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お化け屋敷と呼ばれた家~扉が開いていたので入ってみた子どもの或る記憶

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子どもにとって、夏休み最大の非日常であるお盆・・・そんなお盆が近付いてきました。
親戚が一堂に会する機会でもあり、近所の盆踊りや夏祭り、ご先祖様をまつる行事と、子ども心にどこかワクワクした記憶があります。
現在ほどではないけれど、あの頃も暑かった夏。
田舎の子どもたちは、元気に外を走り回っておりました。

目次

扉の開いた一軒家

ある年のお盆のある日。友達とかくれんぼをしていた私は、日頃から堅く扉が閉まっている廃屋のような一軒家、そこの扉が開いていたのが見えました。
地区の子どもたちからは「お化け屋敷だ」とか言われている家で、普段はあまり近付きません。でも、かくれんぼに最適だと考えた私は、深く考えることなく扉を押し開けて中へ入っていった。

真っ暗で埃っぽくて、何だかひんやりと涼しくて、どこか薄気味悪さも手伝って不気味な印象が拭えません。
「・・・誰だい?」さらに暗い奥の部屋から、小柄で顔に皴の多いおばあさんが出てきました。

おばあさんとの会話

「お前、どこの誰だい?」おばあさんは怪訝そうにそう尋ねてきます。
勝手に人の家に入っちゃいけなかった・・・、咄嗟に思った私はごめんなさいと謝り、生真面目に苗字と名前をそのまま言ってしまいました。

「ということは、池のほとりのあの家の子か?」
おばあさんは私の実家を言い当てました。
「はい」そう返事すると、険しかったおばあさんの表情は一変したのです。

「そかそか、よう来なさったね」そういうと、おばあさんは手に持ったみかんを一つくれました。
「食べなさい、甘いから」にこりと笑うおばあさんに勧められるがまま、みかんの皮をむいて食べました。皮を剥くと汁が服に飛ぶほどジューシーで、本当に甘くておいしかったのです。

「お前さん家の爺さんと婆さんには、何から何まで本当に世話になったし、よくしてもらった。その孫がこんなに大きくなったとはねぇ」目を細めて私を見つめるおばあさん。しかし、私には祖父も祖母の記憶はありません。

「うち、もうじいちゃんもばあちゃんも居ないよ?」
懐かしむおばあさんに、私はそう言い返しました。
「もう随分古い話だからな」
おばあさんはそう言うと、私の顔や背格好を慈しむように見つめます。

どこかうすら怖くなった私はもうこの家から出て帰ろうと思い、もう帰ると告げました。
「そうかい・・・」途端にさみしそうにつぶやくおばあさんに、みかんを貰ったお礼も言うことなく家から飛び出しました。
「気を付けて帰るんだぞ、転ばんようにな」そう聞こえましたが、振り返らずに走って逃げました。

父から聞いた真実

家に帰り、あの一軒家に入って小柄で顔が皺だらけのおばあさんに会ったことを父や母に伝えると、まず勝手に人の家に入ったことを叱られ、父も母は何度も首をかしげたのです。

「あの家の婆さん、もう何年になる?10年くらいか?」
「何が?」何のことか分からない私が訪ねると、父は遠くを見つめながら教えてくれました。

「小柄で皺だらけ・・・間違いなく、そこの婆さんだな。もう死んでるんだよ。10年くらい前に」
私は、すでに亡くなっているおばあさんに会っていたのか?・・・その時の衝撃は忘れられません。
お盆は亡くなったご先祖の霊がこの世に戻ってくる時期だと聞きました。もしかして、そのおばあさんは幽霊で、お盆だからこの世に戻ってきていたのか?
じゃ、もらったあのみかんは?
ジューシーで甘かった、あのみかんは?

混乱した私は怖くなり、布団に潜って震えながら寝ました。

不思議なみかんの皮

しばらくしてお盆が過ぎ、夏休みも終わりが近付いてきた頃。私は再びあの一軒家に向かい、そっと外から様子を伺いました。

あの時開いていた扉は、何年も開けた形跡がないほど固く閉じられていました。
窓の外から屋内をのぞくと、みかんの皮が落ちているのが見えました。あの時、私が剥いた形のままで完全に干からびていたのです。

飛び散った汁の感触、そしてあの甘み。私は確かに覚えています。
でも、あの出来事からまだ一週間ほどです。あんなカラカラに干からびるものだろうか?
もしおばあさんが幽霊だったとしたら、あのみかんは何だったんだろうか。

・・・あれから随分時間が経ち、あの一軒家は解体されて無くなりました。
ただ、今でもおばあさんとみかんとの謎が解けず、思い出す度に戸惑っています。

※画像はイメージです。

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