ラリージャパンで起きたクラッシュ事故をめぐり、一部で「幽霊のせいではないか」という声まで飛び出した。
舞台となったのは、心霊スポットとして名高い旧伊勢神トンネル。
暗く、狭く、そして曰く付き。条件だけ見れば、怪談が生まれる下地は完璧だ。
だが本当に、ラリーカーがクラッシュした原因は「見えない何か」だったのか?
それとも、ただの人間のミスと物理的限界なのか?
公道を駆け抜けるラリーという競技
ラリーとは、一般道や林道などの公道を舞台に、区間ごとの走行タイムを競うモータースポーツである。
サーキットレースと違い、変化に富んだ地形と狭いコース幅、路面状況も一定ではない。
ドライバーは速度だけでなく、瞬時の判断力とコース記憶力を要求される。
生活道路として使われている山間部や古い道路を封鎖し、ラリーカーが全開で駆け抜ける。
そのため、コースには、もともと危険度の高い区間も含まれることになる。
旧伊勢神トンネルという曰く付きの場所
旧伊勢神トンネル、正式名称は伊世賀美隧道。明治期に建設された非常に古いトンネルで、現在の基準では考えられないほど道幅が狭く、車両は一台ずつしか通行できない。
このトンネルは、地元では長年「おばけトンネル」と呼ばれ、心霊スポットとして知られてきた。
夜間は照明がなく、内部は完全な闇に近い状態になる。実際に灯りを消せば、視界はほぼゼロになる。
YouTubeで「旧伊勢神トンネル」と検索すると、動画がいくつも見つかる。
そこでは伊勢湾台風の被害者の霊が出る、女性のうめき声が聞こえる、人柱が埋められているといった話が語られているが、いずれも史料や公的記録による裏付けは確認されていない。
特に注意すべきなのは、伊世賀美隧道の竣工時期と伊勢湾台風の発生時期は大きく離れており、両者を直接結びつける資料が存在しない点だ。
動画内で聞こえるとされる「謎の音声」も、環境音や編集の影響を排除できず、証拠とは言えない。
ラリージャパンで実際に起きたアクシデント
2022年のラリージャパンでは、旧伊勢神トンネルを含む区間で実際にクラッシュ事故が発生している。
トンネル出口付近で車両がコントロールを失い、クラッシュする様子は映像としても残っている。
さらに周辺区間でも複数のアクシデントが起きたことで、一部では「心霊スポットだから事故が起きたのではないか」という声が上がった。
幽霊がドライバーに影響を与えた、霊的な力が作用したという解釈も見られた。
だが、冷静に考えれば話はそこで終わる。
ラリーという競技は、もともと事故が起きやすい。旧伊勢神トンネル周辺は道幅が極端に狭く、照度が低く、トンネル出口では急激な明暗差が発生する。加えて路面状態は一定ではなく、ドライバーはペースノートを頼りに全開で突っ込んでくる。
幽霊を持ち出さなくても、事故が起きる理由は物理的・人為的要因だけで十分に説明できる。
それでも人は「幽霊のせい」にしたがる
それでもなお、人は事故と心霊を結びつけたがる。
怖い場所で、昔から噂があり、実際に事故が起きた。この条件がそろうと、人は因果関係をこじつけようとする。
「危険な場所で事故が起きた」という現実的な説明よりも、「霊がいるから事故が起きた」という物語のほうが印象に残りやすく、理解した気にもなれる。
旧伊勢神トンネルが不気味な場所であることは否定しない。
夜間は視界が極端に悪く、方向感覚も狂いやすい。
しかし、ラリージャパンで起きたアクシデントを幽霊の影響と断定できる根拠は存在しない。
そこにあるのは、狭さ、暗さ、速度、そして人間のミスという、現実的で検証可能な要因だけだ。
夜に肝試し気分で訪れるべき場所ではないのは確かだが、怖い理由は霊ではない。
単純に、危ないからだろう。
※画像はイメージです。


思った事を何でも!ネガティブOK!