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夏の日の恐い話

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僕はある島で生まれ育ち、今でも住んでいます。
島と言っても、たとえば沖縄のように飛行機やフェリーで何時間もかかるほど離れているという訳ではなく、近くの都市から車で橋を渡ってこれるぐらいの場所にあります。
ここはきれいな海と豊かな自然が残る、のんきで穏やかな島。
しかし戦時中は日本軍の重要拠点だったのと、海流のせいで水死体が流れ着く海岸もあって、怖い噂が沢山伝わっているのです。

この話は私の住んでいる地区の外れにある、不気味なトンネルでの体験談です。

目次

不思議なトンネル

普通、トンネルといえば何処かへ抜けて行くための通り道ですよね。
でもこのトンネルを抜けた先は抜けた先は、どこにも行くことができない四方山に囲まれた狭い空き地があるだけ。
では何のため?といえば、おばあちゃんの話では戦争していた時代、軍人さんがなにかに使っていたけれど軍事機密だった・・・それぐらいしか解らないのです。

鬱蒼とした草に覆われた見た目、トンネル内部は素掘りでデコボコしたコンクリート、もちろん照明もなくて不気味。
そのせいでしょうか、戦時中に人柱を埋めたとか、軍人さんの幽霊が出るとささやかれるようになり、いつしか心霊スポットとして、地元の人以外にも肝試しをする方々が沢山訪れてくるのです。

高校生の時、夏休みもあともう少しで終わる時期の気だるい午後、僕の家には数人の友人が集まり、暇を持て余していました。
なにもすることがなくダラダラ過ごしていると、誰だか忘れましたが「ええこと思いついた!あのトンネルに肝試しに行こう!」と言い出したのです。
僕たちはどちらかといえばビビリですが、暇すぎた事もあり「昼間だから大丈夫じゃけえ!」と探検にでかけたのでした。

トンネル探検へ

トンネルは短かく、出入り口からさしてくる夏の日差しで中は薄暗い程度、懐中電灯を持ってきたのですが必要はありませんでした。
中間地点まで行くと「う~うぁ~~~~~~う~うぁ~~~~~~」と人のうめき声のような音がして、夜なら恐ろしいと思うかもしれません。でも「吹き抜ける風の音だよね」とみんな冷静な判断で楽勝なムードです。

そしてトンネルを抜けた狭い空き地は、なにかあるのかな?と見渡しても生い茂る木や草があるぐらいで何もありません。
「なんでこんなのが心霊スポットで怖いんだよ、でも暇つぶしにはなったよね」と笑いながら、入口まで戻る途中でした。

「ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド」
トンネル全体が大きな音を立て始めたのです。

「大きな地震が起きた!トンネルが崩れてしまう!」
そう思って皆、必死になって走り、僕の家まで逃げ帰るとおばあちゃんが呑気に玄関を掃除しているのです!

「ばあちゃん!地震だ!そんあ事してないで逃げないと!」と叫ぶと、おばあちゃんはポカンとしながら、
「地震なんて起きないよ」・・・と言うのです。
僕たちは何が起きたのか全く解りません、でも1つ気がついたのは、友人の◯◯がいない。

彼はどんくさい奴なので、そのうちに来るだろうとおもって待っているのですが、夕方になっても戻ってきません。
そうこうしているうちに日が暮れてしまい、親以外に駐在さんまで総動員する事態になり、ちょっとした事件のようになってしまったのでした。

見つかった彼

一刻も早く見つけないと生死に関わる事もあると緊張したムード、闇雲に探しても拉致があかないのでいくつかのグループに分かれて探す事になりました。
僕たちは親たちと一緒にトンネルの近辺が担当になり、中に居るわけがないと思いながらも、念の為に調べる事になったのです。

夜のトンネルは昼間と比べ物にならないほど不気味で、親すらも腰が引けている。心霊スポットと言われても確かにおかしくない・・・そんな事を考えながらトンネルを進んでいくと、不気味な風の音に混じって、「助けて〜う~う~」と声が聞こえてきたような気がしました。

静かに耳を澄ますと「助けて」と聞こえてきます。それも何も無いはずのトンネルを抜けた空き地の方から。
かすかな声をたどり空き地を探していると、昼間には気が付かなかった穴があり、その中から声が聞こえてくるのです。
お父さんが恐る恐る照らすと、穴の底には行方不明の彼がいたのです。

穴の中

穴は思ったより深くて、駐在さんの判断により消防のレスキューを呼ぶ事になり、不謹慎とは思ったのですがワクワクしてしまったのを覚えています。
手慣れた手つきで隊員の一人が穴の中に入っていったとたん、「うわーーーー」と大きな声がしました。

穴に落ちた友人を抱えた隊員が引き上げられると、顔が真っ青です。
友人は足と腕の骨を折る重傷でした。救急車で運ばれて行った後、なにがあったのかを聞いてみたのですが、穴の中には無数の人の骨があったというのです。
その後、警察と地元大学の先生が共同で調査したそうなのですが、中の骨には破損があり誰か殺害されたものであり、およそ戦前戦中ぐらいである。それ以外はなにも解らずじまいでした。

その話が広がり、肝試しをする為に沢山の人々が訪れるようになったのですが、穴に落ちた彼が元気になった頃には、事故の再発を防ぐためにトンネルを塞ぐ工事が始まり、騒ぎは沈静化していったのです。
いったいあのトンネルの先の空き地はなんだったのでしょう。

※画像はイメージです。

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