突如現れた人影

私が通っていた高校は創立して15年という新しい学校でした。
曰くのある埋め立て地に建てられたせいか、心霊現象話が絶えなかったのです。

人気のない弓道場で的を射る音がする。
夜見回りをしている先生が、後ろからの足音に気づき、怖くなって走ると足音だけが通り過ぎた。
夜に突然非常ベルが鳴る・・・など、いろんなエピソードを耳にしました。
そんな中でも一番多く聞いたのが、転落事故で亡くなった生徒の霊が出るというもの。

引き込まれる

学校が創立したばかりのころ、教室で文化祭の準備をしていた学生の一人が、カーテンがひかれていた窓が開いているのに気づかず、転落するという事故がおこった。

当時の私は、その亡くなった生徒がいたという教室でした。
そこでは机に伏せて寝ていると、ラジオの音が聞こえてきて体が動かなくなり、足元がブラックホールのように黒くって引っ張られる感覚に襲われるという噂がありました。

噂は知っていましたが、普通に教室も使われているし、普通にしていればなにも起こらないと思って過ごしていたのですが、あるとき授業中にうっかりと居眠りをしてしまったのです。
ラジオの音は聞こえたかは覚えていませんが、なにかに引っ張られた感覚がして、気がつくと窓から外に飛び出そうとしていたのを友人たちが引き止められていたのでした。

教室は大混乱していましたが、もし放課後でだれもいなかったらと思うとゾッとします。

練習していたとき

吹奏楽部に所属しており、個人練習をするときは、廊下、中庭、空いた教室など、好きな場所で行っていました。

その日も他の音が気にならないよう、空いている教室を使って一人で練習をしていた時の事。
ふと廊下側のドアについている曇りガラスに人影が映ったので、「部の子が一緒に練習しに来たのかな？」と思って様子をみていると、影は見えるのに一向に教室に入ってきません。
気になってドアを開けると誰もいません。影も消えてしまったのです。

少し怖くはなりましたが、たぶん気のせいだと練習を再開して数分後、気配を感じて背中がゾクッ。
楽譜から視線をあげるとそこには、いつの間にか入ってきたのか解りませんが、男子生徒が立っていました。

教室から出ようかとも考えましたが、教室の教室の中央付近にいたので、前後のドア、どちらに行こうにも男子生徒の横を通過しなければなりません。
理由は解りませんがだんだんと恐ろしくなり、楽譜を見つめることしかできません。
どのくらいの時間が経ったかわかりませんが、突然その男子生徒がスッと消えたので、教室から逃げるように飛び出したのでした。

変わらない恐ろしさ

あれから30年以上も経ちましたが、いまだにはっきりと脳裏にきざまれています。
これを書いている今も、思い出すと鳥肌が立ちますが、何事もなくて本当によかったと思います。

※画像はイメージです。