「トライダーG7はフォートランで動く」・・・、調べてみると本当にマ○クロソフ○やフォートランの名前が躍る発進バンクが存在するのです。
そんな話を耳にすればあれやこれやとネタ話を思い出してしまうのはオタク気質の悲しい性と申せましょう。
そう現実レベルの戦車や戦闘機ですら電子化の波に抗えない中で、人型メカの操縦系にコンピュータはもちろん不可欠。物語の最中に「○○を書き換えた」だの「△△を乗っ取った」だの、技術の粋を凝らしている(らしき)攻防が繰り広げられれば「見えない戦い」に胸を熱くさせたりもするものでした。
そんな「良く分からないけど何となくスゴい」領域でアレコレと語られる文言について、今回は個人的な好みから作品を並べつつ、その内容や何をやっているのかについて「分かる範囲で」踏み込んで行きたいと思います!
聞き流してしまいそうな用語の意味をおさらい
いまさら、と言ってしまいたくなる程、現代社会で欠かせない存在となった「コンピュータ」という「モノ」。ここで改めて考えて見ると「何処にそれがあって何に使われているのか」という問い掛けに対して、答えるのが意外に難しい・・・或いは当てずっぽうを言っても正解になりかねない程、あらゆる場所に存在しています。
パーソナルコンピュータ、スマホ・タブレットに据え置き、携帯ゲーム機といった「分かりやすい」ものから、巨大な「スーパーコンピュータ」、目に見えない部分に組み込まれるパーツのようなものまで、言ってみれば「現代社会そのものを構成する」と言っても良い程、あらゆる場所で幅広く使われている機器でしょう。
とは言え、その本質的な機能は何かと言われれば「電気的に演算結果を導出する機械」、「電子計算(演算)機」であるという事になります。
歴史的には「真空管」を用いたものから始まり、現在では「量子もつれ」と呼ばれる物理現象を援用した「量子コンピュータ」まで研究・開発が為されています。根本的な「論理回路を用いて入力された値に対し0か1かを出力する」という部分についての変化は起きていないとされ、その高速化と並列化、一つのパーツになるべく多くの処理単位を押し込める事によって複雑な処理を可能にしています。
物語に組み込まれたコンピューター
こうした「それはどういったものかという定義」を物語の背景へ丁寧に取り込み、且つSFとしての飛躍をさもありなんと納得させる構成で打ち出した典型的な作品が「ゆうきまさみ」氏の手による「機動警察パトレイバー」でしょう。
同作が発表されたのは1988年(昭和63年)、時代は「パソコン普及期」として企業活動にコンピュータが一挙に普及を始めようとしていた時期であり、これから訪れる変革に大きな期待と無形の不安が混沌としていた時期だったと言えます。
そんな中で氏が描き出した世界は、当時の現実から「10年後」という近未来に焦点を当て、人間社会のリアリティとSF的な技術発展を織り交ぜたものでした。
同作で打ち出した人型メカの形態は「レイバー(労働者・labor)」を意味する通称(作中最初の機体とされる商標が一般化したもの)で呼ばれ、建設重機の強化・多用途型として発祥した「多足歩行型大型マニピュレーター」という機械分類であるとされます。
つまり現実世界でも運用されている、フットペダルとシフトレバーによって作業部位を稼働させる重機の延長となりますが、大型化と多用途適性を求められた結果、より複雑な操縦系を構成する必要に迫られ、コンピューティングによるな補助を搭載する事になったと考えられます。
そこで同作において焦点を当てられた設定が「OS(オペレーティングシステム)」の存在でした。
OSと人形メカ
現在では「Mac-OS」や「ウィンドウズ」等「汎用OS」の存在によって一般的に広まった用語ですが、同作ではより広義となる「機体をソフトウェア制御するシステム」という意味合いも持ち合わせる用語として現れます。
これによって「レイバー」は「パーソナル」な機械として描かれ、カスタマイズや細かなセッティングと搭乗者のクセ等を学習、フィードバックする事に拠る調整が可能となります。一方でOSでの処理を汎用・一元化する事に拠る効率化といった機械的な性能向上も考案される他、時にはOSに仕掛けられた悪意的な「プログラム」や「コンピュータウイルス」等によって巻き起こされる事件等も描かれます。
こうした関係性を元に用語を整理すると、ハードウェア「レイバー」であれば機体に搭載され、操縦系等と共に搭乗者が操縦する為の「装置」であり、機体の駆動系に対して命令を伝達する部分が「コンピュータ」。
それを動かす為の様々な命令を搭載し、レバーやスイッチに従い動かす、或いはその命令そのものをカスタマイズする為のソフトウェアが「OS(オペレーティングシステム)」であると言えます。
そして、これに搭載された「命令」の他、学習によって追加されるものや、ユーザーが組み替えて作るもの、時に悪意的な動作も可能とする「命令(の集まり)」が「プログラム」です。
実際には「OS」も「プログラム」の集合体であると言え、これらをどんな「(プログラム)言語」によって構築するかであったり、或いはどんな「言語」を用いて「OS」をカスタマイズしたり、作った「プログラム」を読み込ませるかといった事がその違いとなって来るものです。
