去年の夏休み、大学の友達4人で、I県の山奥にある避暑地に貸別荘を借りて泊まりに行った。
集落の外れの木造の古い一軒家で、元々はこの地方の偉い人が住んでいたらしいので、それなりに豪華な感じがして風情のある。費用もそこそこしたけれど、たまにはこんなのも良いよね。
8月のくそ暑い日だったけど、夜になると涼しい風が吹いてきて、縁側でコンビニのチューハイ飲みながら話してた。
虫の声と遠くの川の音しか聞こえない、ほんと静かな夜だった。23時くらいかな、ふと、庭の奥からカサカサって音がきこえた。
最初は風で木の葉が擦れてるのかなって思ったけど、なんか妙に規則的。カサ、カサ、って、ゆっくり近づいてくる感じ。友達が「動物じゃね?」ってスマホのライトで照らしたけど、庭の草むら以外何も見えない。けど、音は止まらない。だんだん近づいてきて、縁側のすぐ下あたりでピタッと止んだ。
みんなちょっと緊張して、シーンとしてたら、今度は家の裏、台所の方からコツ、コツって小さな音。
木の床を何か硬いもので叩くような。誰かが冗談で「泥棒じゃね?」って笑ったけど、誰も動こうとしない。
そんなこんなしていると酒が切れたので、誰か台所の冷蔵庫に取りにいかないとならない。
俺、運悪くじゃんけんで負けて、ビビりながら行った。
電気つけてみたら、何もない。真っ暗な窓に自分の顔が映ってるだけ。ただ、シンクの蛇口からポタ、ポタって水滴が落ちてた。
気を取り直して縁側に戻ったら、「なんかさ、さっきから庭の奥、木の陰が変なんだよ」って。見ると確かに一本の木の影が、月明かりの角度とズレてるみたいに揺れてる。風もないのに。みんなでじっと見てたら、影がスッと動いて、家の壁に沿うように消えた。そしたら、またコツ、コツって音が、家の外をぐるっと回るように聞こえてきた。
慌てて窓を閉め、雨戸を出して、朝まで電気つけっぱなしで皆で固まってた。
朝、管理人に話したら、「ああ、この家、昔お婆さんが一人で住んでて、よく夜中に庭歩いてたって話だよ。夏は涼しいから出てくるのかもな」って、ニコニコしながら言う。
庭見たら、草むらに細い足跡みたいなのが点々と続いてたけど、どこからどこまでか、わからなかった。あの家、二度と借りねえ。
※画像はイメージです。


思った事を何でも!ネガティブOK!