私が20歳代の頃、老人ホームで介護士として勤務してきました。
人が亡くなる現場では奇妙なことが起こります。
話すことに戸惑いもありますが、亡くなられた方々への哀悼の意を込めて書かせていただきます。
豹変した利用者さん
当時、働いていた施設では、元気なご老人の方々が2階、認知症のある方は3階と分けられていて、私は3階で働いていました。
今回お話しするのは、2階にいた80代の女性利用者さんについてで、明るくしっかりとした方でした。
職員や他の利用者さんからも好かれていて、問題行動などは一切ありませんでしたが、ある日突然、彼女はまるで別人のように豹変してしまったのです。
彼女は毎日決まったように、
「母が迎えに来てるの。でも、一人で来てはいけないって言ってる。誰か一緒に連れて行かなきゃいけないのよ。」
と繰り返し叫ぶようになってしまったのです。
私たち職員は彼女の変化に戸惑いながら、急速に認知症が進行したと判断し、3階への移動が検討されていましたが、その矢先、彼女は急逝してしまいました。
道連れ
彼女が亡くなる前、職員だった若い男性、当時24歳のAさんと30歳のBさんに特別な思いを寄せていたようです。
恋愛感情なのか、母性的な愛情なのかは分かりませんが、周囲が気付くほどに2人を可愛がっていました。
そして、彼女が亡くなってからわずか1週間後のこと。
Aさんが、自宅の布団の中で亡くなっているのが発見され、それから半年後にBさんが、帰宅途中の電車の中で亡くなったのです。ふたりとも原因は急な心臓発作だったのですが、どちらも健康診断では異常が見つかっていなかったはずでした。
職場では次第に、あの利用者さんが「誰かを連れて行かなきゃ」と言っていた相手は、この2人だったのではないかと噂が広がりました。
思い返せば彼女の言葉に「母が迎えに来た」という部分があり、彼女はすでに「迎え」を受け入れていたのでしょう。そして、それだけでは終わらない「何か」が、彼女にとって必要だったのかもしれません。
ふと夜勤中に思い出すのです。
「一人では行けないの。誰か一緒に連れて行かないと。」
誰にでも、その「誰か」になる可能性があると言われているようで、あの出来事は、ただの偶然であってほしいと願いっていたのでした。
※画像はイメージです。
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