人は死んだらどこへいくのだろうか?
すべての肉体はいつか必ず滅びるが・・・では魂はどうだろう。
前世の記憶を持つという子どもたちがいる。彼らが語る「かつて自分だった誰か」の死の記憶は、夢とも妄想とも思えぬほどに生々しい。
いや、そんなことはありえない、人生は一回こっきりで前世も来世も存在しないと笑う人もいるだろう。転生などというものは、死への恐怖が生みだした幻想か、その人の信仰の問題にすぎないと。
しかしその一方で、「ある」と考えなければ説明のつかない事例も世界中で報告されている。
もしも人が今生だけでなく、何度もくり返されるさまざまな人生を旅しているのだとしたら、肉体以外のなにが生まれ変わるのだろうか。
今回は、前世記憶の実例と生まれ変わり研究の最新事情を交えながら、「人は死んだら終わり」という常識について考える。
研究機関による生まれ変わりの調査
いきなり興を削ぐようで恐縮だが、現代の科学の力は生まれ変わりを実証するまでにはいたっていない。そのような現象は「ある」とも「ない」ともいえないのが現状だ。しかし、生と死についての常識は少しずつ塗り替えられつつあるように感じる。
生まれ変わり現象の本格的な学術研究がはじまったのは約60年前のこと。端緒となったのはヴァージニア大学のイアン・スティーヴンソン博士の調査だった。博士は転生研究の第一人者として知られるが、生まれ変わりをオカルトととらえていたわけではない。現在の科学理論では解き明かすことができないその人の個人的特性、つまり偏りが、生まれ変わりという仮説を用いれば説明できるのではないかというアプローチだ。
いざ実地調査をはじめると、生々しい前世の記憶をもつ子どもたちが思いのほか多いことが判明した。博士の没後も研究は引き継がれ、この半世紀あまりで41か国から2700件を超える過去世体験者の事例が集まった。
同大学医学部知覚研究室による調査は、たんに聞き取りだけでは終わらない。なぜなら、調査対象者が過去に見聞きした情報を前世の記憶と思いこむ記憶錯誤の可能性があるからだ。もちろん、なかには名声欲や金銭欲からくる作話のケースもある。
そうした疑念を払拭するため、まずは面接で明らかになった「前世の本人」が実在したかどうかを確かめる。当該人物の死亡証明書、検死報告書、カルテ、当時の新聞記事、日記や手紙などありとあらゆる文書をあたる。また、調査対象者だけでなく家族や友人など複数の証言者にもコンセンサスをとる。そして「前世の本人」の実在が確認できた場合のみ追跡調査が行われ、はじめてデータベース化の運びとなる。同研究室の調査では、これまでに「前世の本人」の特定に成功したケースは70%。また、前世で知り合いだったとされる人物が実存していたケースも70%。
もちろん、だからといって生まれ変わり現象が証明されたことにはならない。しかし、綿密な調査にもとづく膨大なデータからみえてくるものもある。それは、「人は死んだら終わり」ではないという可能性だ。
前世体験を語る子どもたち
研究に研究を重ねて明らかになった前世のエピソードは、いずれも具体性に満ちたものばかりだ。
硫黄島の戦いを記憶する米国の男の子
ルイジアナ州のジェームズ・ライニンガーは、おもちゃの飛行機で遊ぶのが大好きな男の子だった。
ところが、2歳になったころから飛行機事故の夢をくり返しみるようになる。真夜中に激しくうなされ、ベッドの上でもがきながら、「墜落する!」「脱出できない!」などと叫ぶ姿は、まるでPTSDに苦しむ人のようだった。
そんなある日、ジェームズは唐突に父親にこう言った。
「あのね、パパ。ぼくはパイロットだったんだ」
「コルセアに乗って、ナトマから飛び立った」
「イウォージマで日本軍にやられた」
「友だちのジャックも一緒だった」
「ナトマ?なんだか日本語みたいだね」と父親が言うと、驚きの言葉が返ってきた。
「ちがうよ。ナトマは日本の船じゃない。ぼくたちのだよ」
父親が調べてみると、1958年に除籍艦となるまで、米海軍にナトマ・ベイという護衛空母があったことがわかった。ナトマ・ベイが硫黄島での攻撃支援に参加し、その戦闘でジェームズ・ヒューストンというパイロットが戦死したことも判明した。彼のコルセアが敵弾を受けて炎上し、海に墜落したことまで息子の話と符合したのだ。撃墜される直前まで並んで飛行していた戦闘機の搭乗者は、ジャック・ラーソンという名前だった。
映画の都の黄金期を知る4歳児
ライアン・ハモンズというオクラホマ州の少年の例も興味深い。
「ぼくはハリウッドにいた」とライアンが口にしたのは4歳のとき。しばらくたったある日、彼は古い映画のスチール写真の男性を指さして、「この人はジョージ。ぼくたちは映画で共演したんだ」と得意になった。つぎに同じ写真に写っている別の男性を指さして、こう言った。
「これがぼく。前のぼく」
ライアンが「ジョージ」と呼んだ男性は、なんと1930年代にギャング映画で人気を博した銀幕スター、ジョージ・ラフト。対して「前のぼく」なるもう一人の男性は、ひと言の台詞もないエキストラ。しかし、そのエキストラがマーティー・マーティンという無名の俳優だったことが明らかになる。
「ぼくはニューヨークのダンサーだった。それからハリウッドにやってきて、映画の仕事や芸能プロダクションの仕事をした」
「豪華な船で世界をみたよ」
