神社で出会った男

私の知り合いに、都内の大学に通う学生がいました。
彼は埼玉の実家から電車で都内まで通っており、「実家を出て一人暮らしをしたいけれども、なかなか金銭面で良い賃貸物件がない」と嘆いていました。彼は大学生のわりに、趣味が渋く、パワースポットめぐりが好きでした。

ある日、都内の超有名な神社で参拝をしていた時、同世代の男性に声をかけられ、意気投合してカフェで話をしたそうです。その際に、例の金銭面で物件探しに困っているのだという話をしたと言います。彼はその男性と連絡先を交換し、また会うつもりでいたと彼は話します。

後日、彼のもとにこんなメールが届きました。「○○くんへ　これは予約送信して送っているメールです」という書き出しとともに、都内のアパートの物件の情報が記載されていたと言います。
メールを読み進めていくと、次第に彼は背筋が凍りついていきました。というのも、メールの続きはこうです。「○○くんさあ、予算が足りなくて一人暮らし出来ないって言ってたでしょう？
だから、今からこの物件に忍び込んで、俺が自殺して、事故物件にしてあげるよ。
そしたら、○○くん、安く借りられるでしょ？このメールは予約送信だから、○○くんがこのメールを読んでいる時、俺はもうこの世にいないってことになるね」。

そのメールを最後に、その男性からは何の連絡もありません。普通に考えれば、からかわれただけだと感じるはずです。しかし、なぜだかそのメールに書かれたことは真実であるように思えたと彼は言っていました。
空き物件での自殺なんていう情報があれば、ニュースになっているはずです。彼は本当にその男性が自殺したことが確定してしまうのが嫌で、しばらくスマホやテレビなどあらゆるメディアから距離を取ったと私は聞いています。

結局彼は、一人暮らしするのをやめ、大学卒業まで実家から通ったそうです。
彼は単に、からかわれただけなのでしょうか。
それとも・・・

タカハシの端

「奇妙な話を聞かせ続けて・・・」の応募作品です。
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