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決してあってはならぬモノ

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私の知人の、ある女性と周りの人々の「決してあってはならぬモノ」にまつわる実話である。
しかし、少しでもこの話に繋がるヒントを残さないようにしなくてはイケナイ。
何年前かはここでは言えない随分前、ネットも携帯もなかった時代、ある夏の一日から話は始まる。

目次

事のはじまり

関西の某大学に通う仲良し3人は夏休みには帰省せず、女性だけのドライブ旅行にいくことにした。
特に目的を決めず、なんとかなるだろうと宿泊先の予約もせず、大阪方面から山陰地方へ日本海側を西に向かう。
旅は順調、ふと目の前に海が広がった。

「ねえ、せっかくだから みんなで写真撮ろうよ」
少し先に車が止められそうな場所がみえたのだ。
思えばいつも3人一緒だが、一緒に写真をとったことは余りなかった。

そこは道路に面した崖を切り崩すように作られているようだった。
車数台分が止められそうな駐車場、曲がりくねって奇妙な印象がする大きな松の木、横に小さな自販機。

「こんなところに休憩場所。ちょっとラッキーだよね」
「悪くないよね」
崖側の柵にカメラを置いてタイマーで撮影するのに、安定する位置を3人で探していた時だ。

「写真撮るの?シャッター押そうか?」と男性に声を掛けられた。
小綺麗なシャツに穏やかそうな表情の中年男性、不審さを感じる要素はないのでカメラを渡した。

「お願いします。3人一緒はなかなか上手く撮れなくて」
「失敗してたらナンだから、何枚か撮ろう?」
そんな申し出に、角度を変えて数枚撮ってもらった。

「ありがとうございました。」と自販機でコーヒーを買って渡そうと、財布の小銭を覗き込んだほんの一瞬で穏やかそうな表情の中年男性は消えてしまった。
「あれ、おじさん いないよ」
「今まで いたのに」

探すにも隠れるような場所もない。
そういえば声を掛けられた時もいきなりだった。
仕方ないので気にせず車に乗り、楽しい旅を続けた。

「こんな旅も楽しいね」
また休みにも、みんなで旅行しようと約束して帰宅したのだ。

異変

次の日、朝早くから電話で起こされ、旅行の時の車の持ち主が死んだ事を伝えられた。

2人を駅まで送り届けた後の出来事、交通量も多くないの道で電柱に突っ込んだらしい。
運転席でハンドルを握った状態の彼女は、首から上がなかったそうだ。
電話の向こうの、彼女の母親の声は震えていた。

さらに次の日、もう1人死んだ。

彼女の母親からの電話だった。
自宅から徒歩10分ほどにある横断歩道を渡っていた時、いきなり落ちた。
見ていた人の話によると、何もないのに道路に向かって弾き飛ばされたのだとか。
足が千切れかけ、骨が飛び出していたそうだ。

楽しかった旅行・・・あれが最後?
2人同時にあんな事に・・・ショックだったのだと思う。
何も考えられなくなっていたという話だった。

出来事はここから加速する

それからしばらくして、駅前のカメラ店からの連絡があり写真を取りに行った。
受取り票の日付を見て、呆然としたまま数日すぎてたことに驚いた。
ショックで止まっていた分の時間を取り戻すかのようだ。

店先で受け取り、中身を確認すると行きの道中の崖で撮ってもらった写真だけがない。
写真だけではなく、フィルムもその部分だけ切り取られていた。

「3人最後の写真なのに!」
店主に詰め寄ると、
「あれは見ない方がいいです。」
どうしてもと何度も食い下がると、店主はしぶしぶ奥の部屋から写真を持ってきた。

写真に写る3人・・・しかし、車で死んだ彼女は、首から上が消えていた。
歩道橋から転落した彼女は、足が細かく消えて写っていた。
写真を取りにきた彼女も、体中あちこちがきえていた・・・声も出なかった。

怪談や怖い系のドラマなんかだとこの辺りで話は終わり、なんてこともあるのだがまだ先がある。
写真の現像に出した彼女からは細かい話を聞いていないのだが、とても冷静でいられる状態ではなかったのだろう。

