シゲルの様子が変だ

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最近、友達のシゲルの様子がなんだかおかしいんだ。
いつもは誰より声がでかくて、休み時間になれば「外さ行ぐべ!」って、真っ先に飛び出していくようなヤツだったのに。
ここ何日、ずっと静かで、なんだか目の焦点も合ってない。
「おめ、また夜っこ起ぎで、エロな番組でも見でらったんでねが?」って聞いたら、ぼそっと「変な夢見る」って言た。

目次

シゲルの話

そんなある日、学校の帰りにシゲルがぽつりと「タクミ、今度の土曜、うぢさ来ねが?」
最近、あんまり話しかけてくれなかったから、僕はちょっとびっくりした。
「行ぐ行ぐ!」って答えたけど、シゲルの目はどこか遠くを見てるようで、少しだけ怖かった。

土曜日、シゲルの家に着くと、おばさんが出てきた。
「あらタクミくん、いらっしゃい・・・シゲル、部屋さ居るよ」
おばさんの笑顔はいつもと変わらない、でもどこか無理してるようにも見えた。

シゲルの部屋は、たくさんのノートとそれを引きちぎったようなバラバラの紙が散らばっている。
一冊拾って中をみると見たことない模様がびっしりと書かれていた。渦巻きや目玉のような形が重なり合い、らくがきにしては意味不明で不気味な感じ。

せっかく遊びに来たのにカーテンが閉められて薄暗い部屋の中、シゲルは座布団にうずくまり、眠たそうな様子。

「最近、どんな夢見てんの?」

僕が聞くと、シゲルは黙ってたけど、やがてぼそぼそと話し始めた。
「夜、森の中さ、ひとりで歩いてんの。真っ暗で、雪も降ってて・・・」

すこし沈黙したあとに。

「で、奥の方から誰かの声がすんだ。“こっちゃこい”って。んでも、誰かは見えねえ」

要領を得ない話に、すこし呆れ「んだげ夢だべ?」と言うと。

「夢だばいいなって、思ってた。でも朝起ぎたら、靴が泥だらけだったり、部屋さ枯れ葉が落ぢでたりすんだ」

そのとき、僕はふと思った、それ!夢じゃない。
困惑している僕を横目に、シゲルは話をつづけていく。

「学校の裏山に神社あるべ?夢ん中で見るとこ、あれとまんま同じに見えんのさ。ほんとの夢じゃねぐなってきた気する」

実際、シゲルも夢じゃない事にうすうす気がついている。
もしかすると、夜中になると夢遊病のように神社に通っていたのではないか?
そうすると、神社になにか原因がある?
僕は正直、怖くなってきた。
でもシゲルが不安そうにしてるのが嫌だし、何があるのかと興味が湧いてきて「じゃ、神社にいっぺ見に行ってみるべ」と言った。

神社に向う

土曜の午後、僕たちは裏山の道へ向かったけれど、その神社は随分昔から寂れていて、だれもお参りはしない。
理由はしらないけれど、祟りとか怖い噂はないが、村の大人たちはあまり好く思ってない。

雪はすっかり溶けてぬかるんだ道を登り山の奥へと進んで、神社にたどり着くと鳥居が朽ち果て、倒れている。
二人で手をつなぎ「神様ごめんなさい」とつぶやきながら、鳥居を飛び越えてお社へ向かう。

木々は妙に背が高くて、光が届かない。風もないのに、どこかで木の葉がさわさわと揺れている音がした。

「なんか、気持ちわりぃな」

僕がつぶやいたとき、一冊の汚いノートを踏んづけた。
拾うとノートの表紙にはシゲルの名前がかかれ、中は見たことない模様がびっしりと書かれていた。

「このノートのシゲルのだべ…?」

それをシゲルに見せると。
ふらふらと森の奥へと歩き出した。僕が呼び止めても、まるで聞こえていないみたい。

「おい、シゲル!やめろってば!戻るべ!」

肩を掴んで引っ張ろうとすると、シゲルは振り返って、にっこり笑って言った。

「タクミ、ありがとな。でも、ここから先はオレだけで行がねばなんねえ」

そう言って、暗い森の中へ、ふっと消えてしまったんだ。

僕は必死で名前を呼びながら探したけど、姿は見つからなかった。
森の中でどんだけ叫んでも、声が吸い込まれていくだけだった。

泣きながら帰って、すぐに大人たちに話した。
両親や警察や青年団の人たちが何日も探してくれたけど、シゲルはとうとう見つからなかった。

どっどはらい

それから一週間ほど経った。
学校に行くと、もっとおかしなことが起こっていた。
突然、誰もシゲルの事を話さなくなっていたんだ。

クラスメートにシゲルの話をしても、「誰それ?そった人いたっけ?」って。
先生も知らないという、出席簿にも名前が載っていない、まるで最初から存在しなかったみたいに。

でも、僕の机の中に、あの日拾ったノートの切れ端が残っている。
そこには見慣れたシゲル書いた文字で、「ここは わすれられたものの いきるばしょ」。

時々、夜になると、夢の中にあの神社が出てくる。
そして木々の間に、シゲルが立っていて微笑みかけてくる。
まるで「こっちに来いよ」と誘ってくるように。

※画像はイメージです。

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