以前、同棲していた彼女が、突然失踪してしまいました。
当時は若くて自分のやりたい放題だったから、愛想をつかしてしまったと思っていたのですが・・・。
彼女がいなくなる前の休日、私たちはドライブに出掛けて山沿いの道を車で走っていたときです。
ふと道路脇に犬が現れ、彼女は「引かれないといいけど」とつぶやき、少し心配そうな表情をしました。
数分後、「小学校の時、ちょっと怖いことがあったの」と、何かを思い出したかのように彼女は話し始めたのでした。
昔の話
彼女の生まれ故郷は、愛媛の自然が溢れた町。
小学校高学年だったある日の夕暮れ時、庭で一人ぼんやりと遊んでいると、家の裏で掃除をしている母親をみつけました。
手伝おうとおもって「おかあさーん」と声を掛け、「どうしたの?」と返事をした途端、私の顔をまじまじと見つめ一瞬、金縛りにあったかのように立ち止まり息を呑んだ。
顔がいつもと違っていて、吊り上がった鋭い目で心の奥底まで突き刺すような視線に母はゾッとしたそうです。
母が私を強く抱きしめてくるので、「どうしたの?」と聞くと、母は震えた声で「大丈夫、大丈夫だから」と繰り返すし、その後の記憶は全くなくて、気がつくと母の腕の中にいたというのでした。
後日
後で母に聞かされた話からすると、彼女の家は代々「犬神持ち」と呼ばれているらしく、子どもの頃はそういう事が時々おきるらしく、然るべき所で対処してもらえば良いらしい。
つまり「犬神」という不思議な物が家族全員、一人に一つ付いていて、いろいろと役目を果たしてくれるのですが、どうやら扱いがとても難しいというのです。
心霊体験などの話は聞いたことがあったのですが、今までに聞いた事のない話だったので、怖いというよりも不思議で理解しようとするのがやっとでした。
実際、「ふ~ん、そんな事もあるのか」としか思えません。
この話を聞いて、一週間もしないうちに彼女はいなくなってしまったのです。
なにも言わずに。
※画像はイメージです。
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