日本警察拳銃 ニューナンブM60 は何故使い続けられるのか?

日本の警察官、特に現場の制服警官が装備する拳銃としてつとに高い知名度を誇るのが、現在のミネベアアツミ社製の回転式拳銃「ニューナンブM60」ではないだろうか。
少しでも銃火器についての知識を持つ人に取って見れば、「ニューナンブM60」は正に日本の警察が保有する拳銃の代名詞的存在であり、長年継続使用されている事で知られている。

「ニューナンブM60」はその名称が示すように、1960年に日本の警察に採用され1968年以降はほぼこれのみに統一され、1990年代に生産が終了された後も第一線で用いられている。
この「ニューナンブM60」の生産終了を受けた後はアメリカの「S&W M37」や、同社に日本用に製造を依頼した「M360Jサクラ」が採用されているが、何れも同様の仕様と見做される。

我々がよく目にするTVドラマや映画のアメリカの警察では、ほぼ全て自動式拳銃を使用しており、更に装弾数が多く安全機構も強化された撃鉄内蔵式のストライカー方式が主流となっている。
こうした日米の警察において、装備する拳銃に求められる要件面の違い等も考慮しながら、「ニューナンブM60」について紐解いて行きたい。

ニューナンブM60の歴史

「ニューナンブM60」の開発経緯には、日本において警察官の携行する武器が、太平洋戦争戦争を挟んでGHQの占領時の指導によって改められた事が大きく影響している。
戦前の日本の警察官は、刑事や特殊な警備任務従事者にしか拳銃を配備しておらず、大多数の制服警察官はサーベルを装備するのみだったが、これをGHQが拳銃の配備を指示したのだ。
このため戦前の日本軍で採用されていた、著名な銃器設計・南部麒次郎が興した中央工業製の「南部4式自動拳銃」や、アメリカ軍払い下げの多数の拳銃が一先ずこれに充当された。

アメリカ軍からの供与品は「S&W M1907」回転式拳銃や「コルトM1911A1」自動式拳銃だったが、いずれも45口径の大型拳銃で、日本の警察が装備するにはサイズ・威力とも大き過ぎた。
またこれらは経年劣化によって信頼性も低く、1959年に小型の「S&W M36」回転式拳銃をアメリカから輸入するのと並行し、中央工業から新中央工業となっていた同社に国産拳銃の開発を依頼した。

ここで新中央工業が開発した回転式拳銃が「M58」として完成し、これが1960年に警察に正式採用されて「ニューナンブM60」と言う往年の南部式を引き継ぐネーミングが与えられた。

k_shirai_95CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由

ニューナンブM60の概要・スペック

「ニューナンブM60」は全長198mm、重量670g、銃身長51mm若しくは77mm、装弾数5発、口径9mmで、弾丸には38スペシャル弾を採用し、シングル・ダブルアクションとも可能な回転式拳銃である。装弾数が5発であることや弾丸に38スペシャル弾を使用する点などを含め、輸入し使用していた「S&W M36」等のS&W系の小型回転式拳銃をベースに設計された事が見て取れる仕様となっている。

反面S&W社が連射性を重視し、ダブルアクション射撃時の使いやすさに注力した造りとしていた事に対し、日本での使用は単発が重視され、シングル・アクション時の命中精度が高いと言われる。
銃身長51mmの単銃身のタイプは私服警官等のコンシールド・キャリー向けであり、制服警官等には77mと銃身長が若干長いタイプが標準装備として用いられている。

ニューナンブM60が未だ現役である理由

前述の通り「ニューナンブM60」は1960年に日本の警察で正式採用されており、以後30数年にわたって生産されその終了の後もまだまだ第一線の装備品として60年以上が経過しても使用されている。この事実の大きな理由のひとつには、自動式拳銃と比べて構造が単純であり且つ堅牢である為、壊れにくく丈夫であり、日本の警察の低い使用頻度であれば十分に装備としての機能を満たす為だろう。

当然のことながらアメリカのように銃器の所持が一般人に認められている国と違い規制の厳格な日本では、銃器を用いた犯罪そのものが少なく、従って警察の拳銃の使用頻度も低い。
よって貴重な予算を投入してまで警察官が所持する拳銃を代替する必要は生じておらず、総じて経年劣化も抑えられていると見られることから、非常に息の長い拳銃となっていると考えられる。

ニューナンブM60を取り巻く状況

元々「ニューナンブM60」が開発・採用された背景には、当時の日米安保条約等を巡る反体制派の武力闘争等に対し警察官を増員してこれを鎮圧し治安維持を図ろうとする意図があった。
ここで増員された警察官に支給する装備品として拳銃の国産化を目指した事から、新中央工業が「ニューナンブM60」を完成させた訳だが、幸いに日本では暴徒鎮圧に拳銃が使用される事はほとんどなかった。

新中央工業は「ニューナンブM60」を生み出したとは言え、銃器需要の限られた日本では生き残りは難しく、1975年には現ミネベアアツミの前身ミネベア社に吸収・合併され現在に至っている。
余談だがかつて1980年代頃迄の日本では、警察や自衛隊が使用している現行モデルの銃器をトイガン化する事もメーカー側が自粛していたと考えられ、「ニューナンブM60」もその対象だったと思われる。

そのため当時の日本の刑事ドラマ・映画等では旧MGC社がプラスチック製モデルガンとして発売していた「コルト・ローマン」等が警察官の所持する拳銃として多用されていた。
また日本の警察でも近年は警備や特殊部隊向けに自動拳銃の配備も進められており、警察内ではこれらは「特殊けん銃」と呼称され、SIG SAUER P226やグロック17等が採用されている模様だ。

 

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