私の田舎にそっと伝わる風習「正月女」は、正月に女が死ぬと7人の人間をあの世に連れて行くといわれています。
正月に人が亡くなる
子どもの頃、一緒に暮らしていた祖母が「○○さんが亡くなったから、名前を貸して」と言われたことがあります。
当時、小学生だった私は、近所のよく知らない人が死んだら、何故、私の名前を貸さないといけないのか分からなかった。
私の名前を借りると言った祖母は、その後、一人で家を出て行ってしまったので、母親に「名前を貸すって、どういうこと?」と聞いた覚えがあります。
母は、「『正月女』だからって、言ってたわよ」と話すのですが、名前を借りる理由がますます分からなくなりました。
母親が言うのには、正月に女性が亡くなったら7人の人を連れて行くから、死んだのは女ではない男だと言って拝むという。また、死んだ女性は男性の格好をして埋葬したり、棺に一緒に燃やす人形を入れることなどを母は話してくれました。
市内から嫁いできた母親の地元にはなかった風習だそうです。
四辻で拝む
「で、おばあちゃんはどこ行ったの?」
「拝みに行ったんだよ。人の通らない四辻に行って、誰にも見られないように7人の女の人の名前を唱えて、終わったら、振り返らずに帰ってくるんだよ」
人の通らない四辻なんてあるのか、と言うと、自宅からかなり入った山道が四辻になっている部分があるから、そこへ祖母は男の格好をして拝みに行ったそうです。
正式には7人の女性が行って、名前を唱えて「死んだのは女ではない、男だ」と言う儀式をするそうです。
ただ7人も急に集まらないし、この7人は血縁関係にある人間が必要なようで、祖母が代表して儀式をしてくるようでした。
しばらくすると、祖母が帰ってきましたが、どんなことをしたのかは怖くて聞けませんでした。
地元でも知らない人がいる
この風習は、「正月」、「女性が亡くなる」というレアな条件がそろわないといけないので、地元でも知らない人がいて、特に男性は知らない率が高かったようにおもいます。
正月のくくりも地域によって曖昧で、正月三が日、正月7日ぐらいまで、1月いっぱいに亡くなったら、など、微妙に違っていました。ただ、地元の葬儀屋さんでは、棺に入れる人形を準備していたので、密かに伝わる風習なんだとおもいます。
ちなみに、葬儀屋さんが準備している人形は火葬場の事情でキューピー人形だそうです。
一緒に燃やされるキューピー人形もちょっと怖いですね。
正月女
正月女の影響は強いようで、本当に何人か続けて亡くなる事があります。
そんな時は、「正月女が連れていった……」とささやかれるのです。
正月女の正体ですが、一説では正月に働き手の女性が亡くなることはいろいろな影響が出ると考えられていたようで、
働き手が減った分、他に負担が増え、体を壊してしまい亡くなる、ということではないかと考えられています。
いずれにしましても、不気味さを感じる風習である事は間違いないでしょう。
※画像はイメージです。
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