これ、今思い出しても情けないっていうか、でもほんとにあった話なんですよ。
小学校ん時の話。たしか、1年生か2年生の夏だったと思うんですよ。
私は土浦に住んでいて、家の裏には小さい水が流れ、そばに厠があったんです。
厠は家の中にはまだ水洗なんてなかった時代で、ボットン便所です。
田舎の夏って、夜になると真っ暗でね、電気の明かりもそんなになくて。あれ、今考えると、よく平気だったとおもうけれど、あの頃はみんなそうだったし普通でした。
その晩も暑くて、蚊帳の中で寝てたんです。夜中にムズムズ、あ、オシッコ行かなきゃって思ったけど、母ちゃん起こすと怒られるし、うるさく言われるし。だから一人で行ったほうがいいなと思って、起きて、裸足で縁側出てね、寝間着のまんまでそーっと歩いて行ったんです。
で、ちょうど川屋の手前を通るときに、なんか気配がしたんですよ。目ぇ凝らして見たら、いたんですよ。変なもんが。最初はうちの猫かと思った、でも違ったんです。立ってるように見える。
なんとなく人の形してるけど、背中に甲羅みたいのあって、頭のてっぺんが光ってて。んで、ギラッとした目で、ジーッとこっち見ててカッパでした。
私の住んでいた田舎には河童がの伝説があったので、カッパだとわかりました。
そしたらもう、体がカチンコチンで動けなくなっちゃって、怖すぎて、厠にはいけない。そのまま引き返して、布団入って、寝たふりしました。
そうしたら、じわ~っとオシッコ出ちゃいました。情けないわ、怖いわ、寒いわでも、気がついたら寝ていて、朝になりました。
「アンタッ!!またオネショしたのかい!!」って、母ちゃんの声でおこされたけど、ちゃんとした理由があるんで、「ち、ちがうよ! オレ、ちゃんと川屋行こうとしたの!でも途中でカッパ出てきて、すっごい目で見てきてさ、そしたら、こわくて、出ちゃったんだよ!」っていうと。
「はァ!?カッパぁ!?そんなもんいるかッ!!このバカたれが!!」って、もう母ちゃんの逆鱗に触れて、「くだらない嘘ついてんじゃないよ!!」って、すごい剣幕で怒られて、尻をたたかれた。
「カッパより母ちゃんの方がよっぽど怖ぇよ」って、そのとき本気で思いました。
その日の昼ごろ、畑に植えてあったキュウリが荒らされていたのが母ちゃんが気づきました。
私はやっぱりカッパだったと思った。
※画像はイメージです。
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