日本では年間およそ10万人が行方不明になっている。
その中の一件、「三重女子高生失踪事件」は25年以上経った今も未解決なのだ。
被害者は、当時17歳、高校生の北山結子(きたやま ゆうこ)さん。
三重県多気郡明和町で忽然と姿を消してしまった。
限りなく怪しい、むしろ他には考えられない容疑者がいるのだが・・・。
この事件を簡素に解説していく。
事件の概要
1997年6月13日、北山結子さんは、アルバイトを終えた午後8時頃、試験勉強のために集まっている友人たちへ向けて公衆電話から連絡を入れた。
「あと10分くらいで着くよ」
その声に怯えや異変の兆しは一切なかった。しかし、そのわずか10分という時間が、彼女にとって運命の分かれ道。
約束の時間を過ぎても一向に姿を現さない結子さんを案じ、友人たちは家族へ連絡を入れて、深夜まで及ぶ懸命の捜索が始まった。
自宅まであと数百メートルという至近距離でありながら、彼女の自転車も、彼女自身の影も、夜の闇に飲み込まれたかのように消え去ってしまったのだった。
翌日、警察に捜索願が提出され、事件は行方不明事案として捜査が開始された。
「ポケベル」の誘い
北山さんはポケベルを所持していたため、友人たちはメッセージを送って連絡を試みたが、応答はない。
しかし、その後、友人宅に無言電話が頻繁にかかるようになった。
受話器を取っても相手は何も話さず、ただ回線がつながっているだけの状態が続いている中、ついに相手が口を開き、男の声で「彼女を駅まで送った。5万円を貸した。その担保としてポケベルを預かっている」と語った。
警察の指示で友人は男と会う約束を取りつけ、バス停に行くと、そこには北山さんのポケベルが置かれていた。
友人の家に、「ポケベルを受け取ったか?」といった電話がかかってきて、これを逆探知に成功、この時公衆電話にいた男が逮捕されたのだ。
揃いすぎた証拠
捜査の結果、この男性は、40代の自称、露天商の手伝い。
過去に婦女暴行事件で実刑判決を受け、長期間服役していた前科がある。
男の自宅、車両を捜査すると、北山結子さんの所持品とされる漢和辞典が発見された。辞典内部には、彼女の筆跡とみられるメモが挟まれていて、さらに車内からは多数の毛髪やハンカチも押収される。
事件前、北山さんは「白いワゴン車に付け回されている」と周囲に話していたという証言があり、現場周辺でも同型・同色の車両が目撃されており、男の所有車も同様に白いワゴンタイプ。
状況証拠としては十分すぎるほどなのだが。
証拠は揃っても
事件は解決したかに思われたが、結局、男が起訴されなかった、最大の理由は、北山結子さんの遺体が発見されなかったからだ。
男は一貫して関与を否定し、「ポケベルは拾った」「面識はない」と主張し続け、辞典や車内の毛髪についても黙秘を続け、警察は立件に踏み切れない。
ここで見落としてはならないのが、1997年当時の科学捜査の水準。
DNA鑑定そのものは、すでに警察で導入されていたが、現在のように、微量の試料からでも高精度で一致を出せる精度はない。量が十分で状態の良いDNAがなければ、安定した結果を出すことは難しい。
たとえば毛髪、毛根が付着していなければ、個人を特定できる核DNAはほぼ採取できない。仮に車内から多数の毛髪が発見されたとしても、それだけで「被害者のもの」と断定するのは容易ではなかったのだ。
さらに現在のような全国規模のDNAデータベースも整備途上で、型が得られたとしても照合体制は限定的。
加えて、遺体が存在しない以上、法的に死亡を確定することもできない。
刑事訴訟において殺人を立証するためには、被害者の死亡の確定と、被疑者の行為を直接結びつける証拠が求められる。状況証拠がどれほど積み重なっても、それだけでは「合理的疑いを超える」水準には達しないということだ。
結果として、男は逮捕から約3週間後、証拠不十分で釈放された。
どうみても「黒に近い」と思うが、司法は曖昧な証拠では動きない。
1997年という時代背景、科学捜査の限界が重なった結果、この事件は立件に至らなかったといえるのだ。
止まったままの時計
事件から四半世紀以上が経過した現在も、北山結子さんの行方は分かっていない。
ご家族は駅前などでチラシ配布を続け、情報提供を呼びかけ、三重県警も公開捜査として情報を募り続けており、事件は決して終わっていない。
この事件には、容疑者としか思えない人物が存在する。
しかし、刑事裁判に必要とされる「合理的な疑いを超える証明」には至らず、遺体は発見されず、殺害行為を直接示す決定的な物証も確認されなかった。
「疑わしきは被告人の利益に」という原則は、冤罪を防ぐための近代司法の根幹にあり、その原則が適用された結果ともいえる。
噂に過ぎないが、一部では、被疑者の出自や社会的背景が捜査姿勢に影響したのではないかという意見もあるが、これを裏付ける公的資料は確認されていない。
ミステリアスで興味深いと思う反面、あくまで推測の域を出ないものである。
結論として「犯人がまったく分からない事件」というより、「特定に近づきながら、確定に至らなかった事件」と表現する方が適切かもしれない。
時間が解決し、北山結子さんが戻って来るの願っている。
※画像はイメージです。


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