私が大学生だった頃の話だ。深夜までアルバイトをしていた私は、終電を逃してしまい、仕方なく徒歩で帰宅することにした。街灯もまばらな夜道を歩いていると、普段は閉鎖されているはずの古い地下通路の入口が目に入った。時計を見ると、午前3時ちょうど。なぜか引き寄せられるように、その地下通路に足を踏み入れた。
階段を降りると、ひんやりとした空気が肌を刺す。壁には見たこともない古い広告やポスターが貼られており、まるで時代が逆行したかのようだった。足音だけが響く中、通路の先に微かな光が見えた。好奇心に駆られ、私はその光を目指して進んでいった。
やがて通路の終わりに小さな扉が現れた。扉を開けると、そこには見知らぬ街並みが広がっていた。古びた建物や看板、そして行き交う人々の服装までもが昭和初期を思わせるものだった。驚きつつも、その街を歩き始めると、どこか懐かしい感覚が湧いてきた。
しかし、ふと気づくと周囲の人々が一斉に私を見つめている。彼らの目はどこか虚ろで、不気味な笑みを浮かべていた。恐怖を感じた私は元の地下通路に戻ろうとしたが、来た道が見当たらない。焦りと不安が募る中、背後から「次の午前3時まで帰れないよ」という囁き声が聞こえた。
振り返ると、そこには誰もいない。心臓の鼓動が速くなる。必死で街を彷徨い続けるうちに、再びあの扉を見つけた。扉を開けて通路を駆け抜け、階段を駆け上がると、冷たい夜風が頬を撫でた。安心して時計を見ると、午前3時を数分過ぎたところだった。
後日、その地下通路について調べてみると、戦時中に空襲から逃れるための避難路で、今は封鎖されていると知った。あの夜見た光景は一体何だったのか。未だにあの街と人々の視線が頭から離れない。
※画像はイメージです。
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