私の夫は電気工事士です。
私たちが住んでいるのは県庁所在地まで車で一時間ほどの中山間地域、人口は一万人の田舎町なので、いわゆる「町の電気屋さん」。
家電の配達や設置、修理だけでなく、新築工事やリフォームなど、幅広い仕事をしています。
高年齢化する町と新しく住む人
少子高齢化の影響をまともに受け、高齢者の割合が年々増えている町です。
一方でここ数年は、コロナ以降にテレワークが一般化したことや、「田舎暮らし」や「スローライフム」といった移住ブームの影響もあって、都市部から引っ越してくる人の姿も目立つようになりました。
そうした人たちが選ぶのは、新築ではなく古民家の場合が多く、町からリフォームの補助金が出ることもあり、古い家を買って手を入れながら住む、というケースが少なくありません。
夫は、「古民家なんて格好いいこと言ってるけれど、古屋だよ、単なる古屋」なんて、文句を言うことも多いです。
まあ、これは夫の個人的意見で、『古い』とみるか『趣きがある』とみるか、個人のとらえようでしょう。でも、わざわざ維持に手間のかかる古民家に住むなんて酔狂かな?とも思うのです。
気持ち悪い
つい先日、
「今日さ、リフォーム工事に行ったんだけど、なんか、嫌な感じのする家なんだよね」
と、暗い顔をして夫が帰宅してきました。
気が付いたんですが、最近、夫が古い家のリフォーム工事に入るとこういう事が頻繁にあるようです。
おそらく、この近辺の古い家は程度が良いものなんてありませんし、土地に執着するあまり、都会にすむ家族に置いてけぼりにされてしまった老人が孤独死してしまう⋯⋯なんて事はざらです。
あまり気持ちの良い仕事では無いからでしょう。
その日の現場
その日の現場は、山が影になって日当たりが悪く、湿気が強い場所に建つ、築百年近い家のリフォームでした。
手前には高齢の方が暮らす家があり、現場へ行くには、共有の私道を通って、その家の前を抜けなければならない立地だったそうです。
田舎では珍しくない事情とはいえ、他人の生活圏を行き来しながら作業をするのは、気を使う現場だったといいます。
屋内に入ると、以前住んでいた人の生活用品がそのまま残されていて生活感があり、ひょっこりと家の人が現れそうな雰囲気。和室には仏壇やご先祖様の遺影が飾られたままで、単純に怖いと思ったそうです。
全体的に湿っぽく、壁紙がところどころ剥がれ、畳はたわみ、足を乗せると今にも穴が空きそうで迂闊に歩くことすらできません。
依頼された業者によると電気は床下配線らしいので、床下に潜って作業することになりました。
配線は老朽化し、このまま使うのは危ないと判断したので引き直しをしなければなりません。
仏壇のある和室のある辺りで作業をしていると、上から、ドンッと蹴られたような音がしたそうです。
でも今日の作業予定では、他の業者がくることはなく、現場には自分ひとり。
古い家なので、建物自体のなにかしらのトラブルと思い、慌てて床下から這い出て確認したのですが、天井が落ちたり何か物が落ちてきた形跡もありません。
でもなんだか誰かがいるような気配がします。
「これは、ヤバい」と泣きそうになりながら、作業を大急ぎで終わらせて帰ってきたのでした。
それ以来、夫はできるだけ一人で家の中に入らないよう、他の業者と作業が重なる日程を組むようになりました。
どうやら他の業者も、似たような違和感を現場で感じていたようで、すぐに同意してくれたそうです。
他にも怖いことがある
夫が本当に気味悪がっていたのは、家そのものだけではありませんでした。
それ以上に、隣に住んでいるお爺さんが怖かったそうです。
現場へ行くために私道を行き来する許可は得ていましたが、隣家のお爺さんは、いつも黙ってこちらを見ています。
挨拶は欠かさなかったものの、返事が返ってくることはなく、何を行っても無反応。
それ以外に、気がつくと窓から姿がみえ、作業をしている間、ずっと見られている。
むしろ、こちらを睨んで監視しているようなのです。
他の業者も同じように思ったいたようで、若い業者の中には、「何か隠しているんじゃないか」などと冗談めかして話す者もいました。
家の中では不可解な出来事が多いので、そうでも言わなければ気持ちが保たなかったのかもしれません。
とにかく、不気味な人だったというのが夫の印象です。
結局、どうなったかというと
その現場では資材の手配ミスや工程の遅れなど、小さなトラブルが重なり、工事はなかなか終わりませんでした。
計算したはずなのに部材が足りなくなり、私も一度だけ届けにいった事があるのですが、階段の踊り場から誰か覗いている感じだったり、廊下を誰かが通りすぎた感じがしたり。
もちろん感じがするだけで、誰もいません。怖いという気持ちはよりは、ちょっと嫌な感じでした。
なんとか工事が終わり、新しい入居者がやってきましたが、半年もしない内にいなくなってしまったのです。
話によると思ったよりも暮らしづらいの都会に帰ったとかで空き家に戻ってしまいました。
補助金が出たにしても、かなりの自己資金を支払い、引っ越しの費用だったそこそこしたはず。
なのに短期間でいなくなるなんて。
やっぱり、あの家にはなにかが合ったのかもしれません。
それか、隣のお爺さんに秘密があるのかもしれません。


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