ミシガン・ドッグマン〜ドラマ編

当サイトは「Googleアドセンス」や「アフィリエイトプログラム」に参加しており広告表示を含んでいます。

アメリカのミシガン州にひろがる山林には、ミシガン・ドッグマンと呼ばれる怪物が出現するという。
身長は約2メートル、犬のような顔と下半身、人間の胴体を持ち、夜になると二足歩行で森のなかを徘徊し、山に入ってきた人間や、人里離れた土地にある家へ襲いかかる。

これはミシガン州に伝わる都市伝説を、ドラマ仕立てに仕上げたストーリーです。

目次

1987年4月

ミシガン・ドッグマンがアメリカ全土で知られるようになったのは、地方のラジオ局がきっかけだった。

「おはようございます!FMラジオ局WTCMが、午前8時をお伝えします」

1987年4月1日。アメリカのミシガン州グランドトラバース群の地方都市、トラバース市。
この街にあるFMラジオ局WTCMは、いつものようにカントリー音楽やローカルニュースを放送していた。
しかし忘れてはならない、この日はエイプリルフールで、毎年趣向を凝らしたジョークでリスナーたちに笑いを届けていたのだ。

かけていた曲が終わった直後。それまで軽やかに喋りつづけていたディスクジョッキーが改まった口調で、リスナーにむかって語りかけた。

「ところで、今日は特別な日だって知ってるかい?今年、ミシガンに伝わるあの怪物、ミシガン・ドッグマンが姿を現す年なんだよ」

そう話すと「ザ・レジェンド」という曲をかけたのだ。
静かな間のあと、曲が流れ始め、それまでオンエアされていたブルーグラスやヒットソングとは毛色のちがう、スローテンポでどこか物憂げなメロディに乗せて語りが続く。

「最初に姿を見せたのは1887年、ウェックスフォードの森で木こりたちが奇妙な生き物を目撃したと伝えられている二本足で立つ巨体、青く光る目。
1907年には、未亡人が夜、家の周囲で吠える巨大な犬のような存在を目撃したという。
1917年には保安官が馬小屋で傷ついた馬を発見した。まるで、森の中の何かに襲われたかのように」

ディスクジョッキーは一呼吸おくと、警告を発する。

「ミシガン・ドックマンは10年ごとに現れる!」
「だから今年は、夜に車で走っているときや、森に入るときは注意したほうがいい。ミシガン・ドッグマンに襲われる危険があるからね。」
「これを聴いたみんな、ミシガン・ドッグマンに遭わないよう気をつけてくれよ」

ミシガン・ドッグマンの伝説を歌った曲が、グランドトラバース群全域のラジオで流れたが、リスナーたちのからの反応は全くなかった・・・今年の企画は滑ったと、ラジオ局内に冷たい空気がながれた。

私はミシガン・ドッグマンを見た

その日の午後、一本の電話が掛かってきた。

「流れていた「ザ・レジェンド」という曲について詳しく教えてくれませんか・・・私はずっと昔、歌に出てきた怪物に襲われたことがあるんです」
男性が語るには、彼は1937年にミシガン・ドッグマンに遭遇したという。

50年も昔のこと、男性が川辺で釣りを楽しんでいたとき、森から野犬の一団が現れて彼を取り囲んだ。
あるとき、群れの一匹がすくっと二本足で立ちあがり、ゾッとするような青い眼で彼を睨みつけた。そいつは巨体の持ち主で、とても普通の野犬には見えなかった。

「なんとかその場から逃げ出したのですが、とても怖ろしく、あまりに現実離れしていた出来事だったので、これまで誰にも打ち明けたことがなかった。ラジオを聴いて、やっと打ち明ける決心がつきました。」

そう男性は述べると、スタッフに礼を言って電話を切った。
話を聞いたクックは首を傾げた。

「今日は4月1日だぞ。ミシガン・ドッグマンと『ザ・レジェンド』は、この日のために企画したジョークなんだ。そんなこと、スタッフみんなが知ってることじゃないか」

そのとき別のスタッフがやってきて、クックに耳打ちした。
「あの、クックさん…?」
「なんだ?」
「さっき電話があって、またミシガン・ドッグマンを見たと言ってる人が話してきました」

その後、「ミシガン・ドックマンを見た」「ミシガン・ドックマンに襲われたことがある」と自称する電話が何件もかかってくることになる。

ミシガン・ドッグマンの噂は、数日のあいだにトラバースの住民たちに広まっていった。
ラジオを離れ、様々な場所で語られ、伝説に肉付けが施されていく。
実在しないミシガン・ドッグマンは、あたかも19世紀から実在していたかの如き存在感を増していき、ついには州内でミシガン・ドッグマンが人間を襲ったとする騒動まで起きる。

「オレは子どもの頃、森でミシガン・ドッグマンを見たんだ」
「あたしはハイスクールのころ、車に乗ってドライヴしてるときにミシガン・ドッグマンを見たわ。」

ミシガン・ドッグマン誕生する

そもそもミシガン・ドッグマンは、オカルト好きのスティーヴ・クックが創作した、エイプリルフールのジョークだった。1887年から1977年の目撃情報もクックの脳内にしか存在しないフィクションに過ぎない。
それがラジオ放送で語られた途端、ミシガン・ドッグマンは本当にミシガン州の伝説になってしまった。
それから現在に至るまで、生息域を広げながら目撃情報が絶えることがない。

ミシガン・ドッグマンを撮影したとされる動画や吠える声を録音した音声がネットにアップされ、足跡の写真なども出回って、より現実的な存在として感じられるようになり、「現実に今でもあること」としては語られる。

ときに、ミシガン・ドックマンに遭遇した戦慄をまことしやかに語る人物もまたいるだろう。
聴き手が耳にしたあと、林の奥の暗闇に活き活きとした、ミシガン・ドックマンの幻影を見ることもあるだろう。
意図せずして、ミシガン州に新たな都市伝説を生み出し、現実と虚構のあわいが崩れる「逢魔が時」に生命を得る。

生みの親、スティーヴ・クックは事態の推移を今では楽しんでいるようだ。
ミシガン・ドックマンが現れることになっている1997年、2007年、2017年に『ザ・レジェンド』をリメイクしつづけ、遂に25周年記念アルバムをリリースするまでに至った。

今年は2025年である。
2年後の2027年、ミシガン州の森にはふたたびミシガン・ドッグマンが現れることだろう。

※画像はイメージです。

面白かった?

平均評価: 0 / 5. 投票数: 0

投票がありませんよ、最初の評価をしてね!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

思った事を何でも!ネガティブOK!

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

目次