余談ですが「機動警察パトレイバー」の繊細且つマニアックな描写の中で、特に印象的だと言えたのは「特車二課」の面々でも一際「濃い」面子である整備班の面々が備品である高性能なコンピュータを扱う場所に「電算室」の名称が掲げられていた点は、同作を彩る性格を強く物語るものであったと言えるかもしれません。
プログラム言語のあれこれ
今回の記事を書き始める切っ掛けが「トライダーG7がフォートランで動いている」という話題だったのですが、この話題は前項において触れた「言語」に関する話題だという事になります。
「トライダーG7」とは「機動戦士ガンダム」の後番組として制作された「無敵ロボ トライダーG7」に登場する同名のスーパーロボットであり、低年齢層を意識したコミカルな作りながら下町人情ものとしての性格や、予算を考えて戦闘しなければならないといった生活感を盛り込んだ作品となっています。
ある意味において「パトレイバー」と奇妙な符合…と言えなくも無い話の中で現れるのが、物語後半に登場する発進シーンにおいて機体内のモニタに映し出される「FORTRAN(フォートラン)」という名称でした。
「FORTRAN(フォートラン)」とは、1956年にコンピュータ用の「高水準言語」として開発された世界初のプログラミング言語とされ、主に科学技術計算を目的として現在でもスーパーコンピュータ等で運用されています。
使用されている環境や「高水準~」という言葉、或いは「フォートラン」という名前の響きから如何にも格好良いイメージではありますが「スーパーロボットを動かす」には「不向き」であると言わねばなりません。
前項で触れたように「コンピュータ」とは本来「0と1」しか受け付ける事が出来ず、実の所「プログラム」というものも究極的には「0と1を膨大な数繋ぎ合せたもの」…「機械語」と呼ばれるもので動作させています。
これを「直接」読み書き出来る人間というのは、訓練等で作り出せる可能性があるにしても、労力の割りに効果が見合わないと言わざるを得ないと考えられます。
そこで作り出されたのが「低水準言語」…「アセンブラ」等、対応する機械に読み込ませる事が出来る命令一覧というものでした。
それぞれの機械が持っている設定…何処にどんな回路が設置されているか等に応じて組み上げられる無数の「0」と「1」の組み合わせに対して「対応する命令」を設定する事でそれを読み出す事が出来るという仕組みから考え出されたもので、本質的に「機械を直接動かす」という行為に最も近い「言語」だと言えるものです。
低水準言語?高水準言語?
「パトレイバー」において機体に対応した「自社製OS」となるものは、イメージとしてはこちらの「低水準言語」を踏襲しつつ、より扱いやすい仕組みに作り替えた「カスタマイズされた高水準言語」を用いているのではないかと考えられますが、単一の機体に熟練したパイロットであれば「低水準言語」を機体に合わせて使っているという事が有り得るかもしれない…等と言う話が浮上する事でしょう。
ただ「低水準言語」では、究極「ある機械」と「対応する言語」が「一対一」で規定されてしまう事から汎用性が低く、記述も機械に合わせた規定の厳しいものにならざる得ない、等の問題がありました。
そこで作り出されたのが「高水準言語」…「プログラム」という「記述」の部分をより作りやすいものとして抽出し、機械側には「コンパイラ」や「インタプリタ」と呼ばれるものを設定しておく事で、言うなれば「読込口」のようなものを作っておき、そこを通す事で「見合った機械語へ変換する」という事を可能にしたものとなります。
つまり「トライダーG7は、フォートラン記述式で記述されたプログラムを読み込む事が出来、またそれで動作している」という事になるのですが、そこで改めて「FORTRAN」の性質を考えると・・・。
戦闘というリアルタイムで様々な状況に対応し、無数の細かな処理を積み重ねる必要があるスーパーロボットが物理学や気象学で実積を積んだ詳細な計算結果を求められる言語が適切なのか…というちょっと返答に困る問題になってしまう事だと言えるでしょう。
「それで戦えるからスーパーロボットなのだ」という意見ももちろんあるでしょうが、現代のイメージで言えば「リアルタイムでコックピットからコンピュータチップよりも早く0と1を打ち込んで最適な動きを作り出して行く」なんていう「人間離れ」もあるかもしれません。
物語的な演出を通して思いを馳せる
今回は「コンピュータ」という、現実でも深く実生活に根差した分野から物語的な演出を通してあれこれ思いを馳せてみる形での話題を取り上げさせて頂きました。
実生活でも深く関わっていながら、実はその奥底で動いているのは見た事も無いようなもの。
例えば「0」と「1」で表現される、実際には回路の「ON(通電)」と「OFF(絶縁)」でしかないが無数に積み重ねられる事で、目に見える景色を作り上げているという「物語」が存在しているとも言えるでしょう。
SFに限らず「物語」を楽しむ「種」とでも言う物は、こういった所にも隠されているのかもしれません。今回の記事が、そんな興味関心を拡げる一助となって頂ければ幸いに思います。
※画像はイメージです。
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