高校生のときの体験談です。
叔父はリゾート専門の不動産会社を経営し、年にいくつもの別荘を購入しています。
掃除をするのと少しお小遣いがもらえるのと、泊まっても良いので、私は夏休みになるとバイトがてらあちこちの別荘に遊びにいっていました。
Y県にあった別荘は山奥にあって、建物自体は古いのですがとても豪華なうえ、田舎の涼しい空気と虫の声に包まれながら静かな時間を過ごすにはぴったりの場所でした。
さっさと掃除を終わらせて、リビングでテレビをみながらくつろいでいるといつの間にか眠ってしまい、ふと目をさますと時計は深夜の1時を指していました。
寝室に行くのも面倒だし、このまま寝てしまおうと目をつぶった瞬間、突然、意識だけが浮かび上がるような感覚がして、身体がピクリとも動きません。
金縛りだけど、疲れているから起きるだけで怖がる事はないと思っていると、視線の先にある古びたタンスの横で、何か黒い影が揺れています。
目を凝らしたてもはっきりとは見えません。声を出そうとしても喉が締めつけられるようで息が詰まります。
すると、その黒い影がゆっくりと動き出し、まるで這うように床を滑るように近づいてくるのです。
その瞬間、冷たい風が部屋を吹き抜けたように感じ、影はもはや影ではなく、ぼろぼろの着物を着た女性の姿に変わっているではありませんか。
髪は乱れて顔がまるで白い仮面のように無表情、でも目だけは鋭く睨んでいます。
「これは夢だ・・・・ただの夢なんだ!」と自分に言い聞かせて目を閉じようとすると、その幽霊のような女性が、ふいに「ここ、私の家なのよ。」耳元で囁いたのです。
その声は耳の奥に響くほど鮮明で、恐怖に押しつぶされそうになり、全力で身体を動かそうとしたが金縛りは解けません。幽霊はじっと私を見つめたまま、ふっと消えるように闇に溶けていきました。
翌朝、目を覚ますと全身汗だくでした。
でも身体を自由に動かせる喜びを噛み締めながら、昨夜の出来事を思い返して、あれは夢だったのだろうか?
帰る準備が終わった頃、叔父さんが迎えにきたので昨晩の話をすると「そんな事あるかよw」と笑われ、「私もそうだよね〜」なんて話しているよ、ふと箪笥の引き出しが少しだけ開いていることに気づいたのです。
開いてみると、そこには誰かが書き残した古い手紙が一枚。
「この家で死んだ女がいる。」
二人は速攻で逃げ出し、叔父さんは利益を度外視して、すぐさま売り払ったと聞いています。
※画像はイメージです。
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