災害や大きな戦争などで崩壊した世界、そしてサバイバル。
漫画やアニメにとどまらず様々なコンテンツで描かれてきた、ポストアポカリプスと呼ばれる世界観。
今回ご紹介するアニメ『天国大魔境』(著:石黒正数)も、そんなポストアポカリプス世界を冒険するサバイバルアドベンチャー作品だ。『それでも町は廻ってる』でもお馴染みの名手、石黒正数が原作コミックを手がけたこちらの作品。
今回はその魅力に迫ってみよう。
魔境経由、天国行き?崩壊世界のアドベンチャー
今回取り上げるアニメ『天国大魔境』。
『それ町』でお馴染みの石黒正数が原作漫画を手がける本作は、これまでの作者のテイストとはやや異なる、ポストアポカリプス世界を舞台にしたアドベンチャー作品だ。
主人公は男女ふたりの若者、マルとキルコ。舞台は先ほども触れたが、大災害によって崩壊した近未来の日本だ。ある女性から「天国に行き、自分と同じ顔の女性を探せ」との言葉とともにある薬を託されたマルが、用心棒として何でも屋の女性キルコを雇い、「天国」を目指して旅を始めるところから物語はスタートする。
おおまかに言うと、「天国」を目指すふたりが文明崩壊後の日本を旅して様々な人々と出会い、冒険を繰り広げていくのがざっくりとしたストーリー。だが、本作にはもう一つのストーリーラインが設けられている。
気になる第二の主人公は、なんとマルとそっくりの顔をしている少女トキオ。外界から隔絶された「学園」で暮らす彼女の物語が本作を形作るもう一つの物語であり、マルとキルコ、二人の旅の目的を解き明かす重要な鍵にもなっているというのが本作の全体像となる。
アニメでは未来的で快適だが徹底的に管理された「学園」で暮らすトキオのストーリーと、アポカリプス後の世界を旅するマルとキルコのストーリーが交互に展開し、謎が謎をよびながら進行していく作りだ。
少し凝った構成かつ、世界観が最初に提示されるタイプの作品ではないため、最初はもやもやするかもしれないが、謎と謎が繋がった瞬間はとても気持ちよく、歯ごたえのある作品となっている。
ぼんやり流し観で楽しめるタイプの作品ではないが、じっくり楽しめる観ごたえあるアニメとしてはここ最近で上位に食い込むであろう本作。ガッツリアニメを楽しみたい人にはピッタリの作品と言えるだろう。
人喰い?超能力?『天国大魔境』を彩る二つの謎!
文明崩壊後の日本をめぐるロードムービー的なパートと、ディストピアを思わせる管理体制が引かれた学園での生活を描いたパートが絡み合い、広がりを見せて行く本作たが、作中一番の謎と言えば怪物「人喰い」と学園の生徒たちが持つ特殊能力だろう。
謎というかトンデモ要素と言っても過言ではないこちら二つ。まず「人喰い」だが、こちらはそのまま「怪物」と呼ぶべき存在で、文字通り人を喰らう。姿形は様々で、個体差が大きく特性もそれぞれ異なり、神出鬼没。かつ通常の武器では倒せないとても厄介な存在だ。マルとキルコもたびたび旅の途中で、彼らに苦戦させられるのだが、ここでキーとなるのがマルだけが持つ特殊能力「マルタッチ」。
ふざけた名前だがこちらはキルコが持つレーザーガンとともに、作中ほぼ唯一「人喰い」に対抗できるマルの能力。(というか作中人喰いにトドメを刺せるのはこのマルタッチのみ)この不思議な力はただ主人公が操る必殺技というだけでなく、物語の謎を解く重要なキーになってくるのだが・・・そこは作品で答え合わせをして欲しいところ。「人喰い」とそれを倒すマルの力は謎を解く重要なキーワードなので、登場したらしっかり注目しておくといいだろう。
またアニメ表現としては「人喰い」や、それにまつわるバトルシーンは迫力があり、見どころ満点。
マルとキルコの手に汗握る協力プレーも見逃せない。謎は多いが、確実にストーリーを面白くしているポイントと捉えて間違いない。気に留めておいて損はないはずだ。
さて、「人喰い」とともにもう一つ、作中でフューチャーされる不可思議な要素。それがトキオたちが暮らす「学園」の生徒が持つ特殊能力だ。外界から隔絶された施設で管理されながら暮らす彼らだが、明らかに身体能力が異常に高かったり、未来予知(!)ができたりと明らかに常人ではない力を備えている生徒がほとんど。
これらは作中ではさらっと匂わせられる程度で、気を抜くとひとりひとりの能力を見逃してしまいそうになるが、こちらも作品の本質に迫る重要な要素。マル「人喰いごろし」の能力にも関わってくるので、こちらも出てきたら憶えておくといいだろう。
人喰い、そして超能力。一見トンデモポイントだが、本作が面白いのはこの二つの謎が絡み合っているからこそ。皆さんもマルやキルコと一緒に旅をしているつもりで、作中に散りばめられた点と点を繋ぎ人喰いや学園の謎に挑んでみてはどうだろうか。
天国大魔境
今回ご紹介した『天国大魔境』は、謎に満ちたポストアポカリプス世界を手探りで進んでいく感覚が味わえる、非常にエキサイティングなアニメだ。また、ストーリーのアドベンチャー要素はもとより、美しい作画で描かれる崩壊した世界も圧巻。こちらはアニメでしか見ることができないので、ぜひ体感して欲しいポイントでもある。
アニメは終了したが、その続きは漫画で楽しむこともできる。気になった人はチャレンジしてもいいだろう。
迫力の崩壊世界と散りばめられた謎。ぼんやり観て癒される作品ではないが、じっくり観るには最適な本作。ガッツリとしたアニメを楽しみたい人は作品世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。
(C) 石黒正数 講談社/天国大魔境製作委員会
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