ある静かな夜、真夜中に洗濯機を回していた。明日どうしても着たい服があったからだ。
古い木造アパートの風呂場に置おかれた、古い洗濯機の音が響き渡って少しうるさい。
他の部屋の住民から文句を言われそうだと思いながら、眠る準備をしていた。
ゴトゴト
洗濯が終わりかけた頃、「ゴトゴト」と洗濯機の音が妙に大きくなり、ついには「ドン!」という音とともに止まった。
どうしたのだろうかと思って確認しに行くと、洗濯機の蓋が少し浮いている。中を覗くと洗濯物の間に見覚えのない黒い布のようなものが混ざっている。
恐る恐るそれを引っ張り出してみると、それは布ではなく髪の毛。しかも大量の濡れて絡まった長い黒髪。
あり得ない・・・一人暮らしで髪の毛の短い男性の私の髪の毛であるはずもない・・・。
ゴポゴポ
ふと、洗濯機から「ゴポ・・・ゴポ・・・」と音が聞こえてくるので、中を覗きこむと洗濯物の奥に何かが動いたように見えた。
次の瞬間、白く青ざめた手が洗濯機から飛び出してきたのだ!
叫び声を上げて後ろに飛び退き逃げようとすると、伸びてきた手が掴む。
必死に振り払い、なんとか外に飛び出した。
数十メートル走った後、真冬の冷たい夜風が肌を刺して立ち止まり、振り返るとアパートの前に立ちすくんで、じっとこちらを見ている何かがいた。
それは黒い髪が風に揺れ、顔が不気味に微笑んでいる女性。
気持ちの悪さと得体の知れない恐怖心が込み上げてきた。
疲れているんじゃない
その日は近所の友人に訳を話して家に泊めてもらったのだが、そんな事は無いと笑われた。
次の日、友人にも付き合ってもらって家に帰ったのだが、散らばった洗濯物だけで手はともかく、髪の毛も見当たらない。
「疲れているんじゃない」と更に笑われた。
実はこの日、SNSで知り合った人と初めて合う事になって、慌てて夜中に洗濯したのだ。
この話はちょっとしたネタになるからな?と思いながら、洗濯できなかったので適当な服で待ち合わせ場所に向かい、そこに居たのは昨晩の女性にそっくりだった。
※画像はイメージです。
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