「かっこいい車に乗って、プールのある豪邸で暮らしてた」
ひと言の台詞もないエキストラにしては、暮らしぶりが華やかすぎる。当初こそ作話の疑いを抱いたが、さらに調査をすすめたところ、驚きの事実が判明する。
マーティー・マーティンが働いていたという芸能プロダクションはみずから立ち上げたもので、彼はそれなりの成功をおさめていたのだ。さらに、自宅の住所には「ロック」という言葉が入っていたというライアンの説明どおり、邸宅はロックスバリーにあった。
戦艦大和の模型に泣きじゃくる日本の男の子
こうした事例は日本でもあり、中でも有名なのが「タケハルくん」と呼ばれる少年のケース。
「戦艦大和の乗組員だった子どもがいる」という話で、日本国内のオカルト掲示板などで語られてきた。
タケハルくんは2012年生まれの利発な男の子で、2歳の誕生日を迎えた直後から奇妙なことをつぶやくようになる。
「戦艦大和が沈む夢」を繰り返し見ていたと言い、夢の中では、自分は甲板上にいて、艦が爆発する直前までの緊迫した様子を詳細に語ったという。
爆撃を受けている大きな船の絵を描いたり、習ったことのない軍歌を口ずさんだり、新しくできた友だちの「むさし」という名に強く反応することもあった。
そればかりか、戦艦大和の砲門の数や位置を言い当てるなど、幼児が知るはずのない大日本帝国海軍の知識をなぜか知っていたのだ。
要望によって、両親が広島県呉市の大和ミュージアムに息子を連れていくと、展示されている10分の1スケールの模型をみて、小さいから偽物だと泣き出したという。
タケハルくんが小学生になるのを待って調査すると、1945年4月の沖縄海上特攻で戦死した戦艦大和の乗組員の記憶をもっているのではないか?となった。
聞き取り調査を担当した大門正幸教授によると、タケハルくんには小学生らしからぬ凛々しさがあり、海軍兵の面影もそこはかとなく感じられた。
風呂場で大和が沈没する遊びを何度もしていた事から、海と同じ水場であるお風呂が過去世を思い出す引き金になったのではないかと教授は分析している。
ただし、日本のタケハルくんに関しては、記録媒体が匿名掲示板や体験談集に偏っているので信憑性に関しては、外の事例よりも操作の可能性が高い。
研究からみえてきた生まれ変わりの共通点とは
転生思想は、宗教観によって「ある」とする文化圏と「ない」とする文化圏に分かれる。しかし、過去世体験は信仰に関係なく世界各地で報告されている。宗教観だけでなく、人種や性別も超えて起こりうる。こうした生まれ変わり事例には、いくつかのパターンがあるという。
前世を語りはじめるのは発話が可能になる2歳から5歳までのあいだが多く、成長とともに記憶は薄れ、8歳ごろには語るのをやめてしまうこと。
ほとんどが非業の死をとげたり、家族と生き別れになったりと、この世に強い未練があったこと。
現在の人生で似た体験をしたときに記憶がよみがえりやすいこと。
前世の人物にあった傷痕・あざ・ほくろ・身体的欠損などが同じ場所にあらわれる、先天性刻印があること。
死亡時の状況に似た状況に対する恐怖があり、火・水・銃火器・特定の乗り物などを怖がること。
前世の人物と同じ嗜好をもつこと。
なぜこのような共通点がみられるのか、その科学的な分析は現段階ではできていない。
スティーヴンソン博士は、人の記憶や身体的特徴を来世に持ち越す媒体の存在があるのではないかと考え、これを「心搬体」と名付けた。
博士のいう心搬体が実際にあるとすれば、それはどのようにして情報を伝達するのだろう。死亡時に遺体から離脱して来世の人間に入り込むのだろうか。媒介説を証明するには、このメカニズムを解明する必要がある。
人間の記憶は死後も保存される?
生まれ変わり否定派の主張において、よく引き合いにだされるのが世界人口の推移だ。1800年には10億人程度だった人類は、現在では80億を超えるまでに爆発した。では、その増えた分の命はどこからきたのか、となる。
これに対する肯定派のおもしろい回答に、動物から人間への転生がある。事例こそ少ないが、前世は動物だったというケースも確かに報告されている。仮に前世が動物だったことを記憶している人がいても、それは告白しづらいものなので、埋もれているケースも多いのではないだろうか。ついでに言えば、魂そのものが増えつづけている可能性もないとはいいきれない。
研究者たちの検証でわかったことは、人間の記憶が死後もなんらかの形で存在している可能性があるということ。仮にタケハルくんらの事例が生まれ変わりではないとしても、会ったことのない死者の記憶に触れていることになる。
スティーヴンソン博士は、人間は遺伝的要因や環境的要因に加えて、過去世という第三の要因の影響を受けているのではないかと推測する。幼児期に観察される恐怖症、嗜好、先天性刻印、身につけたはずのない技能、自分の性別に対する違和感といった偏りが人間に
あるのはなぜか。その疑問を解くのに、生まれ変わりという考え方が使えるのではないかと主張しているわけだ。
あなたはどう考えるだろうか。
夢にでてきた景色がなぜか懐かしく思えたり、聞いたこともない異国の言葉を心地よく感じたりしたことはないだろうか。
ひょっとしたら、それは過去世の記憶がそうさせているのかもしれない。


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