お前は橋の下で拾ってきたんだよ

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子供の頃から両親に「お前は橋の下で拾ったんだぞ」と言われてきました。
田舎でしたし両親は昭和生まれの昭和育ち、今で言うと感覚が古いからもでもありますが、当時の子供の間では親に言われがちは一言です。
躾や冗談のつもりだったのでしょうが、悩んでしまう子供もいたのは事実です。
私は冗談だと思っていたし、すっかり忘れていました・・・あの日までは。

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赤ちゃん泣いてるよ?

地元の大学に入学し、当時の彼氏と実家近くの川を散歩していた時です。
散歩コースとして整備された静かな川辺をのんびり歩いていると、差し掛かった橋の下の方から、微かな赤ん坊の泣き声が聞こえてきました。

「ねえ、どこかで赤ちゃん泣いてるよ?」

私は何気なく問いかけると、彼氏はキョトンとして「何も聞こえないけど」と首を傾げました。

確かに聞こえるのに・・・しかも、どんどん泣き声が近づいてきて大きくなり、頭の中で響いているような錯覚になったのです。
でも彼氏は笑って取り合ってくれず、私も無理に話を広げるのが怖くて、話題を変えてデートを続けましたが、その夜から泣き声が離れず、頭の中を駆け巡るようになったのでした。

思わぬ事実

寝ても冷めても赤ん坊の泣き声が聞こえ、一ヶ月もすると体調が崩れて寝込んでしまいました。
両親も心配になって、病院で精密検査を受ける事になったのですが、そこでは思わぬ診断結果に絶句。

なんと妊娠が発覚したのです。
まだ学生だったし、青ざめました。
さらに悪いことに、彼氏の他にも浮気をしていて、どちらの子供なのかは解りません。
彼氏にだけ相談して、中絶することに決めました。費用は彼に出してもらい、おろした後、彼氏は私に触れられなくなり別れました。

それから泣き声は聞こえなくなり、あの橋のそばを通っても、再び泣き声が聞こえてくる事はありませんでした。

また赤ちゃん泣いてるよ?

大学を卒業後、上京して社会人になり、東京の外れにある自然が豊かで、なんとなく地元を思わせる地域にアパートを借りました。

そして、付き合って三ヶ月になる彼と近くの川でお花見をしていた時です。
何気なく歩いて橋をくぐったとき、あの時と似た赤ん坊の声が聞こえた気がしました。

ハッと思って彼氏の方を見ると、私が何かを尋ねるより先に、「なあ、赤ちゃんの声、聞こえない? どこにもいないのに」と彼は言うのです。
帰りに妊娠検査薬を買って調べてみると、妊娠していました。

今回は間違いなく彼の子で、妊娠を告げると喜んでくれて、私達は結婚することになりました。
それから飛ぶように日が流れ、ついに出産という時期に事故にあって流産してしまったのです。

夫である彼氏とうなだれていると、二人の耳に赤ん坊の泣き声が聞こえて、あの子がお別れにきたと二人で抱き合って泣いてしまったのですが、私にはどうしても前の子の声に聞こえてしまう。

そうか。
じゃあ、あのときの子が。

※画像はイメージです。

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