が不要な為、3点バースト射撃時の発射レートは実に毎分2,000発と言う数値を達成していた。
4.73x33mmDM11弾は5.56×45mmよりも直径そのものが小型である為、後者の標準的な装弾数が30発のところを45発から50発程まで増加させており、マガジンは銃身の上部に横向きに取り付ける特異な形状だが、火力は申し分なかった。

しかし従来の弾薬が発砲後にその空薬莢の排出を行う事で薬室内の温度を低下させる働きに比して、4.73x33mmDM11弾はそれがない故に、連射時には薬室内の過熱が原因で自然発火による暴発の危険性が生じた。
これは殊にいざ戦闘となれば相当数の連射が想定される軍用の小銃としては、使い物にならないレベルの致命的な欠点であり、また4.73x33mmDM11弾は湿度の影響で不具合が生じる可能性も高く、実用性に欠けたと言わざるを得ない。

こうした理由に加えて、1991年に旧ソ連が自然崩壊を起こした事で長年続いた冷戦構造にはピリオドが打たれ、上記のような4.73x33mmDM11弾の使用に起因する欠点を改良する予算を捻出する必要性は低下した。
そのため東西統一後のドイツでは、G3の代替としてオーソドックスな5.56×45mmNATO弾を使用するH&K社のG36を主力小銃に選定、同社としては他社にそのシェアを奪われずに済んだ点は僥倖だったとも言えそうだ。

H&K G11の仕様

H&K G11は全長750mm、銃身長540mm、重量4.3kg、装弾数はボックス・マガジンで45発及び50発、使用弾薬はケースレス弾である専用の4.73x33mmDM11弾、銃口初速は930m/秒、発射速度は毎分あたりフル・オート時で460発、3点バースト時で2,000発となっている。
特筆すべきは発射速度が毎分あたりフル・オート時で460発、3点バースト時で2,000発となっている点で、後者にここまで高い発射速度を持たせているのは、発射時の反動を射手が受けるより前に集弾する効果を狙ったものとされている。
このあたりは如何にもH&H社と言うべき工夫だと感じられるが、前述したようにそもそもの使用弾薬である。

4.73x33mmDM11弾が、非常に扱いにデリケートな管理が求められる事から、それを上回る実用性には至らなかったと言わざるを得ない。
H&K G11はマガジンを銃身の上部に横向きに取り付ける特異な形状をしているが、これは個人的にはPDWであるFNハースタル社のP90にも似た構造に思える。但しP90は1990年頃に完成しているのでG11の方が先行していたと思われる。またH&K G11は発砲時にはこのマガジンが前後に動く独特の機構であり、且つ構造的には薬室部分がグリップよりも後方に位置しており、これはブルパップ型の銃火器とも似ており、同様にこの造りから銃全体の全長をコンパクトに収めている。
但しブルパップ型の銃火器と同様にストック内部に動作機構が組み込まれている為、ストックの形状を伸縮させたりする事は出来ず、オリジナルから大きく全長を短縮させる事は不可能といえるだろう。

繰り返しになるがそもそも4.73x33mmDM11弾を安定的に運用する事自体が困難であった為、G11は普及しなかった訳だが、H&K社としては同弾を使用する銃火器も軽機関銃タイプのLMG11、PDW型などの展開を構想していた。
何れもG11同様に実用化されるには至らなかったが、4.73x33mmDM11弾の弾頭部分は現在のH&K社のPDWとしてその分野を牽引しているMP7の4.6x30mm弾に活かされたと言われており、全てが無駄にはならなかったとは言えるかもしれない。

H&K G11のような失敗兵器に思う事

これまで見てきたように残念ながらH&K G11は、その薬莢を無くすことで銃火器としての利便性を高めるという高い志を掲げたコンセプトにも関わらず、4.73x33mmDM11弾の扱いの難しさもあって失敗作となった。
H&K G11はそれまでの東西の冷戦構造の終焉と言う、大きな軍事費の削減の時代を迎えた時代的な背景も失敗の要員のひとつではないかと感じるが、実際にある程度の量を装備した後で欠陥が発覚する事にならなかった事は幸いだったとも思える。

2024年5月現在も続くロシア・ウクライナ戦争では、このところ火力・物量に勝るロシア側の優位が否めないが、アメリカがウクライナに提供した兵器類では、自爆用無人航空機のスイッチ・ブレードなどはほとんど役立たなかったと伝えられている。
またアメリカ軍自体は配備を行ってはいなかったGLSDBも、実際のウクライナの戦場ではロシア軍の電子戦の前に効果を発揮できなかった事も明らかとなっており、つくづく兵器と言うものの難しさを再認識させられる。

但し個人的には今後、4.73x33mmDM11弾のようなケースレス弾の開発が、材質や技術的な側面がクリアされ、コスト的にも見合うとなれば、何れまた違う形で実用化させる時代が訪れる可能性も否定できないと感じている。

featured image:U.S. Marine Corps School of Advanced Warfighting, Public domain, via Wikimedia Commons

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