今からかれこれ20年前、ニューヨークに住んでいた頃、実際に行った心霊スポットの話です。
マンハッタンの南に位置するスタテン島には、心霊スポットが多々あるという話を聞いていました。
もともとスタテン島はネイティブインディアンの土地で、いわくのある歴史だということです。
ある時、撮影の仕事で怖い言い伝えのある場所へ行くことになり、スタッフ一同でスタテン島にある廃墟へ潜入しました。
その建物は元は修道院だったらしく、いつから無人になったかは誰も知る人はいませんでした。かなり前に火災があり、内部は焼け跡が残って惨憺たるものでした。
現地に住む子の話では、数年前にそこで女性の惨殺死体が見つかり、遺体の破損状態からどうも悪魔教の儀式のようなもので犠牲にされたのでは、ということでした。建物は2階建てで上の階の床が抜けているところがあり、また時期は夏だったのですが、入った途端、スタッフほぼ全員が悪寒を感じました。
カメラを回していたのが急に止まってしまったり、そういう場所によくある現象が何度か起きました。
最初は興味本位もありましたが、みんなすぐに早く撮影を済ませて帰りたいという雰囲気が無言で伝わるようになりました。
スタテン島から出る時、いきなり土砂降りの雨に降られ、マンハッタンへ渡るベラザノ・ナローズ橋で落雷に遭うかと思うような酷い天気になりました。
やっと仕事場へ帰り、撮影してきたテープを見始めました。編集まで時間がなかったので、私とアシスタントの子二人で夜遅くにスタジオに残って作業していました。
カメラが廃墟に入りしばらくしたところでふと、妙な影が映っているのを見つけました。
「なんだろう、ちょっと見て。Mちゃんも見えるよね、ほらこれ」
私は確かめるようにアシスタントの子にそれを示しました。
「うわ、やっぱり変なものが映ってますね。こういう場所にはつきものだからなぁ」
そう言って目を凝らしていた彼女が、突然、ひっと悲鳴のような声を漏らしました。
「いまのところ見ました?巻き戻しますよ」
彼女はテープを巻き戻しして、再生しました。例のぼんやり歪んだような影が出てきて、それから30秒ぐらいのところでした。全体に灰色の建物の中に、そこだけ妙に赤いしみがあり、それが血まみれの顔のような様相になっていったのです。
「なにこれ、ちょっとやだ!」
私は画面から顔を逸らしました。その時、スタジオの窓に撮影した動画と同じ赤い顔があったのです。
私は凍りつきました。アシスタントの子を見ると、彼女もそれを見て動けなくなっているのです。
私はどこをどうしたのか、とにかくテープを止めて、彼女をせかしスタジオから出ました。
二人で落ち着くために、ブロードウェイ沿いのスタバに入ってコーヒーを買いました。
「やだなぁ。夜になんか見るんじゃなかったね。窓にうつったあれって、スクリーンの反射だったのかな」
「どうですかね。そうだったのかも知れないし」
アシスタントの子がコーヒーを飲もうとした瞬間、あわてて口を押えました。
「どうしたの」
彼女の手は明らかにわかるほど震えていました。
「あの、よく考えたら...スタジオに窓なんかなかったですよね」
私の手も震えだし、あわやコーヒーを落とすところでした。
※画像はイメージです。
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コメント一覧 (1件)
怖っ。