人気作品「ちいかわ」、可愛い主人公ちいかわとその友人たちであるハチワレとうさぎ達の日常が魅力的な作品です。
一見ほのぼのとした世界観に、とんでもないシビアな社会性や不穏さがただよっており、それがスパイスとなって読者を楽しませてくれます。
作中ではまったく説明がないため、読者の間ではエピソードやシリーズを通して考察がされていますが、そうした説明なしな対応が都市伝説を生み出すことも。
今回はキャラものな怖い話についてちょっとだけご紹介し、ついでに作り物の怖さの考察していきましょう。
クレヨンしんちゃんの「カスカベ都市伝説」シリーズ
説明不要な国民的アニメ「クレヨンしんちゃん」。
「クレヨンしんちゃん」にまつわる都市伝説は知っている人なら知っているでしょう。
たとえばしんちゃんはすでに死んでおり、視聴者が見ているしんちゃんは「しんちゃん」の死を受け入れられないみさとの幻影といった話を小耳程度には聞いている人もいるかもしれません。
しかしそうした話とは別に怖い話が用意されています。
それがクレヨンしんちゃんホラーシリーズ、通称ホラー回です。
ネネちゃんのなぐられウサギが動く「なぐられウサギ」シリーズや野原一家が幽霊や超常現象に巻き込まれるシリーズなどいくつか分類できますが、最近のホラー回で有名なのは「カスカベ都市伝説」シリーズだと思います。
別名「夏の都市伝説」とも言われているようですが、広く知られているエピソードをいくつかピックアップすると
おともだちができたゾ(2018年)
野原一家がひろしの会社の保養所に向かったお話。
そこはお世辞にも綺麗とは言い難く、何か不気味な雰囲気に包まれていた。それでもとりあえず、と保養所で過ごすみさえだったが、ひまわりの様子がどこかおかしい。どうやらひまわりにしか見えない友達がいるらしいが。
行き先のわからないバスだゾ(2018年)
夏休み中、家から外に出たしんのすけ。
するとそこには幼稚園のバスが待っていた。不思議に思ったものの、風間くんに手招きされたので乗り込むしんのすけ。
しかしバスに乗っている皆の様子はおかしくて、表情も死んだ顔。
唯一、いつも通りなのはボーちゃんだけ。
そのうちバスは幼稚園を通り過ぎて。
帰れない風間くんだゾ(2019年)
英語塾のテストで思うような結果を出せなかった風間くん。
しかしどういうわけか、風間くんはテストを受ける前に時間が戻ってしまうように。
ループし続ける世界で風間君はどうなっていくのか。
代表作としてなどがあり、ますがこの他にもたくさんのホラー回が制作されました。
明らかに創作物だと分かるお話とはいえ、迫力がありますね。
もっとも視聴し続けているファンによれば「年々、怖さは薄れている」とのこと。
確かにその作風上、色んな妖怪や都市伝説を扱える「鬼太郎」のスタッフ曰く「時代とともに恐怖演出は制限がかけられ、それが重くなっているので自由にできない」と愚痴をこぼしたという噂を耳にしたことがあります。
とはいえ子供からすれば夏に放送されるホラー回は十分恐ろしいかもしれませんね。
人間的な悪意が怖い!「ポケモンSV」のともっこの凶行
2022年11月に発売されたポケモン最新作「ポケモンSV」。
発売されてから1年開花しているものの、この度2023年9月にDLC「碧の仮面」によって再び注目を集めています。
舞台は「キタカミの里」という岩手県をモデルにした田舎。
そこで林間学校のメンバーのひとりとして招かれた主人公はキタカミの里に伝わる鬼とそれを退治したポケモンたちの伝承を知ります。
ここから先はネタバレを考慮してぼやかしますが、実はこの伝承は逆さまで、鬼が被害者で、鬼を退治したポケモンたちが加害者だったのです。
実は退治したポケモン「ともっこ」の見た目やカラーがどうみても悪役だったため「もしかして…」と推測されていたものの、その所業に
- 食べ物なら分かる 生活ならまだわかる
