映画関連の仕事を長くしていて、今はもう無い地元の映画館に勤めていました。
私がまだ駆け出しで、研修をしていた時に体験した不思議な話です。
テストラン
映画館では、お客様がいない早朝か深夜に、新作映画のテストランと呼ばれる試写を行っています。
映画の上映はフィルムが当たり前だった時代、配給されたフィルムに映画館ごとのローカルCMや次に上映する予定の映画の予告編を継ぎ足して編集した、完成品のフィルムのプリント状態や音響をチェックをします。
もしフィルムに問題があれば、配給元から交換してもらうのに手間がかかる事もあって、最後まで気を抜けない重要な作業です。
その日はすべての上映が終わった後、レイトショーもあって開始が深夜に近い時間。
7つあるスクリーンのなか、最近音響を設備を入れ替えたので調整をする事もあって3番スクリーンで行いました。
何か見える?
先輩と一緒に映写室の窓から覗きながら、映画の本編に差し掛かったとき、先輩が「あれっ?」と言います。
「どうしましたか?プリントに傷でも入ってきましたか?」と訪ねると・・・。
「さっきスッと人影が見えたんだよね。まだ他のスタッフ残ってたっけ?」
夜間で最低限の人数しか残ってなく、もしかしたらフロアのスタッフが最後の清掃をしてるのかもしれないと思い、客席へ降りて見に行きましたが、そこには誰もいません。
時々上映中に座席で眠ってしまうお客もいるので、懐中電灯で念入りに客席を確認し、だれもいなかったので再び映写室に戻ります。
「やっぱりだれもいません、気のせいだとおもいますよ」
そう言った私を先輩はやや青ざめた顔で見ていますが、私はわけがわかりません。
3番スクリーン
「なんですか?下(客席)は誰もいなかったですよ?」と話すと、先輩がモジモジししながら「ここ、3番スクリーンだったわ」
「それは知っています。先輩が何を言いたいのか分かりません」
すこしイラッとしながらそう言うと。
「ごめんね、XXXさん、伝えてなかった事がある・・・私の先輩にも聞いてたんだけど、3番スクリーンはね、出るらしいんだよ、深夜にテストランしていると」
「直接見たのは初めてだけど、多分それだったんだと思う」
私は固まりました。
過去にそんな体験をした事はなかったので、にわかに信じられませんでした。
「本当にごめんね、さっきXXXさんがスクリーンを確認してた時、また人影が見えて、ずっとスクリーンの右端の方に立ってたんだよ」
もう私は怖くて怖くて堪りません。
しかし、もしかしたら先輩がからかっているんだろうと思って、「そんな事ないですよね」と、映写室の窓からスクリーンの方を覗くと右端の方に人影が見えたのでした。
後日談
映画館のスタッフの間では、3番スクリーンに映画好きの幽霊が出ると有名な話だったのです。
たまにスッと見える時があるだけで、特に害を与えるわけではないので構わない
気にしているのですが、それ以来、3番スクリーンで幽霊を目撃する事はありませんでした。
幽霊にも映画好きがいるのですね。
※画像はイメージです。
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