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しらせ

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朝起きて、水を飲もうとしたときだった。テーブルの上のガラスコップに、稲妻のようなヒビが入っていた。昨夜までは何の異常もなかった。落とした覚えもない。ぶつけた覚えもない。テーブルにおいていただけ、不自然なヒビが入るなんてあるだろうか? つまんで揺らすと、まるで虫歯が、今にも抜けそうな感じだった。

祖母の顔がふと浮かんだ。祖母は施設にいる。認知症が進み、名前も顔も誰ひとりして一致しなくなった。
1ヶ月前、肺炎になったと母から聞かされていた。嫌な予感。まさか……

その夜、夢を見た。
俺が五歳のころ、夏の夕暮れに祖母と畑の仕事していた。手を引かれ、セミの声がうるさいほど響いていた畑。泥まみれになりがらいつも畑の仕事していた。認知症が進んでも仕事だと言い張って聞く耳もなかったほどだ。白い歯が印象的で、優しい手の温もりを思い出した。
「立派になったねぇ、頑張るんだよ」と、夢の中の祖母が、まるで耳元に聞こえた。
ふと目が覚めた。携帯を見ると、非通知からの着信があった。時間は午前4時17分。妙な胸騒ぎがした。祖母に会いに行こうと思う一方、大丈夫という気持ちが葛藤した。春になって見舞いに行くことに決めた。

翌朝、母から電話があった。
「おばあちゃん、亡くなった……」
母の声は震えていた。何も言えなかった。ただ、テーブルの上のヒビの入ったコップをじっと見つめていた。

コップのヒビ、夢の中の祖母、非通知の着信。もしかして、祖母からの最後のメッセージだったんだと。
今もあのコップは捨てられず、棚の奥にしまってある。今もなお元気だった祖母は心の中で生き続いている。

やまたん

「奇妙な話を聞かせ続けて・・・」の応募作品です。
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※画像はイメージです。

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