店主等の証言から話を進める

現像したカメラ屋の店主は言う。
客から預かった物には「写ってはイケナイモノ」が映り込んでいることがままあるが、普通はそれだけ。
だがこの写真を現像した直後から、身内が次々と倒れ、亡くなった方もいたそうだ。おそらくこの写真が原因なのだと直感的に感じ、大体の場合は現像できなかったと渡さずに処分するのだが、今回はフィルムと写真両方をお祓いに出すことにしていた。
しかし客に残った現像した問題のない写真とフィルムを渡して、許可をえない限りはどうする事もできない。いつまでも引き取りに来ない彼女に業を煮やし、催促の電話を何度もかけたのだが引き取りにこなかったのだ。

この時、すでにある寺に事情を相談済だったのだが、取り乱す彼女をなだめている時、まるで見透かしたように「今すぐ来い」と電話が入る。
彼女に事情を話すと、どういう事なのか知りたいと言う。
写真とフィルムを持ち、店を閉めて彼女を連れ寺まで車を飛ばす店主。
蒼白に震える彼女に「すぐ寺に着く。寺に付いたら大丈夫だよ」と必死に言い聞かせながら、寺に向かった。

寺では門前に馴染みの住職が待ち構えていたのだが、寺には入れてもらえないばかりか、車から降りてはいけない、近寄ってもいけない。
住職が言うには店主に相談を受けた後、なぜか引き寄せられるように知人の修行僧がやってきて、写真をみるやいなや、
「手に負えない、寺に入れてもいけない、寺に落ちる。」
「出来るだけ近づけないで、すぐにこちらに来るように伝えなさい、こちらでなんとかしてみる」
と言われたと告げられたのだ。

優しく柔らかな修行僧の普段との違いに只事ではないと思い、住職もよく覚えていたそうだ。

存在してはいけないモノ

住職の寺からかなり遠い山の奥深く、修行僧は修行寺のある山の入り口で待っていた。
修行僧はぐったりしている彼女を肩に担ぎ、あとからついてくるように店主に言った。

修行寺までの長い道すがら、写真とその「存在してはいけないモノ」について店主は聞かされた。

「あらぬモノの一部が写ってしまっている。」
「この世のモノでもなく、あの世のモノでもない、滅多に会うモノでもないのに出会ってしまった、巡り合わせとでもいうことか。」
「3人は何も悪いことはしていない、ただただ不運であっただけ。」
「まだまだ死ぬ。たくさん死ぬ。災厄としか言いようがない。」

聞いていた彼女が大声で泣き出した。
「よくがんばった。」
修行僧が彼女を慰めている間に、目的の修行寺に到着する。

修行僧はそのまま彼女を、担いで寺の奥へ消えていった。
店主は出迎えた別の修行僧に連れられ更に奥の廟へ行って、払いと魔除けを施され、お守りと札をいくつか持たせてもらった。

あれ

修行僧が「あれ」と言ったのは、「あれ」としか言えない。
この世のモノでも、あの世のモノでもない。自然のモノでもなく、妖怪やあやかしの類でもない。
「あれ」は違うモノだ。

「あれ」は 祓えない。
彼女が負う分を出来るだけ剥がして、厳重に封じるしか今は手がない。

修行僧はそう言っていた。

その後の話

カメラ屋の店主にお祓いを頼まれた寺の住職から、ある程度経緯を聞いた。

住職の寺では、小振りながらも大切にしていたご神木が突然枯れてしまったそうだ。
「身代わりになって 守ってくれたのだ」と住職は言っていた。

カメラ屋の店主は修行寺から帰って、昼夜問わず妙な囁き声が聞こえて仕方がない。
持ち帰ったお札もすぐに文字が濡れて崩れてしまったそうだ。
大した出来事は起きてはいないのだが、無性に怖くなった。

店主はしばらくして店を手放したようで、住職はその後どうしているかは知っているようだが、
「お元気ですよ」としか言わない。

写真を取りにいった彼女が修行寺を出たのか全く分からない。
家族への連絡や他の2人のご両親に関して、住職が色々手を尽くしていたようだ。

この話を最初に聞いた時から、それなりの年月が経っている。
住職は鬼籍に入られて久しい。
先日、修行僧と会う機会があったので「彼女はどうなったんでしょうか」と聞いてみると。

「祓えないモノは落とせない。外に広がらないように封じ続けるだけ。」
修行僧は、今でも封じの行を続けているようだ。

「あれ」に正体を一応聞いてはいますが、やはり「あれ」のまま知らない方がよい話です。
マンガ「うしおととら」の「白面の者」を思い出してしまう話です。

※画像はイメージです。

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