「自己責任系」怪談の分析録

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怪談や都市伝説を調べていると度々見かける「自己責任系」と呼ばれる話。
そういえばこの手の話って長い間語り継がれるよなと好奇心が湧き一つずつ眺めてみると、一概に括るには勿体ない性質の差異が見られたので、この際だと考察も交え紙面を埋めていく。

目次

自己責任系とは

怪談の形式の一つ。話を聞く前・或いは後に「この話を聞いたものには悪い事象が起きる」「話を聞いた者に今後何が起きても当方は責任を負わない」と付随し、これこそが自己責任系と呼ばれる所以である。いわゆるいわくつきの品(例としてバズビーズチェアやホープ・ダイヤなど)にも見られる特徴であるが、今回は無形の「話」に限定して取り上げる。
自己責任系の怪談には上記の共通点があるが、更に大きく二種類に分けられる。

しろうるりタイプ

しろうるりとは徒然草に登場する僧がある法師につけたあだ名で「しろうるりのことは良く知らないし見たこともないけどこの法師の顔に似てるんじゃない?」とつけた経緯から「その名と少しばかりの要素は知られてるけどそれ以外は謎の現存してるかも曖昧な存在」を指す。

牛の首

聞くと死ぬといわれている怖い話。とても恐ろしい内容で聞いた者は軒並み死んでしまうので内容を知る者はおらず、牛の首というタイトルだけが語り継がれているというもの。小松左京が1965年に怪談・牛の首を取り上げた短編を発表しているが、その作中でも牛の首がどのような話かは語られていない。

鮫島事件

2ちゃんねる発祥の洒落怖。掲示板に集まったスレ民たちによって「あの事件について語ろうぜ」「あれは怖かったな」「詳しい名称は出すな公安に消されるぞ」などとあたかも過去に起きた悍ましい事件のように語られる架空の事件。
新参者が「鮫島事件って何?」と聞くのに対し「不用意に首を突っ込むな」「鮫島はタブーだ」と真相を語らず「公には言えない何かがあったんだな」と思わせるまでがいわゆる都市伝説鮫島事件の楽しみ方・嗜み方とされている。

しろうるりタイプは名称のみ流布し、詳細や怪異としての実体は曖昧であったり元から無い場合が多い。これらは「詳しい内容を聞くと死=詳細を知る生者は存在し得ない」の性質によって矛盾を生まないために設定されなかったとも解釈できる。

実体があるタイプ

しろうるりと反対の、語り継がれる詳細があり怪異として実体を持つタイプ。

紫の鏡

二十歳まで覚えていると呪われると言われているワード。この「紫の鏡」というワードだけでも成立するが、紫の鏡の元の持ち主の女の子に不幸が降りかかるバックストーリーが付随しているパターンがなじみ深い。
回避するにはこのワードを忘れるか、「白い水晶」など特定のワードをセットで覚えていると呪われずに済むとか。

さっちゃん

童謡「さっちゃん」の歌詞になぞらえた都市伝説。バリエーションが幾つかあるが事故で下半身ないし両足を無くしているパターンが多い。この話を聞くとその晩さっちゃんの霊が現れ、足を削いでいくといわれているが、同じく童謡の中に出てくるさっちゃんの大好物バナナを準備しておくと被害を回避できるらしい。

テケテケ

室蘭で電車事故に遭い半身を無くした女子学生の話。この話を聞いた者の元に上半身の霊が現れ、足を削ぐか身体を真っ二つに切り裂くという。話の構成はさっちゃんと似ている部分があり、後述のカシマさんと同一視されることもある。

カシマさん

カシマレイコともいう。足や手など一部を無くした女性の霊。経緯にもバリエーションがあり「終戦直後の時代に米兵に乱暴され足を切断された」など。上記のテケテケの本名である、或いは口裂け女の本名であるなどと加えられる場合もある。少し特異なのが、この話を聞いた者の前にカシマさんは現れ足を削ごうとするのだがその前にある「謎かけ」や「問答」に正しく答えると被害を回避できるという。

小学校低学年くらいの時にそんなのが流行ったなぁと思い浮かぶ者もいるかもしれないラインナップ。しろうるりのような「詳細を知る=死」ではないため、話を聞いた後に降りかかる脅威も牛の首ほど殺傷力は高くなく回避方法が後付けされているものが多い。また被害に遭う者も明確に死ぬとはいわれていないため、生還者から流布したていで怪異の細かい詳細が語られている。

語り継がれる自己責任系

話を聞いた者に恐ろしいことが起きるとされている自己責任系怪談。常なら口にすることすら恐れられ詳細や名称も忘れられていきそうなものだが、なぜこれらは長く語り継がれるのか、ひいてはなぜ廃れないのか。

貢献しているのはやはり『好奇心』と『都市伝説を都市伝説として楽しむ心』だろうか。人間の心理として「タブー扱いされると俄然興味が湧く」「禁止されると逆に触れたくなる」という動きがある。しろうるりのような詳細不明のものでも「知ってしまったら死んでしまう」というスリルが名称を語り継がせる。

小学生を中心に流布した紫の鏡なども、忘れなきゃと意識するほど忘れられなくなった子どもが怖い言葉を知ってしまったと周囲に漏らせば同年代の友人たちは好奇心のまままじないに触れ同様に広めていく。しかし話が広まる上で肝心なのが「恐ろしすぎない事」。対象の怪異があまりにも強力で殺意が高くなすすべがないと恐怖が勝り誰も触れたがらなくなり、話題に上がらなくなればそれはそれで廃れてしまう。

故に鮫島事件のような暗黙のルールが、さっちゃんやカシマさんのような回避方法が、そして自己責任という「その恐怖に触れるか触れないか選ぶ猶予」が、自己責任系を怪談たらしめ楽しむべき都市伝説として問題なく語り継がれているといえる。

自己責任系怪談は今日日、いちジャンルとして確立され今なお掲示板には新しい自己責任系怪談が投稿されている。
読んだ後の責任は誰も一切負えないが、興味が湧いた或いは度胸を試したいなら覗いてみるのも乙かもしれない。

※画像はイメージです。

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