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ブラジル生まれの護身用拳銃 トーラス・ジャッジ

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普通の日本人の感覚からすれば、数多の凄惨な銃乱射事件が発生するアメリカの状況を目の当たりにした場合、何故に銃器類の所持自体の規制を強化しないのだろうか、と思うのが正直な感想であろう。

例えガンマニアであっても日本に住む日本人ならば、そうした感想を持つ事は当然すぎるとは思えるが、長年全米に流通している銃器類を一斉に無くす事は困難で、社会的にも必要悪とされている感も強い。
またアメリカと言う国家の成立過程そのものが、民間人が銃器類で武装する「自衛の権利」を色濃く残しており、全米ライフル協会に代表されるような団体の存在も少なからず支持を得ている現状がある。

州によって異なるとは言え、先進国の中で銃器類の合法的な所持が未だ広く許容されているアメリカでは、「自衛の権利」を体現する存在として護身用の拳銃の需要も根強く残っていると言える。
しかし中にはその存在が果たして本当に護身用と言えるのか否か、非常に曖昧な拳銃も多々存在しており、今回はそんな中のひとつと思しき「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)を紹介して見たい。

目次

製造するトーラス社とは?

「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)は、ブラジルはリオグランデ・ド・スル州のサン・レオポルドに本社を構える銃器製造会社・トーラス社の製品であり、同社は1939年に創業され、1941年に銃器製造を開始した。
銃器製造始めた当初のトーラス社は、アメリカのS&W社やコルト社と言った大手銃器製造会社の回転式拳銃(リボルバー)のコピー製品を手掛け、自国を含む南米においてその安さから一定のシェアを得る。

トーラス社はその後1970年から1977年までの期間、S&W社の親会社の傘下企業となり、その間にS&W社が持つ高度な銃器製造の技術やノウハウを吸収、ここでの経験を元に1980年代にアメリカでの販売に着手する。
但しアメリカ市場に参入して暫くの間はブラジル製と言うレッテルは評価されなかったが、1997年に454カスール弾仕様の回転式拳銃(リボルバー)・レイジングブルを発売した事で潮目が変わり始める。

レイジングブルは強装弾である454カスール弾を使用するにも関わらず、実用に耐えうる品質に仕上がっていた事で評価され、更に1999年には素材に軽量で堅牢なとチタニウムを投入、大きな飛躍を遂げる。
それまでの大手銃器製造企業の粗悪で安価な模倣品をリリースしていると言うイメージを、これらレイジングブルやチタニウムを多用した製品でトーラス社は覆し、アメリカ市場でも一定のシェアを獲得していった。

異色の回転式拳銃トーラス・ジャッジ

こうした経緯でアメリカ市場においても一定の評価を得る事となったトーラス社であるが、2007年にリリースした新製品が「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)であり、S&W社のデザインによく似た回転式拳銃(リボルバー)である。この「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)の基本のM4510というモデルの最大の特徴は、通常弾の45ロング・コルト弾の他、最小の散弾である410ゲージ弾を使用可能な点で、究極の護身用拳銃と言われる所以である。

「Taurus Judge」のM4510は3インチ銃身のモデルで全長は190mm、重量は822g、6.5インチ銃身のモデルで全長は241mm、重量は907gであり、装弾数は両モデル共に5発という仕様になっている。
この他にも「Taurus Judge」には強装弾である454カス―ル弾も使用可能で装弾数も6発としたM513や、同じ45ロング・コルト弾及び410ゲージ弾仕様でありつつも装弾数を7発に増加させたM513ULも存在する。
M4510は銃弾そのものの全長が長い410ゲージ弾を使用する為、当然の事だがそれを収容するシリンダー部分も長く、銃本体を横から見た場合には非常にその部分の持つインパクトが強い。

HarveyHenkelmann, CC BY-SA 3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

トーラス・ジャッジと同コンセプトの他社の拳銃

「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)は標準のモデルではこれまで述べてきたように、45ロング・コルト弾及び410ゲージ弾が使用可能な回転式拳銃(リボルバー)であり、S&W社の製品に似た外観とダブル・アクション機能を持つ。
しかしこの仕様は決してオリジナルという訳でもなく、現在は倒産してしまったもののアメリカのMIL社が1992年にリリースしたサンダー5と言うモデルの方が先で、ほぼ同じコンセプトの拳銃だと言える。

MIL社のサンダー5は45ロング・コルト弾以外にも40-70弾という小銃弾にも対応したモデルもあったが、これらは何れも410ゲージ弾と言う散弾も発砲できることのカモフラージュ的な意味合いが強かったと言われている。
と言うのもカリフォルニア州においては散弾のみを銃弾として使用する拳銃の所持は法律で禁じられており、この法的な規制を掻いくぐって合法的に販売を行う為に通常弾である45ロング・コルト弾や40-70弾も発砲できる仕様としたようだ。

410ゲージ弾は散弾とは言え口径は10.4mmであり、散弾として一般的な12ゲージ弾が18.5mmである事に比すれば遥かに小さく、専用のショットガンではレジャー用に使用される程度の弾薬である。
しかしこれを銃身の短い拳銃から発射する場合には、飛散する範囲が広い為、一定の効果が期待できると考えられていると思われ、そのニーズを満たすべくサンダー5やそれに続き「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)が造られたのだろう。
かなりニッチなニーズを狙った製品にも感じられるものの、何とS&W社も2011年にはガバナーと名付けた同様のコンセプトの拳銃をリリース、こちらは更に45ACP弾にも専用クリップを用いる事で対応している。

トーラス・ジャッジは有用な拳銃なのか

「Taurus Judge」(トーラス・ジャッジ)で発砲する事が可能な410ゲージ弾は、専用のショットガンで用いる場合には一般的な12ゲージ弾より遥かに低威力であり、本格的な狩猟等には向いていない。
しかしこれを拳銃で使用する場合には、通常弾を複数発砲するよりも至近距離であれば一度で的に命中させられる可能性が高く、自衛用として考えた場合には面での制圧にある程度の効果は見込めるのだろう。

そのためアメリカにおいてもそうした用途に向けて一定のニーズがあると思われるが、一部の銃規制の厳しい州においてはそのままでは所持が制限される為、45ロング・コルト弾等の通常弾も発砲できる仕様になっている。
これがどの程度の売上に繋がるのかには疑問も残るものの、あのS&W社が同様のコンセプトの拳銃をラインナップしている事からも、少なからぬ需要がそこには存在していると考えるべきなのだろう。

このあたりの事情はアサルト・ライフルやサブマシンガンについて、フルオート射撃が可能なものは市販が禁じられれいる為、セミオート仕様に留められている事にその本質は似ているように感じられる。
我々普通の日本人の感覚からすれば、いっそ銃器類の抜本的な所持の禁止を徹底すればよいようにも思えるのだが、銃社会であるアメリカの病巣はそんな正論すらもか霞んでしまう程に深刻なのだろう。

featured image: U.S. Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

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