けどわざわざ戦える者が出払ったタイミングで強盗殺人しかけるのが野生より人間の悪意の様に見えて気味が悪すぎるんだよな、ヴィランとしては最高。 - 怖さのジャンルが違う
バンギラスとかギャラドスは例えるならゴジラ、コイツらは野生の猿が金目のものを集団で強盗しにくるようなものどっちが被害がデカいとかじゃなくてどっちも怖い。 - でもこいつらやっちゃったこと反省とかせずにしっかりオーガポンに復讐しにいってるんで……
といったようにプレイヤーもドン引き。
ただ「碧の仮面」はDLCでは前編。いくつかの謎を残したまま、キタカミの里の騒動は幕を引くので後編が待ち望まれています。
そういえば「ともっこ」という呼び方ですが、これは当初は東北の「~っこ」とつける方言と「友っ子(友達)」をかけ合わせたものだと考えられていましたが、真相が明らかになった今ではもうひとつの意味が示唆されています。
それは秋田の方言の「もっこ」。
悪いこと・恐ろしい化け物という意味があるそうです。
ポケモンは実際にあった事件をモデルにしているのではないか?など様々な都市伝説が囁かれているゲームであり、何年経っても衰えないセンスが光る作品。
もしかしたら「ともっこ」と「もっこ」を引っかけていたのは十分あり得ます。
リアルよりも生々しい創作物の恐怖
何故、作り物だと分かっているのに私たちはゾクゾクしてしまうのでしょうか?
作り物に恐怖を感じる下地はあります。
怪談・都市伝説・おとぎ話。
ネット上の怖い話だって真偽を証明できない以上、鵜呑みにはできません。
おまけに今回ご紹介した怖い話はクレヨンしんちゃんとポケモンという国民的な作品から生み出されたものです。
本来なら、どちらも怖さとは無縁な作品。
なのに何とも言えない不気味さや気持ち悪さを感じてしまうのは、身近であること、理解不能(不穏)であることをモットーにつくられたからではないでしょうか。
当たり前ですが、「怖い話をつくる」となれば「皆に怖いと思えるような話を」となります。
さいわい現代には怖い話があふれており、参考には困りません。
しかしいくらアニメーションなど視覚に頼る表現ができるとはいえ、ストーリーが凸凹だったら恐怖を覚えてもらえません。だからこそ身近で、なおかつ理解不能な設定やシチュエーションが好まれるのではないでしょうか。
もし玄関から「ピンポーン」と鳴って駆けつけたものの、外には誰もおらず、ぽつんと車だけあったら?
もし友人の固定電話に電話をかけて出た女性のことを友人に尋ねたら「そんなひと知らない。その日は家に誰もいなかった」と返されたら?
こうした身近で、理解不能な設定やシチュエーションは実に話が盛りやすいでしょう。
それがホラーとは無縁な作品なら普段とのギャップも相まって、さらに引き立てられるのではないかと思います。
そして作り物の怖さは「計算されていること」が魅力ではないでしょうか。
私たちは物語に惹きつけられたら期待を寄せてしまいます。
怖い話はその最たるケースで、「これからどうなるんだろう」というワクワク感があるんですが、そのワクワク感を分かったうえでオチをつけられるのは作り物の怖さだけでしょう。
都市伝説でいえばきさらぎ駅がその代表格だと思います。
駅という誰にとっても身近なもので、きさらぎ駅という理解不能な場所。
そして実況だからこそ「バッテリーがもうすぐ終わるからここまで」という中途半端だけど想像を広げさせるオチは最高です。
期待を叶える、それが作り物の恐怖にゾクゾクしてしまう秘密だと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
リアルな怖い話と比べれば創作物な怖さは「作り物」と最初から分かっているため、あまり怖くはないかもしれません。
しかしだからこそリアルにはない怖さや生々しさが潜んでいるように思えます。
怖くないはずなのに怖い。そうしたホラーもホラーの魅力だと思います。
※画像はイメージです。
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