八岐大蛇(ヤマタノオロチ)といえば、『古事記』や『日本書紀』の8つの頭と8つの尾を持つという空想上の生き物である。日本でも最古にして最強の妖怪でもあり、素戔嗚尊(スサノオノミコト)が、出雲に追放された際、初めに出てくる大蛇なのだ。
その大蛇は、古代には本当にいたのか、今となっては知る由もないがあまりにもリアリティにかける生き物であるため、何かを投影していると考えるのが最良だろう。そして、その尾から出て来た剣、後の草薙剣は何を意味しているのか。
大蛇の正体とは、何者だったのだろうか?
スサノオとヤマタノオロチ
アマテラスに追放されたスサノオは、高天原から出雲へと降りた。
そこには、アシナヅチ・テナヅチという国つ神が泣いてたという。その夫婦神の8人の娘は、ヤマタノオロチに連れ去られ、最後に残った娘である稲田姫(クシナダヒメ)が生贄にされそうだというのだ。
スサノオは、クシナダヒメを妻として貰い受けることを約束して、果敢にヤマタノオロチに立ち向かい、酔わせたところを首を切り倒した。その際、尾からは天叢雲の剣が出て、その剣はアマテラスに献上されたという。
その剣が、いわゆる三種の神器と言われる草薙剣である。
ヤマタノオロチは川の氾濫説
島根には、斐伊川という一級河川があり、古代から上流では、たたら製鉄という砂鉄から鉄を作る技術があると言われている。この水域と製鉄が、この地域の民を支えていたと言われているが、古代神話の時代では、一説ではよく氾濫し人々を困らせる河だったと言われる。
この川が、8つの川となり生活を支えながらも、時に恐ろしい濁流で人々を飲み込むという、それをヤマタノオロチと人々は言ったのだという。
スサノオは、地元民の困った姿に立ち上がり、その川の灌漑事業を施し、洪水を抑え新しい田畑を開発し、肥沃の大地に変えたのだ。
その上、上流に砂鉄を発見し、たたら製鉄の技術を教えたのだという。
ヤマタノオロチの体内から出た剣は、その河川からでた鉄を意味していたのだ。
ヤマタノオロチ豪族説
ヤマタノオロチが川だった説と反して、いわゆるスサノオの豪族平定物語だとする説がある。
かつて神話時代に、出雲の周辺には8つの豪族があり、その豪族が製鉄技術があるため、交易や軍事力で出雲を圧倒した国力で、脅していた。その豪族の首領たちを集めたスサノオは、酔わせた挙句に皆斬って捨て、豪族たちの各国を平定し、その民や技術を出雲の傘下に収めたという。
スサノオは、出雲のクシナダヒメを娶り、その地域で一番強力な国のトップになったという話だ。
そして、高天原という別の国に、その技術と製品を交易として贈っていたのかもしれない。
ヤマタノオロチと鉄
二つの説に共通するのは、鉄の存在である。1400年前に編纂された風土記にも、すでに製鉄技術があり日本でも有数の鉄の産地だったとある。また、植林技術も進んでおりその技術も、スサノオ、もしくは大国主の国家事業だったとも言えるのだ。
スサノオは、新羅より渡来したという伝説があるが、先進の製鉄技術をもたらした韓鍛治あると考える人もいるそうだ。応神天皇の時代から見えるその集団は、大和朝廷に仕えた韓鍛治は、その技術により近畿地方に居住して国を潤わせたのだ。
出雲は、巨大な王朝があったと言われ、古墳があり出土品では銅剣や銅鐸がたくさん出土した場所でもある。
神話は、歴史を何らかの物語として真実を伝えているものだと考えられ、ヤマタノオロチ伝説もロマンがある話だと言える。
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